#31 離れ離れの局面
狐の面をした少年が、自分に何かを話した。
なのに、何にもーー思い出せない。
割と、事態は深刻だ。
◆
「あっとォーー…はァ?? 何、何だよっ!」
入江が起き上がった。
辺りを見渡す、誰も居ない。一緒に、居たはずのあの三人は??
「あ゛ァっと……頭も痛ェ~~し~~」
ズクン、ズクン。
「頭、ぶつけたンかなァ??」
さらりと伸びた髪のある頭を手でさする。
しかし、そこは痛くない。痛いのは額の、さらに奥のーー脳だ。
「アイツら、アイツラは?? どうなってやがんだァ?!」
ズクズク。
「あっれーー~~居んじゃん。出口ちゃっん、見っけ!」
突然、開いた休憩室の扉。開けたのはメダルスタッフのーー
「……有藤、ど、どうしたん、だ?」
自分でも何を確認したいのかは分からないが、入江も聞く。
聞かれた有藤鷲が微笑む。彼も銀河高校のOBだ。
「?? 休憩時間終わりっしょ」
そう、三十分の休憩が終わりを迎えたのだ。
「ンん゛? おんやぁ~~他の従業員は、どこっしょ」
有藤が額に手をつけ、ぐるりと狭い第四休憩室を見渡した。
「そいつァ、俺も聞きてェわ……」
ゆっくりと入江は目を閉じた。
詰んだのはーー…と。
◆
「そう言えば。あの種、入江君が持ってましたね」
小林が、小さく漏らした。
「そ~~っスねぇ。今度から分けさせますか」
「それしかないでしょ。こう離れてからでは、身もふたもないし」
「あの禿、絶対ーー土下座しろォ~~! とか抜かしますよ」
そんな想像して、五十嵐が笑う。
小林が、腕を組む。
「殴るよ。そう言ったら、ドゴン! ってね」
そして、大きく顔を頷かせた。
「主任らしいっスわwwww」
のほほん、と話すOBコンビを他所に、浦飯の恐怖心はMAXだった。
心の支えでもあった同僚が突如として、大きな穴に飲み込まれ、フィールドアウトしてしまったからだ。
ぶるぶるーー…‼
「? 大丈夫ですか、浦飯さん」
ビックゥぅぅぅぅ~~ッッ!
「っは、はひぃ~~~~~‼」
「あ。ダメだ、コレ」小林がそう漏らしてしまう。
「ったく! あの禿、どこに行きやがったんだよ‼」
五十嵐が宙を見上げた。視界に映るのは星も、青空でもなくーー生い茂った原始林の葉っぱたちだ。どこに向かえばいいのか、その道が正解なのか。
依然として、全て《謎》だ。