#21 危険な果実
ギュイ、ギュイ! グワッ、グワワ‼
様々な生き物の声が、入り交ざる。
「なななな、何か怖い場所ね~~入江ちゃあん~~」
浦飯は入江の腕に絡みつくように歩く。
「……な~~、浦飯さんて、胸て何カップ? 結構、大きいよなァ」
「!?」
浦飯の顔が、ボッ! と赤く染まる。
「な、なななな、何よ! 急にッ」
「いや。腕に柔らかいのが当たって気持ちよくてさ~~」
にへら。
助平面する入江を、顔パンする。
ドッガ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン‼
「ぅお!」
入江の身体が吹っ飛ぶ。
五十嵐と小林が呆れた顔で、ため息を漏らす。
◆
ぷ~~~~~! ククククッ!
「フフフ!」
クラレントが笑い声を押し殺す。
クラレスも、
「もう。声出したら? 気持ちが悪い」
呆れた声を発していた。
どちらのパーティにも、こんな人間は必ず居るのだ。
「しかして。これからどう試してーー」
ポイ!
「!? 何を投げたのだ?? クラレス!」
ひゅるるるる~~~!
落下していくものを、クラレントが目で追う。だが、正体が分からない。
だから、落っことした本人に聞くほかない。
「主様の、御心だーー」
◆
そんな二人のやり取りを知らない四人は。
「あ゛~~! 腹減ってきたァ~~~ッッ!」
入江がお腹を押さえた。
ぐぅ、ぐぅーー……ぎゅるる!
お腹も自己主張するように鳴る。
「なァんかねェのォ~~あ゛~~腹が減ったァ~~」
周りの木々には実をつけたものがある。だが、毒かどうかも分からない。
涎が出ても、我慢を強いられる。
ブチ‼
「もォー~~食うから! どうにかなるっしょ!」
そう入江が吠え、目に留まった木の赤い実へと手を伸ばした。
「おーーい。そこのお馬鹿さ~~ん??」
五十嵐が入江に強張った声を送る。
ビクク!
一瞬、躊躇する。しかし、我慢は限界だった。
「いっただきまァ~~……」
『この禿がよぉ~~。馬鹿かってんだ』
「! にゃぬ!?」
そこには。
『そいつぁ、ダメだわ。やめとけや』
江頭保が居た。
透けて、揺れるだけの映像。
しかし、しっかりと実を掴んだ入江の手を止めている。
熱も、脈も感じる。
「! 江頭、主任……ッッ!?」
『大声を出すんじゃねぇって、頭が可笑しくなったって言われっぞ。今は、お前にしか見えないかんな』
入江が、ちらりと目をやる。と。
ギロリ。
小林と目が合ってしまう。獰猛な目で、睨まれている。
『この実ぁ、《髑髏の舌》っつ~~猛毒だ』
手から実を落としそうにもなるものの。
『で。この熟したのがダメなんだわ。こっちの青い奴が食えるんだ』
入江の目が輝く。
パク! モグモグーーじゅわわわ、甘い、美味い‼
「「「!? おいッッ‼」」」
三人が驚きの声を 同調させた。
確かに食べられる!
「ど、どうして。教えてくれんだよ……主任」
ふわ。入江の頭に江頭の手が乗せられる。
『今、死なれちゃあ計画が破たんしちまうかんな』
計画? 一体、何の話だ??
『あとぁー俺は、お前が可愛いと、本気で真面目に思ってるだけさ~~』
ちゅ。
前髪越しではあったが、額に口づけをされた。
「!? なッ‼」
カカカカ!
『じゃあな。出口』
そして、彼は消え去った。
◆
安全が確認されたところで、みんなが実を頬張った。
ムシャ、ムシャ!
「チャレンジ精神旺盛なのはよくないぞ! 出口!」
五十嵐が頬張りながら、入江を叱る。
「はいはいっと」
バッコン‼
小林が入江の脳天を肘で叩いた。これは痛い。
「!? あにすんだよ‼ アンタって奴ァ‼」
小林は不機嫌だ。すごむ。
「……何か、言えば??」
「誰に聞いた? 聞いたろ??」
確信のある言葉のように小林は言う。
「アンタにゃあ関係ねェじゃんかよ!」
「--ないとか、言うなよ……」
小林が泣き声になる。
「いつかな」
しかし、入江はそれを受け流した。
小林の様子よりも、ただ、今は江頭のことを考えていた。
(ありがとな、主任!)




