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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第二章 救うのと、利用するのと

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目が覚めたら、隣に

 スマホのアラームを止めようとして、私は枕の横を手探りした。

 指先に当たったのはスマホではなく、零の髪だった。


「……ん?」


 目を開ける。

 カーテンの隙間から入った朝の光が、布団の上を斜めに照らしていた。

 その中で、零が私の隣に眠っている。

 昨日の部屋着は、布団の端に丸まっていた。


「…………」


 私は布団を引き上げ、自分の肩まで隠した。

 そっか。

 昨日の夜。

 そういうこと、ありましたよね。

 いや、誰に確認してるんだ私は。


 枕の下に潜り込んでいたスマホを取り出す。

 画面を点けると、時刻は十時を過ぎていた。

 通知欄には、唯花からのメッセージが一つ。


 『今日の授業のノートいる?』

 

 それだけだった。

 相変わらず学校からも担任からも連絡はない。


「本当に、都合よく流れるな……」


 呟いたところで、零が身じろぎした。

 零のまぶたがゆっくり開き、まだ眠そうな顔で私を見た。


「真白……」

「お、おはよう」


 零は返事の代わりに、布団の中から腕を伸ばしてくる。

 そのまま私の腰に腕を回し、ぴったりくっついてきた。


「ちょ、零。服。まず服着よ」

「あとで」

「あとでじゃない。今」


 零は私の言葉を聞いているのかいないのか、顔を近づけてくる。

 寝起きの熱が残った唇が、私の唇に触れた。

 一度離れたと思ったら、零はすぐに追いかけてくる。

 朝の挨拶で済ませる気なんて、最初からなかったらしい。

 零の手が私の背中へ回り、キスが深くなる。


「ん……っ、待って」


 言葉を挟もうとした口を、また塞がれる。

 零は昨日より迷わない。

 私の指に指を絡め、布団の中で体を寄せてくる。

 流されそうになる。

 流されてもいい、と思いかける。

 でも、昨日イルカイルが見せてきた瓶の目盛りが、頭の端でちらついた。

 このまま続ければ、たぶん溜まる。

 そうやって終わらせることもできる。


 私は零の肩を押さえ、唇を離した。


「待って、零」

「……いや、なの?」

「嫌じゃない」


 しょんぼりした零が私を見ている。


「嫌じゃない。だけど、このままじゃ良くない」

「このまま?」

「うん。私の家に隠れて、私とだけ一緒にいるっていうのは違う」


 零は私の指に絡めていた指を少し緩めた。

 私は布団の端に手を伸ばし、丸まっていた部屋着を零の方へ寄せる。


「とりあえず着て。話したい」

「……うん」


 零は部屋着を受け取り、布団の中で袖を通し始めた。

 私もベッドの脇に落ちていたTシャツを拾い、背中を向けて着る。

 振り返ると、零は膝を抱えるようにして布団の上に座っていた。

 その向こう、姿見の端に自分の姿が映る。

 首筋には赤い跡が、はっきり残っていた。


「…………」


 昨日の夜、零がそこに唇を寄せてきた感触まで一緒に戻ってくる。

 違う違う違う。

 思い出すな。

 今はそういう時間じゃない。

 私はTシャツの襟を指で引き上げ、鏡から視線を外した。

 零とちゃんと話をしないと。


「零」

「うん」

「お母さんと、どうにか仲直りできないかな。転校せずに済む方法。ピアノをやめるとか、全部従うとかじゃなくて、零が学園に残れる方法」


 零はしばらく黙っていた。

 けれど、うつむいたまま終わらせなかった。

 顔を上げて、ゆっくり口を開く。


「お母様は、私の話を聞かない」

「うん」

「私が何を言っても、ピアノの話になる」

「うん」

「でも……お父様なら」


 私は身を乗り出した。


「お父さん?」

「うん。お父様に相談してみたら……話を聞いてくれるかもしれない」

「零のお父さんって、家にいないの?」

「単身赴任してて、新幹線で二時間くらいのところにいる」


 新幹線で二時間。

 近くはない。

 でも、行けない距離でもない。


「連絡は取れる?」

「番号は知ってる」

「じゃあ、電話してみよう」


 零はすぐには頷かなかった。

 代わりに、枕元に置いていた自分のスマホを取る。

 画面を開き、連絡先の一覧を指で送っていく。

 その指が、途中で止まった。


「怖い?」

「うん」


 零はちゃんと自分の気持ちを口にする。


「じゃあ、私も隣にいる」

「一緒に?」

「うん。一緒に」


 零はスマホを両手で持ち直した。

 表示された名前を、私にも見せる。

 そこには、短く『お父様』と登録されていた。


「今、かける?」

「……うん」


 零の親指が、通話ボタンの上で止まる。

 私は布団の上に置かれた零の手に、自分の手を重ねた。

 零は一度だけ私を見て、自分の親指で通話ボタンを押した。


 発信音が鳴り始める。

 零はスマホを耳に当て、私の手を握り返した。

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