#29 入江、飲み込まれる
踏んだり蹴ったり。
◆
この原始林は、前の舞台より熱い。湿気も凄い。
「のど渇いたなァ~~」
やっと声が出た入江がぼやく。
「オアシスって普通あるのに~~」
浦飯もぼやく。
「「あったら、ご都合主義過ぎだわ」」
OBコンビが、そう漏らす。
「ま。そうだけどよ」
入江が目を細める。
(浪漫がねェ奴らだぜ)
◆
「きィ~~~~~! クラレスッッ、どうなっておるのじゃ‼」
クラレントが喚き散らす。
「僕にも、分からない」
「あの男はどうなっておるのじゃ! 本当にあやつは『我が君』のーー」
パァン!
「‼」
「主様を侮辱することは許さない」
クラレスがクラレントの頬をひっぱたいた。
「もう、よい! アタシは別行動をとらせて貰う‼」
フワフワ!
「クラレント‼」
静止も聞かずに、彼女は行ってしまった。
「ったく」
クラレスは地上の四人を見た。
「もう少し、苦しんでもらわないとね。主様のためにも」
◆
『気をつけろよ』
江頭の声が聞こえた。
立ち止まり、入江が辺りを見渡す。
誰も、江頭のノイズ画像もない。
「気の、せい…かな」
少し、神経が敏感になっている。そのせいに違いない。
(ボタン、出ないし。あれは何だったんだ??)
腕を組んで歩いていく。
「!? のわッッ‼」
突然、入江の足元が崩れた。落とし穴だ。
そのことに小林、五十嵐が気づき、手を伸ばした時には、もう手遅れだった。
ひゅるるるるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!
すっとんとん‼
入江の視界に映っていた穴の入口が閉じた。
そして、辺りが真っ黒になってしまう。
「あっちゃ~~、俺、詰んじまったな。こりゃ~~」
どこか冷静に、入江は吐き捨てた。
希望は、真っ暗な中ーー飲み込まれていく。
「 さん」
その中、入江が名前を言ったが、それも、この闇の中に飲み込まれ掻き消されてしまう。
絶望が、辺りの闇と同化するように、入江を蝕んだ。
ゆっくりと、入江は息を吸うことすら、放棄した。




