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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第七章 君が歌うなら

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しばらく会えない恋人たち

 食卓では、出海(いずみ)はいつもどおりの様子で友達と出かけた話をしながら、秋刀魚を食べていた。

 久遠(くおん)先輩が恋人だということにしてしまったら、雪乃(ゆきの)や零(れい)のことも説明しなければいけない。

 それは無理なので、あのキスは挨拶ということにする。それで納得してもらおう。

 お母さんとお父さんが食べ終えて席を立つと、食卓には私と出海だけになった。


「お姉ちゃん、さ」

「ひゃいっ!?」


 変な声が出た。出海はニヤつきながら、私を見た。


「で、今度は九条院先輩が、お姉ちゃんの『彼女』なんだ?」

「ち、違うから! あれは外国風のスキンシップというか、ハグの延長で……!」

「ふーん。ハグの延長で、あんなキスしちゃうんだ。へー」

「うぐっ……!」


 秋刀魚を飲み込むのに失敗し、私は慌ててお茶を飲んだ。

 出海は笑いながら、食器を持ち上げる。


「まあ、私は別にいいけどね。お姉ちゃん最近、前より楽しそうだし」

「出海……」


 姉の最低な行動に物申されると思っていたのに、出海の態度はいつもと変わらない。


「でもさ、お姉ちゃん、なんか堂々とするようになってきたよね。この間も玄関でキスしてたし、今度は家の前でキスしちゃうなんてさ」

「うう……っ、だからあれは不可抗力で……っ」

「でも、お母さんとお父さんには見られないようにしなよ〜。あと、三上さんにもね」


 出海は鼻歌交じりで、シンクへ食器を置いた。

 まだ顔が熱い私をダイニングテーブルに残したまま、出海は自分の部屋へ行ってしまった。



***



 夕食後、部屋へ戻ってギターとヘッドホンを用意し、久遠先輩と練習したところを弾き始めた。

 音が濁っても右手を止めず、繰り返してBメロの最後まで進むと、スマホに雪乃からのメッセージの通知が来た。


『しばらく十六室(じゅうろくしつ)には行かない。……変な勘違いするなよ、浮気とかじゃないからな!』

『分かった。でも、突然どうしたの?』

『ほかの攻略対象を調べて、早くポイントを増やす。五十ポイント貯めて、真白(ましろ)の放課後を全部私だけのものにするから』


 私と過ごす時間を増やすために、雪乃は私のいない場所へ行く。

 五十ポイントで私を独占すると言い切った雪乃には、何も言えない。


『……分かった。無理はしないでね』

『無理なんかしてない。……ただ、しばらく真白に触れられないのは、ちょっと寂しいけど……』


 そう送られてきた瞬間、すぐに次のメッセージが来る。


『いまの送信取り消し!! 見なかったことにしろ!!』


 取り消されたメッセージを見て笑っていると、今度は零からのメッセージが届いた。


『ピアノの練習をサボってたの、お母様にバレた』


 そうだ。零の家は厳しい。

 今回の周回で自由に零は動き回っていたのは、お母様の目からうまく逃れてやっていたのだろう。


『一週間、放課後は家で練習する。学園には行く』


 零はピアノの練習を後回しにして、放課後に私を迎えに来て、そのまま十六室に通っていた。

 それが、バレてしまったらものすごい怒られそうだ。


『十六室には行けない。……真白に会えない。真白に触れられない。真白の匂い、嗅げない。……すごく、嫌。真白のパジャマ、持って帰ってくればよかった』


 零がお母様から逃げるのではなく、ちゃんと向き合って妥協し、練習を選んだのは成長を感じる。

 一週間後、また十六室で会えばいい。


『私も寂しいけど、一週間、一緒に頑張ろう』

『……ん。真白のその言葉で、一週間生き延びる。終わったら、一日中ベッドでいちゃいちゃするから。覚悟してて』


 零の欲求が真っ直ぐすぎて、頬が熱くなった。

 私は雪乃と零の連絡を、久遠先輩へ伝えた。


『雪乃と零からこういう連絡が来ました。十六室の練習、どうしましょう』

『あら。じゃあ一週間、休みにしましょうか。あの子たちがいないなら、私が真白を独り占めできる絶好のチャンスね?』

『でも練習が』

『冗談よ。私も後回しにしていた零式十六会《ぜろしきじゅうろくかい》の仕事へ戻るわ。文化祭の準備と、生徒からの相談を片づけないと』


 四月九日に戻れば零式十六会でやった仕事は消えてしまうが、今の周回では七瀬(ななせ)さんの攻略が文化祭まで続く。

 七瀬さんを誘ったバンドで文化祭に演奏するためにも、零式十六会の仕事は放っておけない。


『それなら、私も手伝います』

『今の真白の仕事は、ギターを練習することよ。……次に会う時までに、少しでも上達していたら……』

『えっ……?』

『この前みたいな、ご褒美、たくさんしてあげるわ。だから、私の仕事まで取らないでちょうだい。可愛い真白』


 土日に時間を割いてくれた久遠先輩のためにも、練習を頑張ることが今の私の仕事だ。

 私は五月(さつき)とのチャットを開いた。


『十六室の練習、一週間休みになった』

『まじ? じゃあ、軽音部の練習室来る? 機材は一式あるし、二人で練習する?』

『行こうかな。月曜からお願いしていい?』


 よし、月曜からは五月のドラムと一緒に練習しよう。

 私はスマホでコード譜を開き直して、練習を再開した。


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