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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第五章 届かない相手

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ボタン、外したのに

「優(ゆう)からは、ラブエナジーは心を通わせた二人がキスをすれば溜まると聞いたわ」


 日曜日。私は自室のローテーブルを挟んで、黒羽(くろは)先輩と向き合って座っていた。


「えっと、つまり、キスすればいいのよね?」


 開口一番、そう言った。


「え?」

「私は、全然、キスぐらいなら平気よ。嫌じゃないし。ただ、心を通わせるの定義が曖昧でよく分からないわね。とりあえずキスしてみたらいいのかしら? ほら、私は大丈夫よ! 真白(ましろ)、かかってきなさい!」


 両手をグーにして握りしめ、目をギュッと瞑って口を突き出してきた。

 決闘か何かだと思ってるんだろうか。

 私は、黒羽先輩の方を真っ直ぐ見た。


「えっと、本当に優さんからはそう聞いてたんですか?」

「ええ。キスすればいいって」


 きっと、優さんは黒羽先輩のことを大事にしていたのだ。

 攻略をすることは、相手の好意を利用することになる。

 黒羽先輩にはループしても記憶が残るから、尚更だ。


「あの、まずは黒羽先輩のこと、紡(つむぎ)先輩って呼んでもいいですか?」

「いいけど」


 私は立ち上がり、ローテーブルを回り込んで紡先輩の横に座り直した。


「じゃあ紡先輩。勘違いをしています」

「何を?」

「ラブエナジーは、キスでは溜まりません」

「ええ!?」

「正確には、キスでは溜まりますが、キスだけでは完全に溜まりません」

「でも優は」

「紡先輩には言えなかったんだと思います」

「どういうこと?」

「ラブエナジーは、えっちしないと溜まらないんです」


 私の言葉に、紡先輩は目を見開き、口をパクパクと動かした。


「ええええええ、えっち!?」

「はい」

「え、待って、じゃあ優は!?」

「おそらく、あの六千人すべてと、そういうことまで、しなきゃいけなかったんだと思います」


 この神宮寺の街で、それだけの人数と身体を重ねる。優さんが途中で逃げ出してしまったとしても、私はそれを責められない。


「えええ!? え!? じゃあ真白も!?」

「そうですね……私も、そういうことです」


 紡先輩が両手で顔を覆い、ぶるぶると震え始めた。


「どうしますか? これからも紡先輩は協力してくれるから、後回しという提案をします。次のループでも……」

「で、でもそのうちやらなきゃいけないことよね」


 紡先輩は顔を覆ったまま、しばらく動かなかった。

 やがて、紡先輩は顔を上げ、ローテーブルに両手を置いた。


「や、やるわ私! ほら、真白きなさい! やってやるわよ!」


 シュッシュッ、と紡先輩が空に向かって拳を突き出す。

 謎のボクシングの構えだ。


「ものすごくやりにくいんですが……とりあえず、ベッドに行きましょう」

「は、はい!」

「どうして敬語なんですか」


 私たちはベッドに移動し、並んで腰を下ろした。

 紡先輩は、背筋を伸ばして膝の上で両手をぎゅっと握った。


「じゃ、じゃあ」


 私が紡先輩の肩に手を添えた瞬間、身体が跳ねた。


「だ、大丈夫ですか? 無理なら……」

「大丈夫よ! 来なさい真白!」


 紡先輩は目を閉じ、唇を結んだまま待っていた。

 私はまず、触れるだけのキスをした。

 すぐ離れると、紡先輩は閉じていた目を開ける。


「……終わり?」

「最初から急にしたら、びっくりするかなって」

「そ、それはそうね。段階的検証は大事だわ」


 そう理屈を話す紡先輩の頬は、さっきよりずっと赤かった。

 私はもう少しだけ長く、唇を重ねた。

 紡先輩の肩から、ふっと力が抜ける。

 その頬に手を添えて、離れる間際にもう一度だけ軽く触れた。


「紡先輩」

「な、何」

「もっとキスしてもいいですか?」

「……確認を取ってくれて、ありがとう」

「答えは?」

「いい、わよっ……」


 私は紡先輩の唇に触れ、ゆっくりと角度を変えた。

 唇を開くと、紡先輩の指が私の袖をつかむ。

 舌先で触れた瞬間、紡先輩は私の肩を押して身体を引いた。


「紡先輩、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫よ!」

「無理してません?」

「してない! 今のは、想定より刺激が強かっただけ!」

「それ、大丈夫って言っていいんですか?」

「いいの! 続けなさい!」


 紡先輩は自分から私の袖を引いた。

 私は頷き、もう一度キスをした。今度は浅く触れて、紡先輩が逃げないのを確かめてから、少しずつ深くした。

 キスを重ねながら、私は紡先輩の背中に腕を回した。

 ベッドに横になる時も、急に倒さず肩を支えたままゆっくり体勢を変える。

 紡先輩は枕に頭を預け、私を見上げた。

 私は顔を寄せ、もう一度唇を重ねてから、ブラウスの一番上のボタンに触れた。


「脱がせても、いいですか?」

「……ええ」


 紡先輩の返事を聞いて、私は一つずつボタンを外した。

 布地の下に触れる前、もう一度顔を見た。

 紡先輩は困った顔をしながら、頷いた。

 私は肌に触れた。

 紡先輩の肩がこわばる。


「やっぱり、嫌ですか?」

「違う。大丈夫」


 大丈夫。

 その言葉を信じたい。けれど、紡先輩の指はシーツをつかんでいた。

 私は手を止めた。


「紡先輩、やっぱり今日はここまでに」

「大丈夫。大丈夫だから、続けて」


 紡先輩はそう言って、私の手に自分の手を重ねた。

 その手に導かれるまま、私はゆっくり指を滑らせる。

 キスの合間に、触れる場所を少しずつ変えていく。

 素肌をなぞるたび、紡先輩の肩が、ぴくりと震える。

 そして、服をさらに脱がせようとした、その時だった。


「ひっ……ふぇ、ぇ……っ」


 紡先輩の目から涙がこぼれた。


「ご、ごめんなさ……ふぇぇ……嫌じゃ、ないの……嫌じゃないんだけど……こわ、怖くて……っ」


 紡先輩は腕で顔を隠した。

 私はすぐに手を引き、はだけていたブラウスを戻した。


「ごめんなさい。無理させました」


 私は紡先輩の身体を、起こさせた。

 紡先輩はまだ顔を隠している。私は隣に座り、触れていいかを聞く。


「抱きしめてもいいですか?」

「……ええ」


 返事を待ってから、私は紡先輩を抱き寄せた。

 紡先輩の額が私の肩に当たる。

 背中に手を回すと、紡先輩は私の服をつかんだ。


「真白……ごめんなさい……」

「大丈夫ですよ、紡先輩。謝らないでください」

「でも、私は協力するって」

「協力って、無理することじゃないです」


 そう言うと、紡先輩の指先に、ぐっと力がこもった。

 私は彼女の髪を乱さないように撫でた。


「……子供扱いしないで」

「してません。今日、紡先輩がすごく頑張ったの、分かってますから」

「……うぅ」


 紡先輩の声はまだ掠れていた。

 私はベッドの端に置いてあったブランケットを取り、紡先輩の肩に掛けた。


「今日は、ここまでにしましょう」


 紡先輩は私の服をつかんだまま、しばらく離れなかった。

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