#36 便利なアイテムが出た
調子に乗った自覚はあった。
◆
「戻ったと思ったら、何なの、君は」
小林は、そう吐き出した。
そして、額に指を置く。
「全く。役立たずはどっちなのさ」
グス。
「ぞん゛な゛い゛い゛がだじな゛ぐだっで…い゛い゛ら゛ろ゛!」
入江も涙腺が崩壊してしまっている。
「ったく。全く、君って子は、全く」
両手で顔を覆い泣く入江の前に小林が跪く。
「本当に」
ギュ! と抱きしめた。
「……キモイ、よ」
小林の顎が入江の頭の上に乗る。
「重い」
グシグシ。
「ありがとう」
小林がそう一言。
「な゛に゛が…??」
「帰って来てくれて、ありがとう」
入江が、覆っていた両手を開いた。
そこには真剣な表情で、頬を朱に染めた小林の顔があった。
真っ正面から向かい合う。
「キモイ」
入江がそう吐き捨てた。
「…君も、大概でしょ」
小林の唇が、迫って来る。
「!? っちょ!」
バシーーーーーーーーーッ!
入江は小林の顔面を殴った。思いっき力を籠めて。
◆
「キスぐらいで殴ることはないと思うよ」
寸止め。何とか、未然に防ぐことが出来た。
「俺は男なんだよ! んのこと知ってって迫って来るとか、まぢキモイ!」
入江の顔が青ざめる。身震いさえする。
「今、君ーー性別、分かってるよね」
「! だからよ~~戻ったらどうすんだよ‼ その、ああああ、キスとかしてて、男に戻ったら‼」
もう訳が分からないことになっている。
「いやいや! 違う、そうじゃねくて、あ゛~~男に戻れなくなったらどうすんだよ! よくあんだろ?? 特別なこととかして戻れなくなるって映画とか小説とか‼」
小林は五十嵐を引きずっている。デブマッチョの五十嵐は重いのだ。
「戻れなくなったら? そりゃあ、責任をとーー」
「‼ っざけんな! まぢ、も~~最悪だァ~~ッッ‼」
小林も割と本気で、口を尖らせる。
「あ!」
入江の前に噴き出す水が見えた。
「さて、と」
ポケットから種を取り出し放った。
そして、水を手のひらに溜め、ポチャポチャ、と種に水を注いだ。
するとーーシュルルルル~~……
「はい!」
手品師になったような感じで、入江は小林に見せた。
「で。どうすんの」
「えっと…ぁ、まぢかァ~~」
全てのボタンがレインボーのアイテムボタンだった。
「このまま、舞台を行くしかねェのね」
⇒レインボー
ボチ。
「今回の~~アイテムは~~なァ~~にかな~~??」
押したボタンのあった葉がぐるりと萎み、大きく膨らむと、大きく開いた。
短剣。
ボトル。
桃。
今回のアイテムは、意外とまともだった。
それに入江も拍手をする。
「わ~~まともだ~~」
「…本来は、それが当然なんですけどね」
と、短剣を取ろうとする小林に。
『りっちゃん、それは冬生くんのだよ』
彼女が小林の耳の中で囁いた。
『ほらぁ。桃を冬生くんに食べさせて』
さらに続ける。
『さ。進もう』
小林が目を細めた。
「?? どうしたんだよ、小林さん」
入江がそんな小林を見た。
無防備な顔で。
グイーー。
「の゛ァ゛‼」
五十嵐の身体を放り出し、小林は入江に抱きつく。
「も。どこにも行くなよ。僕の傍から離れるんじゃない」
とてもキツイ。
「……何なの、急に」
入江は困った顔をするも。
「俺が居ないと、このパーティ、全滅すっしな。居てやるよ。傍にな」
にかりと微笑む。
「入江、君ー」
そんな彼にまたキスをしょうとする。
ブチ!
「キメェ~~っつってんだろうがァーーーーッッ‼」
ガガン‼
全力で入江は小林を殴った。




