#37 桃でHPの回復!
進む方向を見失う。
◆
ゴン!
「! おいおい。桃、無理だべ」
小林が熟した桃、その丸い熟した桃を自然のまま、五十嵐の口へと押し込む。
ゴン! ゴゴン‼
五十嵐に生気がない。
吸った胞子が、思いのほか濃かったようだ。
「ったく。面倒くさいな…っち」
「っち! っじゃあァねェべ! おっさん‼」
そう入江は小林から桃を奪い取る。
そして、丁寧に皮を剥く。
「ぅわ。うまそう~~あぐ!」
むちゃむちゃ。
「! ぅわァ! 甘~~いっ!」
「…食べてどうすんの」
小林が眉間にしわをよせる」
桃の汁が入江の口許を汚し、蜜が滴り落ちる。
ゴクリー…
「ァん゛? もの欲しそうに見てんな! ゃんねェぞっ!」
「……別、に」
かかかかかかあかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかあかかかか。
小林の顔が真っ赤に染まる。
「?? 変な奴!」
そして、入江は耳に髪をかけると、五十嵐に口づけをした。
「!? ぇーー…」
小林の目が丸くなり、細くもなる。
熟した桃の甘い蜜が、五十嵐の口に注がれ、実が口移しされる。
ゴクリー…
誰かの喉が鳴る。
「? っむ゛ぅ゛‼」
ガシ!
五十嵐の手が、入江の柔らかい身体に回される。
「ン゛ン゛ン゛ん゛ッッ‼」
「!? 入江君??」
様子がおかしいことを察した小林は、五十嵐の巻きついた腕を解き、入江を解放させた。
「ぅぅ…う、う、ぅ」
入江が口を両手で塞ぎ、地面へと腰を落とした。
「あー~~生き帰ったぜ!」
舌をぺろりと出し、五十嵐はそう言い放った。
「一遍、死ね!」
思いっきり小林が、五十嵐の腹へと足を踏み入れたが、間一髪、それを五十嵐は逃れた。
ごろんごろん!
「ふふふ」
「っち!
「ふッ、ははははー‼」
がばちょっと五十嵐は立ち上がった。
するとウィンクを小林へと向け、ピースサインをする。
「何??」
「出口のファーストキスと、ベロチューは、俺がいただいたー~~~ッッ‼」
ぶち。
「く、くく、口の中で…何か、ななな、軟体生物がッ、ウゴウゴーー…」
入江は涙声となっていた。
「…本気で死ね。いや、殺す」
「ふふん! でも俺が初めての男に変わりはなぁ~~いも~~ん!」
「……手前ッ」
一色触発のOBコンビ。
わなわな。ふるふる。
「…ま。いいけど、さ」
入江が口許を拭い立ち上がる。
「で、どうなん? 身体、どっか痛くねェ?」
「大丈夫さ~出口がキスして、口移ししてくれたかんね~~」
抱きつこうとする五十嵐の顔面を蹴飛ばす。
「治ってよかったなーはいはい」
◆
アイテムの桃はなくなった。
「へーまともな武器なんだなー今回のは」
腕を組み、五十嵐も同じことを言う。
「はい」
小林が短剣を五十嵐に放り投げた。
「‼ っあ!? とっと、ととと!」
突然のことで、五十嵐は慌ててしまい、短剣を落っことしてしまう。
ガッシャンーー…
「あぁーー~~っ」
そんな五十嵐に。
「ダサ」
そう小林がほくそくむ。
「! 投げた張本人、ゴラ゛っっ‼」
「フン」
「大人気ねぇー~~なぁ‼」
そのやり取りを見て、入江は違和感があった。
(どうして。あの短剣、チーフの奴にやったんだ??)
『そりゃあ。適任者だからじゃね?』
横に息づく人がいる。
だが、入江はあえて、他に悟られないように、小声で聞く。
「誰が、決めるの。小林さん?」
『まぁ……だな。うん、ふはは!』
「え。今、笑う要素あったか? おっさん」
次の問いかけに彼は答えなかった。
「本当に、面倒くさいことになってきやがった、な」




