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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第三章 練習だと、言い聞かせて

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また、練習?

 改札で二人と別れ、私は唯花と帰路につく。

 駅前の横断歩道へ向かう途中、反対側から来た人影が目に入った。

 銀色の髪と、前髪の横に留まった黒い細身のヘアピン、雪乃だった。


「あ、雪乃」


 名前が口から出た瞬間、私はしまったと思った。

 雪乃は足を止めた。

 表情はほとんど変わらない。

 けれど、私の方をじっと見てくる。


「真白ちゃん、三上さんと仲良かったっけ?」

「ただのクラスメイト、だと思う」

「でも今、名前で呼んでたよ?」


 唯花の言葉に、返す言葉が出てこない。

 雪乃は私の顔を見たまま、短く言った。


「……真白」


 雪乃は返事を待たず、駅の外へ走っていった。

 人の流れに紛れて、銀色の髪がすぐに見えなくなる。


 今、私の名前を呼んだ、気がする。

 でも雪乃とのことは、無かったことになっているはずだ。

 だから、聞き間違いだろう。


「真白ちゃん?」


 唯花に呼ばれて、私は雪乃が消えた方から目を離した。


「大和くん、いい人だったね」

「……うん。そうだね」


 唯花の言葉に、私は短く頷いた。

 確かに大和はいい人だ。

 それでも、五月の愛想笑いが頭から離れなかった。


***


 翌日の日曜日。

 昼前に五月から『課題が分からないから教えて! 真白の家に行ってもいい?』とメッセージが届いた。

 すぐに承諾のスタンプを返すと、一時間後には五月が私の部屋へやってきた。

 ローテーブルにノートと教科書を広げ、二人で並んで課題に向き合う。


「ここ、この英文の和訳が分かんない」

「カンマの前で一回切って。まず『私は昨日、佐藤先生に会った』」

「うん」

「その後ろの who は、佐藤先生の説明を足してるだけ。『その先生は私たちに英語を教えている』」

「え、戻って訳さなくていいの?」

「カンマがある時は、前から読んで補足を足す方が自然」

「なるほどなるほど」


 五月はシャーペンを走らせ、順調にプリントの空欄を埋めていく。

 一時間ほどで、全ての課題が終わった。

 五月はノートを閉じ、両手を天井に向けて思い切り伸びをした。


「終わったー! マジで助かった!」

「大和くんには聞かなかったの?」

「うーん、そういうのお願いするの申し訳ないっていうか……」


 五月が気まずそうに話した。

 私は教科書を束ねながら、昨日の光景を切り出した。


「大和くん、めっちゃいい人じゃん」

「いい人だよね。私だって、分かってるよ。……でもなんか、無理しちゃうんだよね」


 五月の手からシャーペンが滑り落ち、ローテーブルに転がる。


「大和の前だと、完璧な彼女でいなきゃって。嫌われたくなくて、ずっと気を張っちゃう」


 五月はテーブルから離れ、そのまま私のベッドへとダイブした。

 シーツに顔を押し付け、ジタバタと足を動かす。


「ちょっと、人のベッドに!」


 私が抗議すると、五月はベッドから顔だけを覗かせ、私へ手を伸ばした。


「真白も来ればいいじゃん」


 五月の指が私の手首を掴み、そのまま勢いよく引っ張られる。

 体勢を崩した私は、五月の横へ倒れ込んだ。

 互いの前髪が触れ合う位置に、五月の顔がある。

 昨日浮かべていた愛想笑いとは全く違う、無防備な表情。

 私はこれを見逃す手はないと判断し、五月の唇を自らの唇で塞いだ。


「んっ……」


 五月の喉から、微かな声が漏れる。

 数秒間、感触だけを分かち合い、ゆっくりと唇を離した。

 五月は、私の顔を見つめてくる。


「また、練習?」

「うん、練習」


 私が即答すると、五月は目を閉じた。

 それを合図として、私は再び唇を重ねる。

 今度は、互いの口内を舌先でなぞり合う深い口付けへと移行した。

 唾液の交じる水音が響き、シーツを掴む五月の指に力が入る。

 私は五月の首筋からゆっくりと唇を滑らせ、熱を帯びた素肌を優しく辿った。

 五月の体が小さく震え、私の腕の中で息が乱れていくのがわかった。

 わざと五月の一番敏感な部分を避け、お腹や腰のラインを指先で優しく撫で続ける。

 ——意地悪をしたいわけじゃない。ただ、もう少しだけ、この声を聞いていたかった。

 五月がもどかしそうに腰をくねらせ、シーツを掴む指に力が入る。


「んっ……真白……」


 甘えた声が漏れる。

 私は太ももの内側を指先でゆっくりとなぞり、際どいところまで近づいては、寸前で引き返す。

 五月の太ももが小刻みに震え、私の腕の中で息が荒くなっていくのがはっきりと感じられた。


「は……っ」


 五月が甘い吐息を漏らし、体をくねらせる。

 今度は触れるか触れないかの力で内ももの付け根をくすぐり、わざと指を遊ばせた。

 その繰り返しに、五月の腰がもどかしげに浮き上がり、喉から甘い声が零れ落ちる。


「……真白ぉ〜……」


 可愛い、と思った。

 焦らされて拗ねて、それでも自分から言えなくて。

 私は意地悪く微笑みながら、彼女の耳元で囁いた。


「何? どうしたの?」


 五月が顔を真っ赤にし、目を潤ませて言葉を詰まらせる。


「……うぅ……」


 彼女は恥ずかしさに耐えきれず、ようやく消え入りそうな声で言った。


「……うぅ……真白の意地悪……早く、触ってよぉ……」

「どこを?」


 五月が震える手で私の指を、自分の方へと導こうとする。

 恥ずかしいのに、それでも求めてくる。

 その仕草があまりにも可愛くて、もう焦らすのをやめようと思った。


「いい子」


 耳元でそう囁いて、私は求められるまま五月を甘やかしていく。

 ひときわ高い声がシーツに溶け、縋りつく指が私の背中を掻いた。

 カーテン越しの昼の光が、重なる二つの体を白く滲ませる。

 「練習」なんて建前は、もうどこにもない。

 私は泣きそうに揺れる五月の声を、心ゆくまで可愛がった。

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