#40 棘と蜜とアーチ
やってやれないこともないが。
やってしまって後悔する日は必ずーー訪れるだろう。
◆
入江が放った矢は、クラレントが放った【吸血獣】を打ち破った。
それは偶然か、それとも入江の勘だったのか。
落下する敵が在る、と。
「何か、爆発音しなかったかぁ~~? 出口よぉ~~」
五十嵐が腕を組み、見上げた先は、真っ赤に閃光が奔っていた。
「お前。RPGとかのゲームって」
「へ? 大の苦手だが、何なの??」
入江があっけらかんと答えた。
「パズルゲーは好きだぜ。クイズとかな」
「課金いくないよ~~?」
「課金? んなのしなくたって、腕さえありゃあどうにでもなるし、そこまでやんなら、うちの店で金出してアーケードゲームのクイズやるわ」
仲よく話す入江と五十嵐に、小林の顔が険しいものとなる。
◆
『どこがいいのかな~~? その男の娘の』
耳の奥の絵里が笑う。
「…反抗的なところかな…うん。多分」
小さく答える。
『りっちゃん、そういうのーードSって言うのよ? 女の子は強引な男は引くから気をつけて」
「…あいつは、強引な奴に惹かれるんだよ。だから、あんな奴に…」
『あっそ。あの娘、可哀想だね。りっちゃんに惚れられて』
それに小林は返事をしなかった。
◆
「本当に、自分でも趣味が悪いなって…後悔はしているんだよ。絵里ちゃん」
耳を抑えて呟いている小林の姿に、
「誰と通信してんだよ。あんた、さっきから」
「何で?」
入江が耳を抑える仕草をする。
「このポーズってよォ~~誰かの話しを聞く、ほら、携帯とかのやり取りっぽいだろう? だから、俺はそう思うわけだよ」
そして、耳に髪をかける仕草をする。
「な。俺ってば、名探偵も顔敗けな推理じゃね~~?? ぬふふん~~」
満面の笑顔を向ける入江に、小林の胸も高鳴る。
(…素がもともと、この馬鹿だから、何にも考えてねぇってのが…」
心臓音が高鳴る。
「ムカつく」
「はァ?! そいつァー~~こっちの台詞だっての‼」
その間に五十嵐が、割って入る。
「あ。ちょいちょい」
「「何だよ!? ああン??」」
小林と入江の声が重なった。
五十嵐が指をさす。
「あんなアーチあったっけ? ほら。そのバラっぽいとこもなかったんじゃねぇ? 記憶にあっか?」
薔薇。
赤い、ラメった花びらが眩しい。
しかも、かなり小さい。それば数多くあって、光のじゅうたんのようだった。
「!? あ゛ッ」
その薔薇のようなところへと果敢にも、馬鹿な入江がボトルを持ち、駆け出した。いつの間に、ボトルを所持していたのか。
「入江君」
小林に至っては、もう慣れたとばかりに、呆れた声だった。
薔薇の中を勢いよく突進した結果。
痛い。
痛い。
痛い。
⇒血まみれ。
鋭い棘に刺されまくった。
「これが毒なら、RPGなら、お前はとっくに棺桶の中だな」
冷静に小林が言い切った。そしてー
「金があっても、なくても、教会で復活させてもらないと思え」
しゅん。
「で。何がしたかったんだよ。出口ィ」
わしゃわしゃ! 五十嵐が頭を撫でた。
「! 蜜だろ‼ 蜜ッッ‼」
ボトルの中の蜜が、ぽちゃん! と鳴る。
「へぇ。おわ! 蜜、めっちゃキレーな色だなぁ~~」
「だべ? だべ?? 帰ったらこいつをコーヒーに入れて飲むんだ!」
その言葉に。
「え。武器とか所持しているのってーー」
「は?? あ、知らねェか。出来るみたいだったぜ」
小林の疑問を入江が嫌々に答えた。
「そいつンおかげて助かったんだかんな。俺」
「え。何か起こったのか?? あっちで」
五十嵐が驚いた表情をする。
「あの《嫉妬の平子》に襲われたんだよ」
「「え??」」
あの江頭保の嫁の平子に??
「あ゛。そっか~~そうだよな~~ァ」
入江が頭を抱えて、しゃがみ込んだ。
「どったんだよ。出口」
五十嵐が首を傾げた。
万が一、いや、また戻ったらーーまた、攻撃を受けるのか。
「ま。なるようになっかな。うん。なる、なる!」
すく! と立ち上がる。
「よし。行こうぜ」
入江がアーチへと向かった。
「「ったく」」
後を小林、五十嵐と続くのだった。




