↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第七章 君が歌うなら

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/137

第126話 上達したギターと、隠したキス

 土曜日は、自室で『恋するリボン』を何度も弾いた。

 日曜日の朝も、私はスマホから音源を流し、ギターを合わせた。

 曲の最後までは進める。しかし、人差し指で複数の弦を押さえるFがどうしても濁った音になる。


「――まだ、綺麗に鳴らない」


 音源を止め、Fへ移る前のコードから弾き直す。


「もう一回」


 一回目は、押さえきれなかった弦が濁った。

 二回目は、Fの形を作る間に曲が先へ進んだ。三回目は全部の弦が鳴ったが、次のコードへ移る手が遅れた。

 私は同じ部分を繰り返し、指が迷わなくなったところで音源を曲の最初へ戻した。


「……よし」


 Fへ移る箇所が来ても、左手は練習した形を作り、全部の弦を鳴らしたまま次のコードへ移ることができた。

 Aメロから二番へ進む。

 五月(さつき)の合図を頼っていた場所も、譜面を見て最後のコードまで弾いた。

 音源が終わってから、途中で一度もやり直していないことに気づいた。


「――止まらなかった。一回も、間違えなかった」


 念のためスマホで録音しながら弾き直すと、またFは濁らず最後のコードへ辿り着いた。

 録音には、弦を鳴らす強さのばらつきや指が弦を擦る音も入っていた。

 それでも全部のコードが鳴り、音源から遅れず一曲を通せている。

 コードを一つ鳴らせなかった私が、『恋するリボン』を最後まで弾いていた。


「――月曜、みんなに聞いてもらおう」



***



 月曜日の放課後、零(れい)と久遠(くおん)先輩と五月が十六室(じゅうろくしつ)へ集まった。雪乃(ゆきの)と紡(つむぎ)先輩も、壁際の椅子からこちらを見ている。

 七瀬奈々(ななせなな)との初練習はまだ始まっていない。私はギターをアンプへつなぎ、スマホを譜面台へ置いた。


「今日、一曲聞いてほしくて」

「あら、楽しみだわ」

「音源、流します」


 スマホから曲が始まり、練習どおり弦を鳴らすと自然に次のコードへ指が動いた。

 全員が見ていると思うと、緊張して途中で右手が止まりそうになった。 

 Fも全部の弦が鳴り、Aメロ、Bメロ、サビと日曜日に弾けたように詰まらず進めることができ、最後のコードで弦から右手を離した。


「――今の、最後まで一回も止まらなかったよね」


 五月がドラムの椅子から立っていた。


「うん……ほんとに、最後まで弾けた」


 私はギターを肩から外し、スタンドへ戻した。

 紡先輩が椅子から私を見上げる。


「真白(ましろ)、私は音楽の良し悪しが分からないけれど、本当にうまくなったと思うわ」

「わ、私もそう思うぞ。……いっぱい、練習したんだな」


 雪乃が私の袖を引いた。

 そちらを向く前に、久遠先輩が私の左手を取る。髪から甘い香りがした。


「……随分、指が硬くなっているわね。この二日間、ずっと弾いていたの?」

「はい。いっぱい頑張ったと思います」


 久遠先輩は、弦を押さえ続けた私の指を親指で撫でた。

 そのまま手の甲を持ち上げ、硬くなった指先へ唇をつける。


「ひゃあっ!? 」

「ふふ。……最初はコード一つ鳴らせなかったのに、本当に一曲弾けるようになったのね。偉いわ、真白」


 久遠先輩は私の頭を撫で、額にも唇をつけた。

 久遠先輩が私の左腕へ腕を絡め、指先を撫で続けているところへ、零が背後から胴へ両腕を回した。


「私も真白が頑張ってたの、知ってる。だから私にも、真白をいっぱい褒めさせて」

「ちょ、零? 首筋に顔うずめないでっ……んんっ」


 首筋からは、零の唇の感触がした。

 右側から雪乃が私たちの間へ腕を伸ばした。


「お前ら、何して……っ! 離れろ、新参抱きつくな!」

「……先に触れたのは、この女の方。だからこっちを注意して。……私は真白の恋人だから、どこを触っても合法」

「合法なわけあるか! ……くっ、真白、お前もされるがままになるな! ほら、こっちに来い!」


 雪乃が私の右腕へ抱きつき、自分の方へ引いた。

 久遠先輩は左腕を離さず、零も背中にくっついたままだ。

 紡先輩が眉間に皺を寄せた。


「はぁ……。あなたたち、本当にうるさいわね……」


 右腕には雪乃、左腕には久遠先輩、背中には零。

 三人に引っ張られながら、私は日曜日に硬くなった指を見た。


「うう……っ。でも、こうやってみんなが褒めてくれて……私、本当に嬉しいです」


 五月はドラムの椅子から立ち上がり、至近距離てくっついている私たちをを見て口を開いた。


「私が一週間教えたからなのも、ちょっとは考慮して欲しいな」

「毎日、放課後二人で練習したもんね。五月、一週間、ありがとう」

「まあ、最初の土日に教えたのは私なのだけれど」

「私が一番最初に応援してた」

「私だろ!」


 五月は笑おうとして、くっついて離れない私たちを見た。

 口を開いたまま、次の軽口は出てこない。五月は、置いてあった鞄を持った。


「……えっと、じゃあ私今日はこの辺で」

「分かった。ありがとね五月。また練習付き合って」

「もちろん。じゃあ、失礼します」


 五月が扉を閉めた。

 紡先輩は閉じた扉を見てから切り出した。


「帰ったわね」

「ちょうどいいわ。今後の攻略のことについて、少し話しましょう」

「あの、その前に、みんなに報告があります。五月から聞いたんですけど……」

「あいつが?」


 雪乃が私の袖を持ったまま聞き返す。


「そ、その……五月、私と恋人になる夢を、何度も見てるみたいで」


 自分からこの話を切り出すのが、少し恥ずかしい。


「手を繋いだり、キスしたり……そういう夢を、繰り返し見てるって。それから……」


 五月には申し訳ないが、これはみんなに報告をしなければいけない。


「五月からは、好きだって言われて」


 告白のあと五月からキスされたことは、言わないでおいた。

 ここで話せば、記憶についての相談より私への追及が始まるからだ。


「五十嵐さんにも、戻り始めているということかしら」

「私の時と、似てる」


 零が私の背中から、話し始める。


「私は、だんだん真白と過ごしたことを夢に見るようになった。そして気がついた。教室で起きること。お母様との会話。……全部、分かってた。そして、今回、同じ四月が繰り返されてるって、気づいた」


 背中に回った零の腕へ、力が入った。


「じゃあ、五月も、同じように思い出し始めてるってこと?」

「可能性は高いわね」


 紡先輩が答えた。

 五月が話したのは、私との夢に加えて、四月に起きる出来事への既視感だった。


「五十嵐さんが全部思い出す前に、話しておくべきね」


 紡先輩は、椅子へ座った五月が使っていたドラムを見た。

 五月は、このバンドが奈々を攻略するために作られたことを知らない。


「そうね。このまま真白に恋心を抱いたままだと、七瀬奈々の攻略のノイズになる可能性が高いわね」


 久遠先輩の言うとおり、黙ったままでは七瀬奈々との練習にも影響する。

 五月が全部を思い出す前に、私から話さなければならない。


「まず私が、五月と二人で話します。そのあとで、十六室でイルカイルを含めて詳しい説明をします」

「分かったわ」


 私はスマホを取り出し、五月とのトーク画面を開いた。

 明日の放課後に二人で会えるか、メッセージで送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。