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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第六章 二人に、言えない

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電波少女と指切り

 部室棟のいちばん奥、廊下の突き当たりに、その部屋はあった。

 すりガラスの引き戸には、手書きの「オカルト研究部」の貼り紙。

 カーテンが閉め切られた部屋の奥で、ツインテールの女の子がジャンプして、勢いよく顔を上げる。


「ぴこーん。……波長、キャッチしたみゅん」


 みゅん、と来た。

 現実世界で、語尾に「みゅん」をつける女の子に会ったことはない。いや、現実世界の話をここに持ち込んでも仕方ないか。


「……入っていい、ですか?」

「どうぞみゅん」


 許可をもらって、私は部室に入った。

 床の端には段ボール箱が積まれている。中身は古いオカルト雑誌で、表紙には怪しい見出しがたくさん。


「あ、えっと……四条さん、だよね」

「四条さんだと、受信感度が下がるみゅん。ののみでいいみゅん」

「じゃあ、ののみ」

「ののみは受信成功みゅん!」


 ののみは、満足げに頷き机の上のカードをまとめる。

 何が成功したのかは分からないし、その怪しげなカードは一体何?


「あなたのお名前を教えて欲しいみゅん」

「佐倉真白(さくらましろ)だよ」

「真白ちゃんは、どんな不思議に導かれてここへ来たみゅん?」


 イルカイルのプロフィールを思い出す。

 四条ののみ。オカルト研究部で、学校の七不思議を追いかけている子だ。


「七不思議に興味があって」

「ぴこーん! いいみゅん。ののみんのアンテナ、真白ちゃんに反応してるみゅん」


 アンテナ、と言われて、私はののみの髪留めを見た。

 これがアンテナなんだろうか?

 本気なのか、冗談なのか。考えている間に、ののみは壁のメモを一枚はがし、私の前に置いた。


「この学園には、七つの不思議があるみゅん」


 ののみは、メモの端を指でたどる。


「普通科の三階のトイレ、三番目の個室をノックすると、同じ数だけ返ってくるみゅん。理科準備室の人体模型は、毎朝ちょっとずつポーズが変わってるみゅん。あと、大学棟の学食の自販機で夜に一番端の缶コーヒーのボタンを押すと、呪いの黒い缶が出るみゅん」

「最後のはちょっと試せそうだね」

「試したみゅん。普通のコーヒーだったみゅん」

「現実的だ」

「でも、旧校舎(きゅうこうしゃ)は違うみゅん」


 ふざけた語尾はそのままなのに、ののみの手がそこで止まった。


「旧校舎は、閉まってるのに音がするみゅん。夜になると、地下から誰かが呼んでるって噂があるみゅん」

「地下?」

「あるはずない地下みゅん。だから、探す価値があるみゅん」


 あるはずない地下。それを聞いて、ピンと来た。

 紡(つむぎ)先輩が、旧校舎を気にしていたことを思い出す。


「……面白そう。私、入部したい」

「本当みゅん?」

「うん。七不思議、もっと聞きたい」

「ののみん、ひとりぼっちだったから、嬉しいみゅん!」


 胸の前で両手を握るののみは、さっきより声が跳ねていた。

 喜ばせたぶんだけ、この子は私に近づいてくるようだ。


「入部するには、どうしたらいい?」

「職員室(しょくいんしつ)で入部届をもらって、ツッチー先生に提出するみゅん」

「ツッチー?」

「顧問(こもん)の先生みゅん。明日も部室に来るから、真白ちゃんも明日来てほしいみゅん」


 顧問の先生に届を出すだけなら、話は早い。

 知らない先生だけど、明日また書類を提出すれば、入部できる。


「わかった。じゃあ、明日来るね」

「ぴこーん。約束、受信したみゅん」


 部室を出ようとすると、ののみが小指を立てて差し出してきた。


「真白ちゃん、ゆびきりするみゅん」

「指切り?」

「約束は、声だけだと電波で消えちゃうみゅん。指で結ぶと、消えないみゅん」


 断る理由はないので、私は小指を絡めた。


「ゆーびきりげんまん、嘘ついたらアンテナ千本飲ますみゅん。……絶対、明日来てみゅん。絶対みゅん」

「うん。絶対、来る」


 私がそう返しても、絡んだ指はすぐには離れなかった。

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