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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第七章 君が歌うなら

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おはようのキスでは終わらない

 身体に触れられる感覚で目を覚ますと、私は久遠(くおん)先輩と向かい合っていた。

 掛け布団の中の私は、何も身につけていない身体だった。

 久遠先輩の指が私の肩をなぞっている。


「んっ……ぁ……」

「おはよう、真白(ましろ)」


 久遠先輩の唇が首筋へ移り、昨夜つけられた痕を吸った。

 ちゅっ、と音がして、肩が跳ねる。


「っ……せん、ぱい……」


 抗議する前に、久遠先輩の人差し指が私の唇へ触れた。

 そのまま久遠先輩が覆い被さり、胸と胸が重なる。


「んっ……」


 唇の隙間から舌が入り、腰へ回った手が背中を撫でた。

 久遠先輩の脚が私の両脚へ絡み、膝を動かしても離れない。


「んんっ……。……起きましょうよ……」


 久遠先輩は私を抱きしめ、布団を二人の頭へ被せた。


「まだいいじゃない。もう少し、このままで……」


 久遠先輩は私の額から頬、首筋、肩へキスをし、起きようとした私の腰を抱いて布団の中へ引きずり込んだ。

 ようやく腕が緩んだ時、枕元のスマホは十二時七分を表示していた。

 二人でベッドを出てシャワーを浴び、久遠先輩はデリバリーで届いたパスタをダイニングテーブルに置いた。


「カルボナーラとボロネーゼ、真白はどっちがいい?」

「うーん……じゃあ、私はカルボナーラにします」

「分かったわ。じゃあ私はボロネーゼね」


 久遠先輩は私の隣へ椅子を寄せ、肩が触れたまま、左手をパジャマ越しの太腿へ乗せた。

 もう久遠先輩からこうして触れられるのにも慣れていた。太腿を撫でられても食事を止めることはない。


「美味しい? 真白」

「はい。濃厚ですごく美味しいです」


 久遠先輩の指が太腿の内側を往復する。

 私はカルボナーラを食べながら、隣の容器から立つトマトの匂いに顔を向けた。


「……先輩のボロネーゼも、すごく美味しそうですね」

「あら。気になる?」

「はい、ちょっとだけ」

「ふふ。じゃあ、味見してみる?」

「いいんですか? じゃあ、一口――んっ!?」


 フォークを待って開いた唇へ、久遠先輩の唇が重なった。


「んっ……ちゅ……」

「せ、先輩っ……んんっ」

「……んっ」


 久遠先輩の舌が私の口へ入り、舌先を絡め取る。

 カルボナーラのクリームと、ボロネーゼのトマトが口の中で混ざった。


「んぁ……っ、はぁ……っ、くおん、せんぱ……っ」

「ん……っ。……はぁ、真白のカルボナーラも美味しいわね……」


 太腿にあった手が腰へ回り、身体ごと久遠先輩へ寄せられる。

 舌を吸われ、離れかけた唇をまた塞がれた。


「……ぷはっ。はぁ、はぁ……っ」

「……ふふ。どう? ボロネーゼの味、分かったかしら?」

「……っ、分かりますけど……そんな、直接食べさせなくても……っ」

「……さて、食べ終わったらスタジオへ行くわ。今日は昨日の続き、Bメロの最後まで通せたら、たくさん褒めてあげる」

「は、はい……っ!」



***



 昼過ぎ、私たちは昨日と同じレンタルスタジオへ入り、ギターとベースをアンプにつなぐと、久遠先輩は昨日と同じように、原曲より遅くメトロノームを設定し、練習していたイントロから始めた。

 最初、弦を押さえるのが遅れ、久遠先輩のベースが鳴る前に止まった。

 次は、左手を急ぐことに気を取られ、鳴らした音がメトロノームから盛大にずれた。

 昨日より下手になっている気がする。そう考えた途端、次も失敗すると思ってしまった。


「今はコードより、一定に弾き続けることを優先しましょう。……ほら、私が何度でも付き合うから」


 次からは音が濁っても弾き直さず右手を動かし、途中で止まっては最初へ戻り、次第にイントロ前半、続けていると後半も久遠先輩のベースと一緒に通した。

 回数を重ねるごとに、イントロからAメロを通せるようになる。

 Bメロの前半も何度かやり直して越えたが、最後に来る初めてのコードは、弦を押さえようとしているうちにメトロノームから遅れ、次へ移る前に右手が止まった。

 最後の二つだけなら弾けるのに、Bメロの途中から始めると同じ場所で失敗し、左手の指先は弦を押さえるたびに痛み、何度やってもサビの手前へ届かなかった。

 急いで指を動かそうとするほど、コードを押さえる形が分からなくなった。


「ここだけは私の言うとおりにして。……止まりそうになったら、私の音を追いなさい」


 久遠先輩は私が失敗しても音を鳴らし、最後の二つ、Bメロ後半、Aメロからと始める場所を戻したが、範囲を広げるたびに同じところで止まった。

 それでも久遠先輩は急かさず、私が弾き直すたびに最初の音を鳴らし、最後はイントロへ戻る練習を繰り返した。

 何度それを繰り返しただろうか、次第に私の手はコードを移動することに慣れてきた。

 最初の音は濁り、Aメロ後半では左手が遅れたが、弾き直さずにBメロへ入り、指先の痛みでコードを押さえるのを失敗そうになったところへ、久遠先輩の低い音が重なった。

 さっきまでなら、もう止まっていた。今度はその音を聞きながら、右手を動かし続けた。

 最後の二つで指がもつれても一つ目を鳴らし、久遠先輩の音が変わるのを聞いて次の形へ移ると、ギターとベースが同時に鳴り、演奏が途切れないままサビの直前へ着いた。

 ――――できた。今、久遠先輩と一緒に、Bメロの最後まで弾けた。


「Bメロの最後まで通せたわね。今日の目標は達成よ。……本当によく頑張ったわ、真白」


 久遠先輩の言葉を聞いて、私はようやくピックを持っていた右手を下ろした。

 久遠先輩はベースから手を離して私の頭を撫で、昨日より弾けるようになった私を褒めてくれる。

 七瀬奈々(ななせなな)に近づくために始めたギターなのに、もっと上手くなりたいという気持ちが強くなった。



***



 練習を終えた久遠先輩は、私の家まで送ってくれた。

 ギターケースを背負い、鞄を持ったまま、玄関前で向かい合う。


「送っていただいて、ありがとうございました。二日間、すごく助かりました」

「ええ、私もよ。……本当に、よく頑張ったわね、真白」


 久遠先輩が、私を抱きしめた。

 私は鞄を置いて、久遠先輩の背へ腕を回す。


「っ……久遠、先輩……」


 私は、抱きしめ返す腕に力を入れた。


「真白、大好きよ」


 背中に回った手が、うなじへ上がってくる。

 返事を探しているうちに、久遠先輩の指が髪の中へ入った。


「せ、先輩……ここ、家の前ですよ……?」


 久遠先輩の肩へ手を置いたが、身体は離れなかった。


「関係ないわ。二日間頑張った、可愛い真白に……ご褒美」

「んっ……」


 後頭部を支えられ、上を向いたところへ唇が重なった。


「んっ……」

「ちょ……っ、せん、ぱ……」

「んっ……もっと舌、出して……」

「んんっ……!」


 久遠先輩の舌が私の舌へ絡み、後頭部と腰を支えられて身体を離せない。

 出海(いずみ)も両親もいつ帰ってくるか分からない玄関前で、唇を重ね続けられ、舌を吸われた。


「……もしもーし」

「っ!?」


 話しかけられ、急いで唇を離すと、買い物袋を提げた出海が立っていた。

 出海は、私と久遠先輩をじーっと見ている。


「い、出海!? いつからそこに……?」

「五分前から」

「は、話しかけてよ!」

「邪魔しちゃ悪いと思ったので」

「あら。初めまして、妹さん。……私は、真白の恋人よ」

「ち、ちが!」


 否定は口から勝手に出た。

 先日、零(れい)とキスしている場面を見られているのに、どうこの状況を言い訳すればいいんだ。


「へえ、今度は九条院先輩なんだ」


 出海は買い物袋を提げたまま私たちの横を通り、玄関の扉を開けた。

 久遠先輩が帰ったあとも、私はすぐ玄関へ入れなかった。


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