#38 仲がいい二人
甘いのに甘くない。
そんな世界。
◆
「で、だ。この短剣さー軽いんだけど」
ブンブン! 五十嵐が振り回す。
「危ないな」
小林が眉間にしわをよせる。
「おもちゃかもしんないよなァ~~」
ブンブン! 五十嵐が、また振り回す。
ゲシ!
「おっさん、いい加減にしろや」
そんな五十嵐の腰を、入江が思いっきり蹴とばす。
「ァっだぁ~~~ッッ‼」
五十嵐もまえのめりに倒れてしまうところを間一髪、バランスを整え、難を逃れた。
「手前! 出口ッッ‼」
「っへん!」
ダッシュ!
入江が逃げ出す。そんな彼を五十嵐も追いかけた。
「さて、と。ここはー何なんだ?」
『気になるぅ? りっちゃん』
「そりゃあね」
ふふふ! 耳の中の彼女が笑う。
「…何も、おかしいことなんか言ってないでしょ」
ギョワギョワワ‼
また変な泣き声がする。
「ったく。腹が立つことばかりだ」
◆
「つまらぬ! つまらぬわ‼」
クラレントがそう何度も叫ぶ。
彼女は好戦的な性格だという分かるだろう。
「我が君の御心が分からぬ! 分からぬ‼」
にやりー…
「ふ、ふふふ! そぉだァー~~」
カプ。尖った歯で自分の指を噛み、血を出すと、
「《吸血獣》よ! 参られよッッ‼」
魔法陣を創り、中から何やら呼び出した。
そして、血を数滴、下へと滴り落とすのだった。
「スパイシーに、赤く染めてあげますわよォ! あははははハはははッッ‼」
◆
ビリ。
「?? 何、これ」
入江の身体に電流が奔った。そして、空を見上げた。
「どったんだよ~~出口ィ~~」
ぎゅうううう!
「! うっひゃあっっ」
背後から五十嵐に羽交い絞めにされてしまう。
「…上が、あの、何かな…」
「危ない、感じか?」
五十嵐も真剣な表情をする。
「そぅ、ああ。そんな感じがするぜ」
「そっか。じゃあ、行かなきゃな」
「ふふふ!」
入江が笑う。
五十嵐が入江を抱きかかえ、お姫抱っこに移行させた。
「ぅ、お! …アンタなぁ~~重いだろォ~~」
「軽いよ。いや、本当に」
バチリ。
「…行くってどこに? 行き場所なんかねぇだろうが」
向かい合う。
「まぁな。でも、前に、前に進まなきゃなんねぇだろ」
「…確かにな」
ククク。
二人が微笑み合う。
「「行くか」」
その様子を、後から追って来た小林が見た。
イラ。
「どこに行くの」
イライラ。
五十嵐の腕から入江も跳ね落ちる。
「っと! たたた…んー~~この道を真っ直ぐ行くしかないよなって話だよ」
そして、ぶっきらぼうに小林へと説明をする。
「また、そんな顔するし」
ボツリ。
「?? あんだってぇ~~?」
少し、離れてしまった後に聞こえた言葉に、嫌々、入江も聞き返した。
「別に。何でもないよっ」
小林が、入江と五十嵐を抜き去っていく。
「?」
何、アレ? と入江が指をさす。
「……」
ほっときーと、五十嵐が手を左右に振る。
そして、二人も小林の後を追う。
ここは依然として、原始林の中。




