6
お茶を飲み干したわたしを、アーレイン様が凝視していた。
待って、とすがるような。けれど、何かを期待するような。
瞳の奥底が、暗く光っている。
嫌な予感がした。
まさか……これを、入れたの?
わたしに……?
そんなこと、しない人だと思っていたのに。
アーレイン様の目の前にある、茶色い小瓶。
体が、熱い。
胸の奥が、じわりと高揚していく。
頭の中が、とけてしまいそう。
「リ、リセ……大丈夫か。あの、俺……」
眉尻を下げ、青い顔でわたしを見つめるアーレイン様は、ああ、やっぱりなんて綺麗。
「――アーレイン様、大好きです」
あ。
と、時が止まった。
口を押さえる。
大丈夫、と言いたかったのに、口から出たのは愛の告白だった。
なんてこと。
高揚した感情が、自分の意志とは関係なく想いを零させる。
自分の反応に混乱するのと同時に、頭のどこかが冷えていた。
やっぱり、盛られたのだ。
この、小瓶の薬を。
わたしの隣に立ったアーレイン様は、戸惑ったように、けれど呆然とわたしを見つめていた。
「リセ……。それは、本心だろうか。いや、そうじゃないかもしれないんだよな」
後悔するように、噛み締められた唇。
「すまない、リセ。その告白は嬉しいが、きっとその想いは偽物だ。
俺は……君に薬を飲ませてしまった。
本当は、俺が飲もうと思っていたんだ。君に想いを伝える勇気がでなくて、だから俺は――」
「いいえ、アーレイン様。この想いに、偽りはありません」
足が、勝手にアーレイン様へ向かう。
手が、アーレイン様の頬へ伸びる。
鼓動が、うるさいくらいに鳴っていた。
熱に浮かされたようなアーレイン様の瞳。けれど、首を必死に振っている。
「違う。その想いは偽物なんだ。惑わされてはいけない」
「アーレイン様……」
彼の名を呼び、頬に手を添えた。耳まで赤くなっていくのが可愛らしい。
「リセ、だめだ。君が好きなんだ。
薬でこんな風になりたかったわけじゃない」
「好きなら、抱きしめてもくださらないのですか?」
「っ」
迷っていたアーレイン様の腕が、恐る恐るわたしの背中に回される。
その腕に、そっと力がこもる。
「……リセ。好きだ」
アーレイン様の腕が緩んで、視線が交差する。
麗しいお顔に、顔を寄せる。
アーレイン様は逃げなかった。
わたしの想いに応えるように、彼の顔も近づいて――
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