#30 第四休憩室 Q
落とし穴に足を取られて、気がつけば真っ逆さまで。
伸ばされた手は、届くこともなく。
詰んだ。
◆
いい匂いがした。
ぎゅるるるー~~!
「あ゛ァー~~腹減ったァ~~」
入江がそう漏らした。
と。そのことに驚いた。
生きている。あれ? と。
「ここ、は??」
椅子に座っている。
目の前には長いテーブルがある。貴族なんかがよく、洋画の中でもお馴染みのアレなテーブル。
そして、豪華な食事。
「……うまそ~~ゥ」
ゴクリーー…
『食べても構いませんよ』
ビク‼
見えないくらい遠いテーブルの向うから、声がかけられる。
誰かも、分からない。声が拡声器で変えられている。
『腕を奮って、作らせて頂きましたよ。どうぞ』
「……ここァーどこだ?」
入江は目の前にあったグラスを手に取った。
ゴクリーー…ぶはっ!
「っこ、こりゃァ! 酒じゃあねェかよ! ふざけてんのかッッ‼」
白いワインだ。匂いも甘い。
ジュースかと思い、思いっきり飲んでしまった。
あとからきたアルコールに、入江は吐出したのだ。
『? お酒はジュースではありませんか』
「馬鹿か手前は! 酒はジュースじゃあねェんだよ‼」
『おかしいですねー~~調べたんですけど』
「おかしいのは手前の頭だっつ~~の‼」
入江は椅子から立ち上がった。
「手前の茶番劇に付き合うほど、俺ァ暇じゃあねェんだわ」
ギシギシ!
何かが、奥から来る音が聞こえた。
『茶番劇? 私は、あなた方を助けようとしているのに?』
「……助けろって! つった覚えはねェよ!」
もっともな話。
テーブルの上に狐のお面をつけた少年が立っている。
男の子、のようだった。
半ズボンに半袖。首元には赤いネクタイ。
『ま。確かに』
「……何で、俺だけ、なんだよ」
『君しか罠に引っかからなかったんですよ』
「ざけやがってッ!」
ガッシャン!
入江がテーブル上の豪華な食事を手で払い落した。
◆
「……出口ッ!」
五十嵐が顔面蒼白となっている。浦飯も泣きじゃぐっている。
「行くよ」
小林だけは冷淡だった。
「!? 小林さん??」
五十嵐が声を荒げた。
「出口は心配じゃないんっスか??」
「はぁ? 心配して何か解決でもすんの?」
ワナワナー……!
「しないでしょ」
「あんたなぁ‼」
「それに。僕はーーあいつの悪運を信じているからな」
「あ、あんた」
「あれが死ぬとか、思うの?」
ふふふ、と小林が笑う。
「死ぬわけないじゃないかよ」
「……ははは。そうっスねー」
OBコンビのやり取りにも、泣き止まない浦飯。
「「浦飯さん、君も、あの禿が死ぬたまだと思うかい」」
ふるふる!
「「でしょ。だから、待とう。あいつはーー帰って来るから」」
ゴシゴシ。
「はい! でもーーこっちですか? それともあっちにですか? 戻るのは」
ん? あ゛ー~~~~…二人が向かい合う。
「「……どっちだ??」」
◆
『さぁ。お話をしましょう』
「嫌なこった! お面なんざしやがって!」
『恥ずかしがりやなので』
「だけんなよ」
入江は椅子に腰を据える。
「ったく! 何の話をすンだよ!」
『お伽話ですよ。始まりへと紡がれる、とても、大事な、ね』
ゴクリーー…
◆
パチリーー……
「あ゛?」
入江の目に、見慣れた天井が映る。
「? ァ゛??」
寝惚けている。
第四休憩室だ。
「!? はァ?!」




