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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第六章 二人に、言えない

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堂々と二股しろってこと!?

 翌日の放課後。

 職員室で入部届をもらい、私はもう一度、オカルト研究部の前に立った。

 昨日と同じ貼り紙。違うのは、部屋の中から、ののみ以外の声が聞こえることだった。


「四条さん、これ、活動記録の欄が空欄なんだけど……」

「活動はしてるみゅん。記録が霊的に追いついてないだけみゅん」

「霊的に追いついてないって、職員会議でなんて説明すればいいのぉ……」


 その頼りない声を、私は知っている。

 引き戸を開けると、顧問席に座っていたのは、現国の新米教師、藤代終(ふじしろつい)先生だった。


「えっ。せ、先生……っ、どういうこと!?」

「ふぇっ!? な、なに、新入部員って佐倉さんだったんだ」

「ぴこーん。真白ちゃんとツッチー先生、既知の波長みゅん?」

「既知っていうか、授業で……」

「ツッチー先生はオカルト部の顧問みゅん。じゃんけんで負けて押し付けられたって、職員室で泣いてたみゅん」

「い、言わなくていいの、四条さん!?」


 終先生がタブレットを抱え直して、涙目でののみを見る。

 教師と生徒は別の動線だから同時攻略できる。そういう話だったはずなのに。

 この二人、同じ部室で一緒にいる。


「真白ちゃん、書類のハンコはツッチー先生が押すみゅん」

「あ、うん」


 私が入部届を机に置くと、終先生は印鑑を探して、自分の鞄をごそごそし始めた。


「えっと、判子、判子……あれ、ない。さっき職員室では、あったのに……」


 赤ペンの束、のど飴、しわくちゃのプリント。

 先生が一つずつ机に出していくうちに、ぽてっ、と手のひらサイズのクマのぬいぐるみが転がった。


「……っ!?」


 終先生が、それをすごい速さで鞄に戻す。

 顔は耳まで赤い。


「い、今のは、違うの、これは……っ」

「ツッチー先生、いつもそれ持ってるみゅん。お守りみゅん」

「ののみちゃん、それは言わない約束ぅ!」


 久遠先輩が言っていた、ぬいぐるみと会話する先生。

 その情報が、今かなりの精度で裏づけられている。

 判子は結局、先生の胸ポケットから出てきた。


「未知の扉は、開ける前に必ず先生に相談すること。立ち入り禁止区域とか、本当にだめだからね?」

「旧校舎のことみゅん?」

「い、言ったそばからぁ……!」


 旧校舎、という単語に、終先生の声が上ずった。

 終先生が部活の顧問? そんなの想定外なんだけど!?



***



 翌日の放課後、私は十六室(じゅうろくしつ)で、昨日の一部始終を報告した。

 話し終えても、紡先輩はスマホから目を上げない。

 久遠先輩はソファで脚を組み、雪乃(ゆきの)は壁際で腕を組んでいる。


「……顧問。知らなかったわ」

「私も部室で初めて知りました。オカルト研究部の顧問が、終先生で」

「部活動のデータまで見ておくべきだったわ。先生と生徒なら同時攻略ができる、という前提が崩れた」


 紡先輩は黙って、スマホを置いた。

 しゅんと小さくなっているのが、なんとなく伝わってきた。

 一方で、久遠先輩だけは、なぜか楽しそうに私を見ていた。

 雪乃は、壁際から、じとっと私を見る。


「オカルト研究部、楽しそうで何より」

「雪乃、拗ねてる?」

「拗ねてない。……ただ、たまには私のことも、構えよバカ」


 雪乃は、ふいと壁のほうを向いた。

 私はその横顔から目を逸らして、紡先輩へ向き直る。


「どっちか一人から、順番にいきます。同じ部室で一緒になるなら、同時攻略は危なすぎます」


 これ以上、失敗したくない。

 そう続ける前に、久遠先輩が口を挟んだ。


「いいえ。いけるんじゃないかしら」

「え?」


 久遠先輩は、困惑する私を見て笑った。


「藤代先生は教師よ。仮にあなたへ特別な感情を持っても、部室でそれを口にはできない。四条さんも、先生の前で恋人になりましたとは言えないでしょうね」

「確かに。終先生は教師として言えない。四条ののみ(しじょうののみ)もわざわざ教師に報告しない。二人とも、好意を公言できない構造があるわ」


 私はテーブルに手をついた。


「それ、つまり……堂々と二股しろってことじゃないですか!?」

「同時攻略よ。今までやってきたじゃない」

「そ、そうですけどっ」


 分かっている。

 帰るためには、瓶を満たすしかない。何度もループして、何度も誰かの未来を消して、ここまで来た。

 それでも、隠して二人に近づくのは、これまでで一番たちが悪い進め方に思えた。


「真白」


 久遠先輩が、私の前に来る。


「嫌なのは分かるわ。でも今さらでしょう。もっといろんな子を誑かしてきたのよ。この一つだけ綺麗にやろうなんて、ずるいわ。……やりなさい」


 いつもの、久遠先輩の声だった。

 その通りだ。今更泣き言を言っている場合ではない。


「……二人に、バレないように頑張ります」


 そう言って私は十六室を出た。

 あの賑やかな二人に笑いかけながら、隠れて、同じ日に二本の瓶を満たす。

 何度やっても、好きになれないやり方だ。

 それでも立ち止まれなくて、私は部室棟へ続く道へ向かった。

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