↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第五章 届かない相手

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/136

黒羽先輩に、連れ出されて

「そういうわけで、中間テストが終わるまで一切連絡できない上に、会えないと告げられてしまいました」

「ゴールデンウィークも?」

「はい……」


 昼休みの十六室(じゅうろくしつ)。

 母親に作ってもらった弁当を食べ終える前に、休日の報告をしていた。

 長机の端には、久遠(くおん)先輩が用意した攻略対象リストが並んでいる。

 私は弁当箱の蓋を閉じて、猫カフェでのことから順番に話し終えたところだった。

 すると、雪乃(ゆきの)が勢いよく立ち上がった。


「ということは、ゴールデンウィークは真白(ましろ)と過ごせるんだな!?」

「三上さん、あなた忘れたの? 真白と一日過ごすには百ポイント必要なのよ」


 久遠先輩が手元の書類から視線を上げずに告げる。


「うるさいこの淫乱女! 真白の身体が目的なくせに!」

「あなたも淫乱でしょう。会うたびに真白に迫っているそうじゃない。奉仕までさせて」

「真白が私を愛してくれてるから触れてくれるんだ!」

「真白を気持ちよくさせられない、ただの受け身の女が何か言っているわ」

「ななな…………! だ、だが私は一番最初に攻略されたんだからな! 記念すべき一号だぞ! お前は四号のくせに!」

「………」

「お、黙ったな!」

「いや待って、なんでみんなそんなこと知ってるの!?」


 私は慌てて二人の間に割って入った。

 雪乃は久遠先輩の書類を掴み、久遠先輩はその手首を涼しい顔で押さえている。


「イルカイルから聞いた」

「イルカイルから聞いたわ」


 二人の声が綺麗にハモる。


「あのクソイルカ〜〜〜〜〜〜!!!!」


 その直後、長机の奥で淡い光が走り、見慣れたイルカのホログラムが姿を現した。

 イルカイルは胸びれを上げ、その横に「中間発表」と書かれた半透明の画面を開く。


「中間発表イルカ〜!」

「ちょっと! イルカ! あんたなんてことを話してるの!」

「私は聞かれたことを話しただけイルカ!」

「それで、中間発表って何かしら?」


 久遠先輩が半透明の画面を覗き込む。


「現在のポイント数イルカ」

「それは気になるわね」

「現在のポイント数は──雪乃ゼロポイント! 久遠三百四十ポイント!」

「は、はあ〜〜!?」


 雪乃が机を両手で叩いた。

 弁当箱が揺れて、箸箱が机の上で滑る。

 私は慌てて箸箱を押さえた。


「もっとポイント稼げると思っていたけれど、結構渋いのね」

「雪乃、このままじゃ真白といつまで経っても二人きりになれなイルカ」

「なんでそんなに九条院はポイントがあるんだ!?」

「猫カフェデートは大成功だったイルカ! 猫カフェを提案したのは久遠だったイルカね」

「それだけで三百四十ポイントも入るのか!?」

「違うイルカよ。久遠はすでに攻略対象の情報をいくつも提供してくれてイルカ」


 イルカイルの言葉に、私は首を傾げた。


「え?」

「逢坂亜里沙(おうさかありさ)。二年C組の逢坂財閥の娘。彼女はお嬢様で優雅な生活をしているように見えるけれど、実はコンビニのチキンが好き」


 久遠先輩が、淡々と話し出す。


「随分とピンポイントな情報ですね……」

「藤代終(ふじしろつい)。現国の先生。ぬいぐるみを集めるのが趣味で、毎日ぬいぐるみと会話をしている」

「先生、それ知られたらダメなやつじゃ……」

「七瀬奈々(ななせなな)。今やネットでもリアルでも大人気のトップアイドル。ファンの前ではマカロンが好きと公言しているけれど、それは表向きで、本当はせんべいの方が好き」


 久遠先輩はそこで言葉を区切り、ふふっと笑った。


「私が調査したのはこんなところね」

「七瀬奈々は特に情報のガードが高いから、ゲットできたのはすごイルカ!」

「三上さんは一体何をしていたのかしら? 真白を想うなら、もっと頑張らないと」

「〜〜〜〜っ!!!」


 雪乃が顔を真っ赤にして久遠先輩に掴みかかる。

 二人が取っ組み合いを始めるのを横目に、私はシステムを理解した。

 攻略対象へ会いに行くだけではなく、きっかけになる情報を集めることにもポイントがつくわけだ。

 久遠先輩が涼香(すずか)の猫好きを調べてくれなければ、私は休日に涼香と猫カフェに行くこともなかった。

 そう考えると、久遠先輩の三百四十ポイントはずるい数字ではない。

 雪乃がゼロなのは、まあ、うん。


「私も中間テスト終わるまでは、何か調べようかな」


***


 その日の夜、私は自室のベッドに座ったまま、スマホを開いた。

 夕飯のあと、机に向かって教科書を広げてみたものの、文字はほとんど頭に入らなかった。

 何か行動しなければ、そう思い、私は攻略対象のプロフィール画面を開いた。


 涼香の過去を知らないまま復縁を迫るのは、どう考えても不自然だ。

 私はイルカイルを呼び出すため、声を上げた。


「イルカイル!」


 天井に光が集まり、いつもの忌々しいイルカが現れる。


「涼香と主人公の過去、全部教えて」

「はあ〜? そんなの知らなイルカ」

「なんで!? サポートしてくれるって最初言ってたじゃん!」

「そんなこと言われても知らなイルカ。だって前任者は涼香のことを……ごほんごほん」


 イルカイルは何かを言いかけて、わざとらしく咳をした。


「出せるのはこれだけイルカよ」


 空中にプロフィール画面が表示される。

 そこにあるのは、たった一行の単語だけだった。


 『元恋人(交際二年)』


「……これだけ?」

「これだけイルカ」

「何にも分かんないじゃん!?」

「そう言われても困るイルカ。じゃあ私は忙しいから消えるイルカ〜」


 イルカイルのホログラムが消えて、私はベッドに突っ伏した。

 これじゃあ、何も分からない。

 私はため息をつき、もう一度スマホを手に取った。

 次に表示されていたのは、別の攻略対象の名前だった。


『黒羽紡(くろはつむぎ)、三年生、特進(とくしん)クラス』


「知らない子。……探しに行かなきゃダメなのか」


 画面の文字をなぞる。

 三年の特進クラスなら、久遠先輩と同じだ。

 先輩に聞けば、それで済む話だった。

 ……それなのに、私はその一番早い手を、わざと選ばなかった。

 私はスマホを裏返し、天井を見上げた。

 知らない相手を探しに行くのは、攻略というより聞き込みだ。

 でも、自分の足で黒羽先輩を探しに行けば、特進クラスの校舎へ行く理由になる。

 涼香に直接聞くのは無理だ。

 今アタックしている女の子に他の女の子のことを聞くのは最低だし、そもそも今は涼香から「連絡しないで」と言われている期間でもある。

 でも、廊下で偶然会ってしまったら。

 その時に少しだけ話せたら。

 連絡はしない。約束は破らない。

 ただ、学校で偶然会うだけなら。


「偶然会ったら、話ぐらいしてくれるかも?」


 もし廊下で会えたら、その時は挨拶だけする。

 それは作戦と呼べるほどのものではない。

 明日の昼休み、特進クラスの校舎へ行くことを決め、スマホを伏せて、部屋の明かりを消した。


***


 次の日の昼休み。

 私は購買へ向かう生徒の流れから外れ、特進クラス専用の校舎へ向かった。

 涼香の姿は見えない。さすがに教室まで行くのは迷惑になる。

 確か、黒羽先輩は三年C組だ。

 私はC組の教室の前に立ち、入り口付近にいた生徒に声をかけた。


「すみません。黒羽先輩いますか?」

「黒羽さーん、呼ばれてるよ〜」


 教室の奥から歩いてきたのは、髪をボサボサに跳ねさせた女子生徒だった。

 そして、三年生とは思えないほど背が低い。

 黒羽先輩は私を見上げたまま、教室の入口で足を止めた。

 私は反射的につぶやいた。


「え、ちっちゃ……」

「あなた、失礼ね!」


 黒羽先輩がキッと私を睨みつける。


「す、すみませんつい」


 けれど、その怒りは一瞬で引っ込んだ。

 黒羽先輩は私の制服、顔、足元を順番に見て、最後にもう一度私の顔を見た。


「あなた、誰?」

「そうですよね。初対面ですもんね。いきなりすみません。佐倉真白です」

「佐倉…………?」


 黒羽先輩が、私の顔をまじまじと見直した。


「はい」

「……佐倉優(さくらゆう)との関係は?」

「え?」


 突然飛び出した名前に、私はポカンとしてしまう。


「誰ですか、それ」

「知らないの?」

「知らないです」

「じゃあ、佐倉出海(さくらいずみ)は?」

「え? 妹ですけど」


 黒羽先輩は私を見たまま、口の中で何かを呟き始めた。

 

「佐倉真白、妹は出海、優は知らない……。どういうこと……?」


 黒羽先輩はそこで言葉を切り、数秒、私を見つめたまま動かなかった。

 それから、人目を確かめるように廊下へ目をやる。


「場所を変えるわ。ここで話す内容じゃない」


 黒羽先輩が私の腕を掴む。


「え、いや、私、黒羽先輩のことをちょっと聞きに来ただけで」

「私もあなたのことを知りたくなった。来なさい」

「でも、もう昼休み終わりますよ?」

「サボる」

「特進クラスなのに!?」

「ほら、行くわよ」


 私は抵抗する隙も与えられず、彼女に手を引かれて廊下を歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。