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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第六章 二人に、言えない

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次は、野外プレイルカ!

 保健室の件から数日、終さんは忙しそうだった。

 部室に来ても、仕事が残っていると言ってすぐ帰る。六月下旬には期末テストが控えていて、教師の仕事が増える時期だ。

 先生がいる部室へ、ののみが胸を張って入ってくる。


「ぴこーん! 噂によると、星見川キャンプ場には夜な夜な水辺を彷徨うお化けが出るらしいみゅん!」

「だから、ののみん、キャンプがしたいみゅん! 課外活動申請届はもう書いてきたみゅん!」

「ひゃああっ……お、お化け……こ、怖いよぉ……っ」


 目的欄には「地域怪異伝承の現地調査」、活動場所には星見川キャンプ場の名前が入っていた。

 ののみは、最初から終さんに判子を押してもらうつもりでここへ来ている。

 先生は涙目になり、私の右腕を握ってきた。

 指の力は、怖さだけではなさそうだった。


「星見川キャンプ場……ちょっと調べてみますね」

「あ、かなり絶景で綺麗な場所ですよ。川も近くにあるみたいですし」

「みゅ? そうなのみゅん?」


 検索結果には、川沿いのテント区画と、夕陽の写真が並んでいた。

 口コミは、川遊び、星空、夕焼けの話が多い。

 オカルト調査としては弱い。

 でも、終さんが行きたくなる理由なら見つかった。


「それに口コミによると、ここ、夕陽がめちゃくちゃ綺麗らしいですよ。先生、もちお連れて行ったら、すごくいい写真が撮れるんじゃないんですか?」

「えっ!? ほ、本当だ! 夕陽をバックにした哀愁漂うもちお……ロケーションとしてはすごくいいかも……っ!」


 終さんの目が輝いた。

 頬が私の肩に触れ、終さんは慌てて顔を離した。


「みゅふふ。キャンプグッズなら、ののみんがもう親のカードで全部通販したみゅん! だから先生には、車を出して欲しいみゅん!」


 先生は日時を確認しようと、スマホを開いた。

 先生はスマホで週間天気を開き、ののみと二人で画面を覗き込んだ。

 六月に入ってから、ここ一週間はずっと雨だ。

 それに、ループするとはいえ、学園生たるものテスト勉強は一応しないといけない。


「じゃあ、期末が終わった次の土日にしましょう。七月の最初の土日なら、今のところ晴れになってます」

「わかった。行こう! 先生、安全運転で連れて行くからね!」


 私はその二人を見ながら、スマホのカレンダーに予定を入れる。

 星見川キャンプ場。七月第一週の土日。

 終さんとの関係も、ののみとの関係も、もうかなり進んでいる。

 問題は、その二人が同じ場所にいることだ。

 楽しい課外活動になるだろうけど、いつ何がバレてもおかしくない。



***



 放課後、十六室に入ると、イルカイルが瓶を二本並べて待っていた。

 私がソファーに座ると、久遠先輩は背もたれの後ろから私を抱きしめてきた。

 雪乃は私の横へ座って、久遠先輩を睨んだ。

 正面では紡先輩がノートパソコンを開いていて、この配置にも慣れてきた自分が怖い。


「現在の進捗を報告するイルカ! 藤代終、四条ののみ、それぞれ六分の五ずつ溜まっているイルカ! これはもう、次えっちすれば完璧イルカ!」


 二本の瓶は、ほとんど同じところまで満ちていた。

 順調なはずなのに、胃がものすごく痛い。

 久遠先輩の指が、私の髪に触れる。

 雪乃がそれを見て、眉を吊り上げた。


「そう。真白、二人ともとそういうことができるタイミングはあるの?」


 久遠先輩の声は穏やかなのに、聞いてくる内容は全然穏やかじゃない。


「……しばらく、テスト前で部活動は控えるように言われているし、先生がやっぱり仕事で忙しいらしいんですよね。だから、二人と確実に会えるとしたら、次のオカルト部の課外活動くらいです」


 目の前の紡先輩が、私の方を見て言う。


「じゃあ、課外活動でその、み、満たすしかないのね……」


 すると、横から雪乃が腕を引っ張り、口を開いた。


「課外活動? 何するんだ?」

「キャンプだよ」


 キャンプ、と口にした瞬間、雪乃の表情が固まった。

 紡先輩も、キーボードへ置いた手を止める。

 雪乃が、私の腕を掴んだ。


「キャ、キャンプぅ!? お前、キャンプでどうやってその……え、え……するんだよっ!?」

「……なんとか、する」


 反論できない。

 同じ場所で同時にどう動けばいいのか、私にも分かっていない。

 ただ、七月第一週の土日を逃したら、次がいつになるかも分からない。

 久遠先輩が背後から、私の頭を撫でた。


「あら。真白、ずいぶんと逞しくなったわね。いい子いい子」


 久遠先輩が目を細め、イルカイルは瓶の前で尾びれを振って口を開いた。


「君ならできるイルカ! 野外プレイルカ!」

「イルカイル、言い方!」


 私は額に手を当てた。

 野外プレイ、確かにそうならざるを得ないのかもしれないが。

 それでも、帰るためにはやるしかない。


「や、やがっ!」


 紡先輩が顔を赤くして、顔を背けた。


「想像するなんて、黒羽さんは意外とエッチなのね」

「想像、してないわよっ!」

「チビエロ女……」

「うるさいわね! あ、あなたたちに言われたくないわよ! あなたたちの方が、その、え、えっちなくせに……!」


 紡先輩が雪乃と久遠先輩に噛み付く。

 話題が、どんどん良くない方向へ転がっている。

 十六室の空気が、会議から口喧嘩へ変わった。


「はぁ!? 私はそういうのじゃない。 真白への愛情表現だ。どう考えても、この自己中女の方がよっぽどド変態だろ!」

「あら、心外ね。私はただ、真白を愛しているだけよ。実際に真白は私に応えてくれているわ。ね? 真白」

「真白に会うたびに身体しか求めないくせに! この淫乱女!」

「ぴぴっ! 目糞鼻糞イルカ! 一番えっちなのは間違いなく真白イルカ!」


 みんなの前で、イルカイルがドヤ顔で言い放った。

 全員の視線が、私に集まる。


「そ、そんなことないと思うけど」

「イルカは嘘つかないイルカ! だって、四条ののみとは放課後のオカルト部室で壁ドンして濃厚なえっちしてたイルカし……」

「「「えっ」」」

「藤代終とは、怪我の手当てにかこつけて、鍵もかけてない保健室のベッドで昼間からえっちしてたイルカね!」

「あわわわ……っ」


 事実ではある。あるけど!

 雪乃の手に力が入り、久遠先輩の指が私の髪から離れる。

 紡先輩はノートパソコンを持ち上げて顔を隠した。


「ほ、保健室!? しかも部室って……っ、真白、学校の施設でなんてことしてんだ、このドスケベ三股女っ!」

「が、学校の、ほ、保健室っ。……真白は、私の想定をはるかに超える発情期……っ、いや、獣……っ!」

「……へえ。部室や、保健室のベッドで、ずいぶんと野性的なことをしているのね」

「久遠先輩だって……!」


 言いかけて、私は口を閉じた。

 久遠先輩とだって、十六室でしたじゃないですか。そんな自爆を、ここで増やすわけにはいかない。


「ち、違っ、これは不可抗力というか、エナジーを集めるために必要なプロセスで……っ」

「で、でも、場所は選んだ方がいいと思うわ……」


 紡先輩が真っ赤な顔をしたまま、消え入りそうな声でそう言った。

 雪乃はまだ怒っている。

 紡先輩は耳まで赤く、久遠先輩は私の反応を見て楽しんでいる。

 味方が一人もいない。


「……それにしても、イルカイル。あなたずいぶんと詳細なデータを持っているのね?」

「真白はかなりアグレッシブイルカよ! 前回のループでは逢坂亜里沙と屋上で……」


 これ以上恥を晒されるわけにはいかない。


「……もうやめて。私が悪かったから。お願いだから、全員静かにして……」


 飛び交う暴露と嫉妬の嵐の中で、私は肩を限界まで縮こまらせて、ただひたすらに小さくなることしかできなかった。


「青春イルカね〜!」


 最近の十六室にいると、胃が痛くなる。

 キャンプでの同時攻略、これも同じくらい胃が痛い。

 私はスマホを開き、カレンダーの予定をもう一度見た。

 七月第一週の土曜日。

 私はスマホを閉じ、ため息をつくしかなかった。

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