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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第六章 二人に、言えない

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後部座席で、お互い同時に

 テントに戻る頃には、ののみはすごく眠そうにしていた。

 私は寝袋を広げて、ののみを呼ぶ。


「ののみ、着いたよ」

「みゅん……」


 ののみは返事だけして、そのまま中へ潜り込む。

 髪留めを外すのも忘れかけていたので、私は外して枕元に置いた。

 ののみは私のジャージの袖を掴んだまま、何か言いかけて、すぐ寝息に変わる。

 呼吸はすぐに深くなった。

 スマホには、終さんからの不在着信が残っている。

 ののみが完全に寝入ったのを確認してから、私はテントを抜け出した。

 終さんの車には、まだ灯がついている。

 近づくと、フロントガラス越しに丸まった人影が見えた。

 終さんは運転席ではなく、倒した後部座席の端に座り、スマホを両手で握っていた。

 ノックをすると、すぐに終さんは気がつき、車のドアを開けた。


「真白ちゃん……っ、遅いよぉ……電話も、出ないし……っ」

「ごめんなさい、スマホテントに置いたまま川まで行っちゃって。待っててくれたんですね」


 終さんは目を潤ませたまま、私の腕にしがみついてきた。

 車内には、終さんが持ち込んだブランケットと、助手席に置かれたもちおがある。


「うぅ……怖いよぉ……。ここ、お化け出るんでしょ……? 自分で車で一人で寝るって言ったけど、外は真っ暗だし、なんか変な音がしてる気がするし……やっぱり一人だと、怖いよぉ……っ」


 終さんの声は、本当に震えていた。

 私はドアを閉め、後部座席に腰を下ろした。


「でも、終さん。この車、シート倒しても一人でしか寝られないですよ?」

「えっ……じゃ、じゃあ真白ちゃんはテントに戻っちゃうの……? やだ、一人にしないで……っ」

「戻りませんよ。私が終さんを一人にするわけないじゃないですか」


 私は終さんの背中へ腕を回した。

 終さんは私の袖を掴んでくる。

 さっき、ののみも同じように掴んでいた。

 そのことを思い出しながら、言葉を続けた。


「……終さんが寝るまで、私がずっとそばにいますから。安心してください」

「っ……! 真白、ちゃん……っ」


 終さんは私の服の裾を握りしめ、胸元に顔を埋めた。

 私は胸元にきた頭を撫でる。


「……落ち着きましたか?」

「うん……。真白ちゃんが撫でてくれると、すごく安心する……。ごめんね、大人なのに情けなくて」

「そんなことないですよ。私は、終さんに頼ってもらえて嬉しいです」


 倒したシートは、二人で座るには狭い。

 終さんは膝を抱えるように座り、私は肩が触れる位置でブランケットを引き寄せた。


「……こうやって、二人でゆっくり過ごすの、なんだかすごく久しぶりだね」

「そうですね。ここ最近は、ずっと忙しかったですから」

「うん。テスト期間だったし、私も採点や会議でずっとバタバタしてて……。部室に顔を出しても、いつも四条さんが一緒だったし……」


 終さんは私の腕の中で、唇を尖らせた。

 終さんの口からののみの名前が出ると、ののみの顔が頭をよぎる。


「……寂しかったですか?」

「すごく、寂しかった。真白ちゃんと目が合っても、全然二人きりでお話しできないし。……だから今日、キャンプに行くって決まって嬉しかったのに、テントは二人用で……夜は車で一人で寝なきゃいけなくて……ほんとは、ずっと真白ちゃんとくっついていたかったのに……」

「終さん……」


 私は終さんの頬に触れる。

 電話に出なかった私を怒らないで、怖かったと言って甘えてくる。


「私もですよ、終さん。……やっと、二人きりになれましたね」

「……うんっ」


 終さんが目を閉じた。

 私はその細い背中を抱き寄せ、唇を重ねる。


「んっ……」

「ぁ……ん、ましろ、ちゃん……っ」


 キスが深くなる。

 倒したシートは、二人で寝転ぶには狭い。

 終さんは私の袖を掴んだまま、潤んだ目で私を見上げた。

 私はいつものように、終さんの胸へ手を伸ばした。

 終さんが、その手をそっと止めた。


「……待って。今日は、私が……真白ちゃんを、気持ちよくさせたい」


 終さんの声は震えていた。

 いつもは照れて逃げるのに、今は目を逸らさない。


「……終さん」


 私は手を引っ込めた。

 そのとき、車内の時計が目に入る。

 二十三時二十五分。

 ののみはテントで寝ている。午前零時も、もうそう遠くない。


 ──終さんがそう言ってくれたのは、嬉しい。

 でも、このまま終さんに任せて進めたら、いつ終わるか分からない。


「……じゃあ、今日はお互い、同時にしましょう」


 終さんの目が、大きく見開かれる。


「ど、同時って……え、えっ……!? 私が、させたいって言ったのに……」

「だからです。終さんばっかりは、ずるいですから」


 言いながら、私は自分でも顔が熱いのを感じていた。

 でも、こうすれば、終さんの「させたい」も叶う。


「……真白ちゃんが、そう言うなら……。私、下手だけど……」

「大丈夫です。……狭いですけど、こうしたら収まります」


 私は逆の向きに横になり、頭と足が入れ替わるよう、体勢を整えた。

 膝がぶつかる。終さんの足がドアに当たる。

 ブランケットを腰にかけて、窓の外から見えにくくする。

 助手席のもちおが、こちらを向いている気がして、終さんは一瞬固まった。


「……見られてるみたい、で……っ」

「もちおは寝てますよ」


 それでも、終さんは頷いた。

 お互いの身体が、狭いシートの上で向き合う。


 終さんが、私の中心に唇を近づける。

 最初の触れ方は、探るみたいにぎこちなかった。


「……ん、ここ、で……いいの……?」


 くぐもった声で確認して、終さんが触れてくる。角度が定まらず、擦れるたびに私の腰が跳ねた。

 下手だけど、真剣なのが伝わってくる。

 だから、私も終さんに触れるのを止めなかった。

 終さんの動きは、すぐにぎこちなくなった。

 私が続けるほど、終さんは私を攻められなくなっていった。


「ま、待って……っ、真白ちゃん、それ……っ、私、集中、できない……っ」


 懇願されても、止めなかった。ダッシュボードの時計は、見なくても分かる。

 午前零時は、もうすぐそこだ。こんな時にまで終わりを数えている自分が、少し嫌になる。

 終さんはもう、口では何もできなくなっていた。代わりに、身体だけが正直に応える。


「──っ……! んんっ……ふっ……!」


 終さんの身体が、小さく震えた。

 長い吐息のあと、力が抜けた。

 終さんは、もう私のことを攻められない。

 顔を上げようとして、力なくシートに倒れ込む。


「……はぁ……っ、はぁ……っ」


 私が終さんの横に座ると、終さんは涙目で私の袖を掴んできた。


「……真白ちゃんの、いじわる……っ」


 怒っているというより、力が抜けたあとの素直な声だった。

 終さんは、そのまま力を抜いて、私の袖を掴んだまま目を閉じた。

 しばらくして、寝息が規則正しくなる。

 私はそっとブランケットを引き上げ、終さんの肩にかけた。

 車内の時計を見る。

 二十三時五十六分。

 あと四分。

 私は、シートの隙間に落ちていたスマホを拾い、画面をつけた。

 通知欄には、不在着信とメッセージが並んでいる。

 その上に、夕方に撮った写真のサムネイルが見えた。

 夕日を背にした、三人の写真。

 もちおを抱えた終さんが照れていて、ののみが横でピースしていて、私は二人の間で笑っている。

 みんなで来られてよかった。

 写真を見ながら、確かにそう思った。

 三人で笑っていたこの時間も、午前零時で消える。

 ののみも、終さんも、きっと瓶は満ちている。

 今回は上手くやれたんだ。これでいいんだ。

 そう考えたのに、私は写真を閉じられなかった。

 時計の表示が、23時59分に変わった。

 終さんが眠ったまま、私の服を掴み直す。

 私はその手に触れ、ほどかずにいた。


 ――――午前零時。


 終さんの姿も、シートも、窓の向こうのテントも、順番に灰色へ変わっていく。

 ループが来た。

 私の視界が、モノクロになった。

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