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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第五章 届かない相手

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今日も、最後まで出来ない

「というわけで、涼香(すずか)とは恋人に戻りました」

「順調イルカね! 双葉涼香の瓶を出すイルカ!」


 翌日の放課後の十六室(じゅうろくしつ)。

 週末の報告を終えると、ポンッ、と間抜けな破裂音と共に、空中にガラス瓶が出現した。

 底の方に少しだけ溜まっていたピンク色の液体は、今は瓶の八割以上の高さまで満ちている。


「かなり溜まってるイルカね! 元カノとヨリを戻した勢いで、一気に跳ねたイルカ。もうこれ、あとはえっちすれば満タンイルカ! ……えっちできそうイルカ?」

「……できる、はず」


 私の返答に、雪乃(ゆきの)が不機嫌に唇を尖らせた。

 イルカイルは続いて、紡(つむぎ)先輩の瓶を空中に取り出した。

 だが、その瓶は、底がわずかに色づいた程度だった。日曜日に私の家で過ごしたのに、キスの分しか溜まっていない。


「どういうことだこのクソチビ! 日曜日、真白(ましろ)と二人きりだったんだろ!」

「なっ、クソチビって言ったわね! こっちだって頑張ったわよ!」

「頑張ったって、瓶が空っぽじゃ意味ないだろ!」

「私だって服脱いで、触ってもらったわよ!」

「はあ!? じゃあ、あんたも真白に触られたのに、何もできなかったってことだろ!」

「うっ……」

「偉そうに指示出してたくせに、自分が当事者になったら全然ダメじゃないか!」

「あ、あんたに関係ないでしょ!」

「あまりにも黒羽さんに魅力がなくて、真白が手を出さなかった可能性もあるわね」


 雪乃の怒鳴り声と、久遠(くおん)先輩の冷ややかな煽りが室内に響き渡る。

 私はソファーに座ったまま、冷静に口を開いた。


「そういうわけじゃありません。昨日の紡先輩、すごく可愛かったですよ」

「か、かわっ!?」


 紡先輩は両手で頬を押さえ、その手の下まで色が広がっていく。


「ただ、人それぞれペースがあるんです。だから、ゆっくり頑張りましょう、紡先輩」

「真白……ええ、そうね! 私のペースがあるのよ!」


 私の言葉に勢いを得た紡先輩が、ふんっと胸を張った。


「……っていうか、真白」


 雪乃が、低い声を出した。


「いつからクソチビのこと、“紡”なんて呼んでるんだ」

「昨日、そう呼んでいいって言われて……」

「一回家に呼んだだけで、ずいぶん距離を詰めたものね」


 冷ややかに言ったのは久遠先輩だった。その声には、いつもの余裕より少しだけ棘がある。

 雪乃はソファーのクッションをつかみ、力任せに叩きつけた。


「だから、それ備品だってば」

「うるさい!」


 久遠先輩は紡先輩を見たまま、手元の書類を閉じた。


「……とりあえず、逢坂亜里沙(おうさかありさ)とはあと二回で溜まりそうなのね?」

「そうイルカね」

「じゃあ、当面は黒羽さんとどうにかするしかないわね。黒羽さんの瓶が溜まり次第、次の行動に移りましょう」

「でも、紡先輩のペースが」

「嫌だけど、今日から毎日真白と行動しなさい。そうすれば関係も深まるでしょう」


 久遠先輩の厳命により、紡先輩と過ごす時間を作ることが決定した。



***



 えっちしないとはいえ、亜里沙や涼香との関係も維持しなければならない。

 その日の放課後、私は特進(とくしん)クラスに涼香を迎えに行き、一緒に帰路についた。

 駅までの道のりで、今週の土曜日に水族館へ行く約束を取り付ける。

 そして家に帰りベッドに寝転がると、携帯が連続で振動した。


『真白、週末のご予定は空いておりますの?』

『返信が欲しいですわ』

『もしかして、他の方とお約束が?』


 亜里沙からのメッセージが画面を埋め尽くしていた。

 これ以上放置はできないと判断し、私はすぐにフリック入力を開始する。


『ごめんね、亜里沙。亜里沙の顔が見たいから、日曜日は会いに行くよ。ずっと一緒にいよう』


 そんな露骨に甘いメッセージを送信し、日曜日の予定を確定させた。


 土曜日は涼香と水族館でデートをし、日曜日は亜里沙の家で過ごした。

 二人とも、別れ際に甘えた声でキスをせがんで来た。

 私はその要求に応えて何度も口付けを交わしたが、それ以上の関係に進むことは回避し、現状の好感度を維持することに徹した。



***



 月曜日の放課後。

 零式会で週末の報告を終えたあと、私は紡先輩を家に連れてきていた。

 私と紡先輩はローテーブルを挟んで向かい側に座っている。


「あの、私は無理やり進めるつもりはありません。全然、次のループでもいいんですよ」

「だ、ダメよ」


 紡先輩はベッドに移動し、寝転んだ。


「ほら、来なさい真白」

「でも……」

「いいから」


 私もベッドに移動し、紡先輩に覆い被さる。


「嫌だったら、言ってください」

「分かってる」


 ボタンを一つ外す。

 紡先輩の肩がびくんと震えた。でも、私の手を止めなかった。

 二つ目を外す前に、私はキスをした。

 間を置いて、もう一度。今度は離れずに、少しだけ留めた。

 紡先輩の手が私の肩に回る。私は、ボタンをもう一つ外した。

 キスをしたあと離れると、紡先輩が目を開ける。


「続けて」

「はい」


 ブラウスの前を開く。

 紡先輩は胸元を隠そうとして、途中で手を止めた。

 私はもう一度唇を重ねた。キスをしながら、肌に触れる。

 首筋から鎖骨のあたりへ、触れる場所を徐々に変える。

 紡先輩は何度か息を詰めた。

 そのたびに私は止まり、紡先輩が頷いてから続けた。


「ここ、触れてもいいですか?」

「……うん」


 私は紡先輩の胸元に触れた。

 布地をずらし、直接その肌に触れる。

 熱を帯びた場所を指先で優しく触れると、紡先輩は身悶えし熱い吐息を漏らす。


「ん、ぁ……っ」


 紡先輩はシーツをきつく握りしめ、私の動きを受け入れている。

 快感に耐えかねて身体を微かに震わせ、蕩けた吐息を零し続けた。

 私はキスを重ねて彼女の緊張を解きほぐしながら、手をゆっくりと下腹部へと滑らせていく。

 紡先輩はビクッと身体を強張らせたが、私の手を拒まない。

 私は太ももの内側へと触れた。すべすべした滑らかな肌を、指先で撫でる。


「は、ぁ……ましろ……っ」


 太ももを撫でていた手を、徐々に中心へと近づけていく。

 その手が、その奥へ届こうとした瞬間――紡先輩が、私の手を強くつかんだ。

 その指に、痛いほどの力がこもる。


「……っ、ぅ……っ」


 今度は声を殺して、唇を噛んでいた。それでも、目尻から涙が盛り上がってこぼれる。

 私は、手を止めた。


「紡先輩」

「……なんで。前より、進めたのに……あと少し、だったのに……っ」


 怖くて泣いた前回とは、違う。これは、悔し涙だ。

 つかまれたままの指を、そっと握り返した。


「ダメじゃないです」

「だって、進めない」

「進めましたよ。前より、ずっと先まで」

「……っ」


 紡先輩は返事の代わりに、唇をへの字に曲げた。

 私が身体を起こして両腕を広げると、紡先輩は今度は何も聞かないうちに、私の胸へ飛び込んできた。背中に手を回すと、肩に額をぐりぐり押しつけてくる。


「子供扱いはしません」

「……まだ何も言ってない」

「言われる前に言いました」

「……馬鹿」


 声は落ち込んでいたけれど、前より、ずっと距離が近づいた。

 私は紡先輩の髪を乱さないように撫でる。


「焦らなくて、いいですよ。今日、こんなに進めたんですから」

「……うるさい。分かってる」


 分かってる、と言いながら、紡先輩はいつまでも私の服を離さなかった。



***



 あれから、私は徹底したスケジュール管理で立ち回った。

 昼休みは亜里沙と涼香の教室へ交互に会いに行き、放課後は零式会があるという名目で直接会うことを避け、紡先輩と一緒に過ごした。


『今度の日曜日は、私と過ごしてくださいますわよね?』

『もちろん。亜里沙のこと、誰よりも一番に考えてるから』


 亜里沙からの連絡には、恋人に送るような甘いメッセージを即座に返し、今度の日曜日も一緒に過ごす約束を取り付けた。

 自分の立ち回りを振り返り、なんて女だ、と自嘲する。

 直後、携帯が再び振動し、画面に涼香の名前が表示された。


『そろそろ期末テストの期間に入るから、来週からは会えない』


 期末テスト。

 その文字を見た瞬間、私の脳内で全てのスケジュールが繋がった。

 期末が終わった直後。

 そのタイミングこそが、三人の瓶を同時に満タンにする、全ての決着をつける日だ。

 私は返信画面を閉じ、天井を見上げた。

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