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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第七章 君が歌うなら

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第125話 友達のままじゃ、触れられない

 金曜日の放課後、私は譜面台へスマホを置き、ギターをアンプにつないだ。

 五月(さつき)はドラムの向こうで腰を下ろし、両手にスティックを持つ。

 月曜日はAメロに入る前に止まったけど、木曜日には曲に出てくる部分を一通り練習し、今日はそれを最初から続けて弾く。


「一応、確認だけしよっか」

「うん」

「サビの入り、大丈夫そう?」

「たぶん」

「後半も、昨日ので大体形にはなってる」

「じゃ、今日は頭から通すよ」

「うん、いく」

「ワン、ツー、スリー、フォー」


 大丈夫とは言い切れない。曲の終わりまで止まらず弾けたことは、一度もなかった。

 五月のカウントに合わせて弦を鳴らす。月曜日より叩く音が多い。私は譜面から目を離さなかった。

 Bメロの終わりで、五月が一度だけ強く叩いた。サビの合図だ。

 左手が間に合わず、Fが濁った。ここで止めたら、また五月にカウントからやり直させる。

 顔を上げると、五月は私を見たまま、同じ拍で叩き続けていた。

 私は次のGへ指を動かし、右手を振り続けた。


 後半も、五月が区切りに鳴らす一打を待って、譜面の次の行へ進んだ。最後のサビで左手が遅れても、右手は止めなかった。

 残りの行が、あと二つになる。ここで止まりたくなかった。

 五月が両腕を上げたところで、私も弦から右手を離した。

 ギターの音が消える。五月のスティックも、次のドラムを叩かなかった。


「――終わった、終わった……!」

「弾けた……最初から最後まで、ちゃんと……!」

「真白(ましろ)、本当に頑張ったね!」

「五月のおかげだよ」


 月曜日は自分のギターが鳴っているかも分からなかったが、今日は五月のドラムを聞きながら曲の終わりへ来られた。

 私はギターを肩から外してスタンドへ置いた。

 五月はスティックを座面へ置き、ドラムの向こうから回り込んで抱きついた。

 五月の両腕が背中へ回り、私も抱きしめ返した。


「ちょ、五月、ぎゅーってしすぎ」

「いいじゃん、今日ぐらい」


 演奏中にかいた汗がついてしまいそうで、今さら恥ずかしくなる。

 五月の背中は、まだ汗で湿っていた。五月はしばらく、私の肩へ頬をつけたまま動かない。


「……」

「五月?」


 五月が顔を上げた。


「最近、私変な夢を見るんだよね」

「その、真白と恋人になった夢っていうか。手を繋いで帰ったり、キスしたり……そういうの、何回も。零式会(ぜろしきかい)のみんなに影響されたのかな。あはは」


 五月は笑って、すぐに口を閉じた。

 背中に回った腕は外れない。


「あとさ。月曜、真白が手、繋いできたでしょ。あの時、本当に思ったんだ。前にも、こうやって真白と手を繋いで帰ったことがあるって」


 つい、いつもの癖で手を握ってしまった時のことだ。


「四月に入ってから、そういうのばっかり。前にも同じことがあった気がするんだよね。……変なこと言ってごめん」

「ううん、変じゃないよ」


 五月も、雪乃(ゆきの)や零(れい)と同じように思い出し始めている?


「でもなんか、真白といると、ドキドキするっていうか……。夢のせいって思おうとしたんだけど、無理だった。本当に変だ私」


 五月は、抱きしめていた腕を解いて、私の顔をまっすぐに見た。


「でも、こうやって真白に触れたい」


 五月は、手のひらを私の頬へ添えた。

 この一週間、私のために毎日ドラムを叩いてくれた手だ。


「私、真白のことが……」


 五月が私の手を握った。


「――――好き」


 その言葉に対して、私はすぐに返事を返せなかった。

 これから私は、七瀬奈々(ななせなな)を攻略しなければいけない。

 だから、ここで五月の気持ちに応えるわけにはいかない。

 返事ができない私の頬を、五月の手が包んでいる。

 五月の顔が寄って、鼻先が触れた。私は目を閉じることも、顔を背けることもしなかった。

 唇が重なった。


「んっ……」


 唇から五月の熱が移ってくる。

 背中に回った腕へ力が入り、五月の身体が押しつけられた。突き放すなら今だったのに、私の手は五月の制服を掴んで、そのまま離せなかった。

 一度離れた唇が、息のかかるところで止まる。


「ん……」


 私は、もう一度重なった唇を五月の制服を掴んだまま、引き寄せていた。

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