#23 怒り爆発 三秒前
「ぅっぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッ‼」
浦飯の悲鳴と一緒に、一斉に走り出す。
第二舞台は原始林。
敵はーー虫。
◆
「何あれ! 何あれ‼」
早口言葉で浦飯が言い続ける。
浦飯はメダルコーナーにおいて、マイキングをしているために、声も大きく、滑舌もよく、早口言葉だってお手の物だ。
だが、しかし。
キャーーキャーー、と煩いったらない。
女だから、では済まされない。
命がかかっているのだから。
「浦飯さん! 声! 声‼」
五十嵐がお口チャックをジェスチャーする。
「‼」
コクコク! 浦飯は口を閉じた。
ほっぺの中はパンパンだ。
息も止めてしまっている。
「息はしてもいいので、一切、喋らないでもらえーー」
ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンん!
「ますかね!?」
小林は虫を蹴飛ばした。
この小林の攻撃は、異世界に入って初めてのものだ。
蹴とばされた虫の後ろからは、また、虫の大群が来る。
「小林さぁ~~ん?」
「? 何ですか??」
「俺も。攻撃してもいいっスかねぇ~~?」
ニヤリと。
「勝手にしたらいい」
小林は五十嵐を手で払う。
すると。
「よっしゃ~~~なろォーーーーーーッッ‼」
「……何? よ、喜んでるよ?? 五十嵐さん……」
浦飯が、恐ろしいいものを見るかのような顔を五十嵐に向けていた。
「だって。ほら、浦飯さん」
「え?」
「知らないの? 五十嵐さんのあだ名」
「んん? 知らないよぅ?」
小走りに走りながら、後ろを向く。
◆
「名物のあの人がいなくなると寂しくなるもんだ」
第四休憩室から出た入江が、第一休憩室の前を通りかかったときのことだ。
(……江頭の主任の話か?)
聞くつもりはなかった。
だが、そこから動けなくなってしまった。
「ああ。あのーーえっと、何だっけ?? んっっとォー~~?」
《疾風の江頭》だ。
(ド阿呆どもが)
扉を入江が睨む。
「疾風だっけ~~ははは! ウケるぅ~~!」
イラッ…
「でも。ほら! まだ恥ずかしいあだ名持ってる臨時社員っているじゃん!」
「えー誰だァ~~??」
ガヤガヤ。
「私、知ってるんちょ!」
「お! はいッ、お答えを‼」
ギャハハ!
《憤怒の五十嵐》
シーー……ン。
一気に声が聞こえなくなった、と同時に。
ヒソヒソ。
「あんまり大きい声出すと聞こえるんちょ! この時間は~~」
「! やっべ! やっべ‼」
バタンーー……!
入江は後ろの第三休憩室を見た。
そこには。
「‼」
声を出しそうにある入江に、口に指を立てる五十嵐の姿があった。
◆
「あの男は強いよ」
「ん~~見えないな~~ぁ」
「見えないように努力してんだよ」
「五十嵐さんのこと分かってるのねぇ~~」
類は友を呼ぶ。
こんな諺がある。
「俺と同じだからね。五十嵐さん」
彼も、常にーー怒っているのだ。




