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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第七章 君が歌うなら

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お礼のキスにも格差がある

 昼休みのチャイムが鳴り、私はギターケースを背負って教室を出た。

 廊下には零(れい)がいた。私に気づいて、壁から背を離してこちらに走ってくる。


「授業は?」

「……サボった。真白(ましろ)を待ってた。行こ」


 零は私の腕をギュッと抱いて、そのまま歩き出した。

 自分から授業を休み、自分のしたいことを言う。以前の零なら、どちらもしなかったなあ。

 ちょっと積極的になりすぎちゃったけど。


「新参! 抜け駆けするな!」


 教室から出てきた雪乃(ゆきの)が右の袖を掴む。


「真白の腕を離せ!」

「嫌。先に待ってたのは私」

「授業をサボった奴が偉そうに言うな!」

「真白を待つ方が大事」


 零に左腕、雪乃に右袖を引かれ、ギターケースを背負ったまま十六室(じゅうろくしつ)へ連れて行かれた。

 久遠(くおん)先輩と紡(つむぎ)先輩がいる中、私はソファを避けて長机のパイプ椅子に座った。

 零と雪乃は椅子を両脇へ寄せてきたので、私はちょっと動いたら二人の身体に肘が当たってしまう距離で、弁当箱を食べることになった。


「ふぅ……ごちそうさまでした」


 弁当を鞄へ入れてギターを膝へ乗せ、昨日覚えたGを鳴らすと、ビィンと変な音がなった。

 指を押さえ直していると、久遠先輩が私のスマホに表示したコード譜を見た。


「真白、カポをつけたほうが簡単に弾けるわ」

「カポ?」

「これよ」


 久遠先輩がギターケースのポケットを示し、私は黒い器具を取り出した。


「あ……初心者セットに入っていたやつ。洗濯バサミみたいで、何に使うのか全然わからなかったんです」

「二フレットにつけると、押さえた形より二つ高い音が鳴るの。だから、同じ進行を簡単な形で弾けるわ。このサイトだと、カポにオンをするとコードの表示が変わるわ。ほら」


 久遠先輩は黒い器具で、ネックを横切る二本目の金属線の手前を六本まとめて挟み、スマホの表示を切り替えた。

 G、A、F#m、Bmが、F、G、Em、Amへ変わる。


「あ! EmとAmなら、簡単なコードだ! Gも練習したし、弾けるかも……! でも久遠先輩、このFってめちゃくちゃ難しくないですか?」

「そうね。普通のFは、一フレットを人差し指で全部押さえて、二フレットの三弦を中指、三フレットの五弦を薬指、四弦を小指……」


 久遠先輩が私の指を、弦へ誘導した。


「うっ、指がつりそうです……」


 人差し指をネックの端に寝かせ、残りの指を開こうとしたが、三本とも狙った弦へ届かない。

 指を離すと、人差し指に六本の弦跡がついていた。


「ふふ。じゃあ簡単なFにしましょう。四弦の三フレットを薬指、三弦の二フレットを中指、二弦と一弦の一フレットを人差し指で押さえるの」


 六弦と五弦は弾かず、人差し指の先で一弦と二弦をまとめて押さえる。

 四弦から三角形の薄い板を下ろすと、二弦が詰まりながらも音になった。


「あっ、これならできるかも! ありがとうございます、久遠先輩!」

「どういたしまして。……お礼は、キスにしてもらおうかしら?」

「えっ?」

「ふざけるな、それはお手つきだろ!」


 雪乃が椅子から立ち、久遠先輩の前へ腕を伸ばした。

 私はギターを二股の台へ戻し、久遠先輩は十六室の空中へ顔を向ける。


「イルカイル!」

「呼ばれて飛び出イルカ〜!」


 光が集まり、長机の上にイルカイルの姿が浮かんだ。


「私、今何ポイントかしら?」


 イルカイルの横に、久遠先輩のポイントが表示される。


「千二百七十ポイントイルカ!」

「そ、そんなに!?」

「久遠は今回の七瀬奈々(ななせなな)の件でベース担当を名乗り出たり、真白に的確なアドバイスをしてイルカ。それに、前回のループでも色々情報を提供してくれたイルカね」

「キスするのって、何ポイントでできるの?」

「一回十ポイントイルカ! でも、放課後や休日独占でまとめてポイントを使った方がお得イルカよ?」


 キスするのにまで、ポイントが設定されているの!?

 もしかしてえっちするのにも、ポイントが設定されてたり? と思ったけど聞くのはやめておこう。


「いいわ。十ポイント払いましょう」

「ガッテン承知イルカ!」


 久遠先輩のポイントが十減った。

 私には、キスしていいか聞かれていない。


「……えっ、ちょ、久遠先――」


 久遠先輩が正面へ立ち、両手で私の頬を包んだ。

 顎を上げられ、言い終える前に唇が重なる。


「んっ……!?」


 久遠先輩は私の下唇を挟み、離したところへ舌先を当てた。

 閉じようとした唇をもう一度塞がれる。


「んんっ……」


 舌が入り私の舌を押し上げ、首を引いても唇が離れない。


「ぁ……ん、く、おんせんぱ……っ、ひゃぁっ」


 名前を呼んだ隙に、舌へ久遠先輩の舌が絡む。

 紡先輩も雪乃も零も私たちを見ているのに、抗議ができない。


「真白……んっ……」


 久遠先輩は唇を重ね直し、舌先で舌の裏を辿った。

 音を立てた後、下唇を舐めて私の頬から手を離した。


「ぷは……っ、はぁ、はぁ……っ」

「ふふ。いいお礼だったわ」


 みんなの前で、抵抗することもできず思いっきりキスされてしまった。

 うぅ、恥ずかしい……。

 すると、左隣の零がイルカイルを見た。


「……イルカイル。私は何ポイントある?」

「零は九百ポイントイルカ!」

「もうそんなに!?」

「七瀬奈々の連絡先をゲットできたのは大きイルカらね」

「……じゃあ、私も十ポイント払う」

「えっ、ちょっと待っ――」


 零の腕が私の首へ回り、顔を左へ向けられた。

 息を整える前に、零の唇が重なる。


「んっ……!」


 零は唇を開き、舌を口の奥へ入れた。

 舌先が私の舌へ絡み、吸われる。


「んんっ!? ちょ、れ、零……っ!」


 顔を戻そうとすると、首に回った腕が私を零の方へ寄せた。

 零は角度を変え、舌を絡め直す。


「……ぅ……っん……」


 一度離れたかと思ったら、また唇を重ねられる。

 唾液を飲み込む暇もなく、口の端から顎へ伝った。


「ぁ……っ、ん……っ」


 零はその後も、唇を二度、三度と重ねてから離れた。


「……ぷはっ。……真白、ご馳走様」

「はぁ……っ、はぁ……っ、ふた、りとも……急に……っ」

「わ、私もだ! 十ポイント!」


 雪乃が顔を赤くして、イルカイルへ指を向けた。


「雪乃、君は四十ポイントしかないけど、ここで十ポイントも使っていイルカ?」

「うっ……」

「今我慢して、十ポイント貯めて、五十ポイントで放課後を独占するのが賢い選択イルカ」

「くっ……この、真白を困らせる淫乱女ども!」


 紡先輩がノートパソコンから顔を上げた。

 雪乃のことをジト目で見てから、口を開いた。


「あなたも今キスしようとしてたじゃない」

「うるさいこの陰キャチビ!」

「……本当にあなた失礼ね!」


 雪乃と紡先輩が言い合い、零は私の首の腕を回してくっついていた。

 私は零の腕を持ち上げ、椅子から抜け出した。


「…………じゃあ私、練習戻るので」


 スタンドからギターを取り、ギターを抱えた。

 人差し指で一弦と二弦を押さえ、四弦からピックを下ろした。


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