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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第七章 君が歌うなら

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その手を、前にも繋いだ気がした

 月曜日の放課後、私は五月(さつき)について軽音部の練習室へ入った。五月が照明をつけると、アンプとドラムとキーボードが見えた。


「ここが軽音部の練習室。一式あるから、好きに使って」

「結構本格的な練習室なんだね」


 十六室(じゅうろくしつ)にあった電子ドラムとは違い、ここにあるのは本物のドラムだった。


「譜面台、これ」

「ありがとう、五月」


 スマホでコード譜を表示し、ギターとアンプを黒いケーブルでつなぐ。五月はドラムの椅子に座り、私がギターを持つのを確認してからスティックを上げた。


「じゃ、一回、原曲のテンポでいくから」

「わ、わかった」

「ワン、ツー、スリー、フォー」


 五月が両手を動かした瞬間、ドラムの音が練習室で響き渡り、私のギターが聞こえなくなった。

 譜面と左手を交互に見ている間にもドラムは進み、私の右手が止まると、五月も演奏を止めた。


「――今の、ちゃんと鳴ってた……? ドラムの音に埋もれて、自分の音、全然聞こえなかった」

「鳴ってたと思うけど……」


 五月はドラムの椅子から立ち、スティックを椅子へ置いて私の隣へ来た。


「アンプの調整するね」


 五月はアンプのつまみを回してから私の手元を覗き込み、弦を鳴らすよう言ってきた。私がコードを鳴らすと、今度はギターの音が聞こえた。


「うーん、音量は関係ないな。ドラムと合わせるの初めてだし、慣れてないからかな」

「そうだよね。五月のドラムを聞いてたら、どこから弾けばいいか分かんなくなった」


 久遠(くおん)先輩とBメロまで弾けたはずなのに、今日はAメロへ入ることさえできなかった。


「あー……テンポ、速すぎたか」

「確かに。久遠先輩とやってた時は、もっとゆっくりだった」

「オッケー。じゃあそのテンポまで落とす。ドラムも一旦単純にするから」


 五月はさっきより遅く四つ数えてから、一定のリズムでドラムを叩いた。叩く回数を増やさないので、私が弦を鳴らすタイミングも分かる。

 私は音が濁っても弾き直さず、イントロの終わりで五月と一緒に演奏を止めた。


「――お、今の合ったじゃん」

「本当に?」

「ほんと。真白(ましろ)が遅れそうなところは音を減らすから、私が強く叩くところだけ聞いてて」

「うん」


 最初の方は左手が遅れ、次は違うコードを鳴らして、何度も止まったけど、そのたびに五月が最初からやり直してくれる。

 しばらく練習を続けると、変な音を鳴らしても止まらず、Aメロの最後へ着いた。


「Aメロ、入れた……!」

「その調子。次、九条院先輩とやったところまで行くよ」


 イントロへ戻り、五月が鳴らす音を聞きながら、AメロからBメロへ進んだ。

 途中で音を外しても右手を動かし、Bメロの最後で五月と一緒に演奏を止めた。


「止まらずに、イントロからBメロまで行けたね」


 できたんだ。最初は自分の音すら聞こえなかったのに、五月のドラムと一緒にBメロの最後まで弾けた。


「今日はここまで」

「ありがとう、五月」


 久遠先輩と練習したことは覚えているはずだったが、ドラムの音に合わせようとするのが難しい。


「なんか、コードとかは久遠先輩とやった時のまま覚えてるんだけど」

「けど?」

「五月のドラムとか、音が増えると、手がうまく動かなくなっちゃう」

「あー、それはそういうもんだよ。今日はそれが分かっただけで十分」


 ギターをケースへ入れ、ドラムの周りを二人で片づけて練習室を出た。

 校門を抜けて、五月と並んで商店街へ入る。


「そういえば、五月ってなんでドラムだったの?」

「中学で軽音部に体験入部した時、一番うるさかったから」

「うるさいのが理由なの?」

「そ。叩いてる間は、他のこと考えなくて済むし」


 信号待ちで立ち止まった時、私は隣にある五月の手を握った。


「……真白?」

「え? ……わっ、ごめん!」


 繋いでから気づいて、慌てて手を離した。

 最近、隣にいる誰かと手を繋ぐのが当たり前になっていた。零(れい)も雪乃(ゆきの)も久遠先輩も、隙があればすぐ指を絡めてくる。


「ごめん、癖で……」

「癖って何。誰と繋いで帰ってるのか、詳しく聞きたいんだけど」

「うっ……い、いろいろあるの」


 五月は笑った後、自分の手のひらを見た。


「……なんか、さ」

「ん?」

「前も、こうやって真白と手、繋いで帰ったこと、なかったっけ……」

「え?」

「…………いや、ないか。ほら、青になった。行くよ」


 五月は、横断歩道へ歩き出した。それから、分かれ道で五月と別れて家へ帰った。

 明日は、五月がドラムを原曲と同じように叩いても、右手を止めないようにする。私は帰宅してから、スマホで原曲を流し、練習を繰り返した。

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