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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第六章 二人に、言えない

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保健室では、声を出しちゃだめ

 中間テストが終わった日の放課後、オカルト研究部の部室には、ののみがいなかった。

 大事なテストで赤点だったらしい。

 昼休みに送られてきたメッセージには、泣いている宇宙人のスタンプと一緒に、再テストで今日は来られない、と書かれていた。

 ののみがいない部室を、改めて見回すと、物が多くてぐちゃぐちゃだ。

 机の上にはタロットカード、水晶玉、古い雑誌が積まれている。

 棚の上には日本人形、合わせ鏡で使った鏡、ロウソク型ライト、謎の木箱。

 オカルト研究部というより、ののみの私物倉庫だ。


「佐倉さん、四条さんは今日お休み?」


 入り口から、終さんが顔を出した。


「はい。赤点で、再テスト対策だそうです」

「……そうなんだ」

「ののみがいないと、部室のオカルトグッズの多さが目立ちますよね」

「確かに……四条さん、いつの間にこんなに増やしたの……」


 終さんは、部室を見回して、それから、こほんと咳払いをした。


「ねえ、佐倉さん。四条さんもいないことだし……せっかくだから、二人で少し片付けちゃおうか」

「いいですね。このままだと、ののみが再テストから戻ってきても、座る場所もないですし」


 終さんは、袖をまくって棚の前に立った。

 怖がりなくせに、顧問として片付けてくれるあたり、やっぱり先生は先生だ。


「ののみが勝手に持ち込んで増やしまくりましたからね。……あ、先生。今先生が持ってるその日本人形、夜になると髪が伸びるらしいですよ」

「ひゃああっ!? や、やめてよ真白ちゃん! そういうの本当に無理だからっ!」


 終さんは日本人形を両手で持ったまま固まった。

 私は笑いをこらえきれず、雑誌をまとめていた手を止めた。


「ふふっ、先生って本当に怖がりですよね。……怖がってる顔、すごく可愛いです」

「も、もう! 先生をからかわないでっ! これでも大人の……あっ」


 振り返った拍子に、終さんの肘が棚にぶつかった。

 棚の上へ立てかけてあった鏡が、がたりと傾く。

 合わせ鏡で使った、古い木枠の鏡だ。

 私は手に持っていた雑誌を机へ落とし、終さんの前へ腕を伸ばした。


「……先生、危ないっ!」


 木枠が机の角に当たって、甲高い音とともに鏡面が砕けた。

 破片が床へ散り、細い欠片が私の手の甲を切った。


「あ……っ」

「ま、真白ちゃん!? 血、血が出てるっ!」

「大丈夫ですよ、ちょっとかすっただけですから。とりあえずこの破片、危ないから片付けちゃいましょう」


 私は手を引っ込め、傷口を確認した。

 血は出ているけれど、深い傷ではない。

 それより、床に散った破片の方が危ない。

 そう思って床の破片に触れようとすると、終さんが私の手首を取って止めた。


「だめ、真白ちゃんはそれ以上触らないで。……はい、これで押さえてて」


 終さんは、ポケットから出したティッシュを、私の手の甲の傷にそっと当てた。

 それから、私の代わりに床へしゃがみ込む。


「破片は私が拾うから。四条さんが来て踏んだら、危ないもんね」


 欠片を新聞紙で包み終えると、終さんは立ち上がって、私の手を取り直した。


「……よし。じゃあ、保健室に行こう。ばい菌が入ったら大変だもん」


 ティッシュを押さえたまま、私は終さんに手を引かれて、部室の扉を閉めた。



***



 保健室には誰もいなかった。

 入り口のホワイトボードに、「付き添いで外出中。十七時に戻ります」と、書いてある。

 終さんは私を椅子に座らせ、薬品棚から消毒液とガーゼ、絆創膏を取り出した。

 こういう時の終さんは、先生っぽかった。


「……しみる?」

「少しだけ。でも、大丈夫です」


 消毒液を含ませた綿が、傷口に触れる。

 消毒液を拭いた後、終さんは絆創膏を貼ってくれた。


「……はい、これで手当ておしまい。もう、無茶して庇ったりしちゃだめだよ。佐倉さんに大きな怪我がなくて、本当によかった……」

「ありがとうございます、先生」

「いえいえ。……あっ」


 終さんが顔を上げた。

 手当てのために覗き込んでいた終さんと、視線が合う。

 終さんの手は、まだ私の手を支えたままだった。

 私が握り返しても、離さない。

 近い距離のまま、終さんは目を閉じて、唇を、ほんの少しこちらへ傾けて――待っている。

 私は、その唇に応えた。


「ん……っ」


 私は空いた手で終さんの腰を引き寄せて、深く唇を重ねた。

 触れて、角度を変えて、もう一度深く重ねる。


「……ぁ、ましろ、ちゃん……っ」


 終さんの舌が、おずおずと触れてきて、すぐに引っ込もうとする。

 私はそれを、逃がさなかった。

 唇を離すと、終さんはとろんとした目で私を見上げている。


「……保健室って、ベッドがありますよね」

「えっ……? あ、えっと……ええ。ある、けど……だ、だめだよ。ここ、学校だし……誰か、来ちゃうかも……」


 そう言いながら、私の袖から手を離さない。

 私は終さんの頬に触れた。

 ここは学校だ。だから駄目だ。

 その正論を、私はキスで塞いだ。


「ん……っ、ぁっ……」

「……終さん。……我慢、できますか?」

「…………っ」


 終さんは顔を真っ赤にした。

 潤んだ瞳で私を見上げたまま、首を横に振る。


「……じゃあ、あっちに行きましょうか」


 私は終さんの手を引いた。

 保健室の奥にあるベッドへ。

 私はカーテンレールに手を伸ばし、すっと閉めた。


「真白ちゃん……本当に、するの……?」


 そう言いながら、終さんは抵抗しない。

 私は終さんをベッドに押し倒し、上から覆いかぶさる。

 キスを重ねながら、終さんのスカートの裾に手をかけた。


「んっ……ぁ、ましろ、ちゃん……っ」


 太ももの内側を撫でると、終さんの膝が小さく震えた。

 そのまま指先を、奥へと滑らせる。

 触れた瞬間、終さんの腰がびくんと跳ねた。


「あ……っ、だめ……っ」


 その反応を確かめるように、私は触れた。


 ──扉が、ノックされた。


「すみません、絆創膏ください」


 女子の声。この時間は恐らくどこかの部活の子だろう。

 終さんの身体が、一瞬で固まった。


「っ……!」


 私は指を止めなかった。

 止めるべきなのは分かっているけど、いつも「先生」でいようとするこの人が、私の指の下でそれを保っていられなくなる瞬間を、見たかった。


「ちょっ……真白ちゃん、だめ、聞こえちゃ……」


 その声を、私はキスで塞いだ。

 唇を重ねたまま、指の動きは止めない。


「──んっ……!」


 終さんは唇を噛み、肩を震わせながら声を殺す。

 出そうになるたび、私が空いた手で口元を押さえる。

 こんなことをすれば、終さんが困るのは分かっているけれど、やめない。

 私は、思っていたよりずっと欲張りで、たちが悪い。


「……っ!」


 カーテンの外では、まだ生徒が絆創膏を探している。

 ガタン、と薬品棚の引き出しが開く音。


「あ、あった」


 生徒の足音が、扉の方へ遠ざかっていく。

 やがて、扉が静かに閉まり、誰もいなくなった。


「……っ、はぁ……っ」


 終さんが、小さく息を漏らした。

 誰もいなくなった、という安堵の吐息だった。

 けれど、私は指を止めなかった。

 安堵で緩んだ身体を、私はもう一度追い詰めていく。

 終さんは声を殺すことができないまま、私の名前だけを呼んだ。


「真白ちゃ……ん、もう……っ!」


 今度の震えは、さっきより大きかった。

 長い吐息とともに、終さんは力を失う。

 天井を見上げたまま、動けなくなった終さんを見て、私はそっと手を離した。

 終さんの身体が、まだひくひくと小さく震えている。


「……真白ちゃんの、ばか……」


 涙目で、終さんが私を見上げた。


「学校で……しかも、生徒の前で……」


 怒っているというより、力が抜けたあとの、素直な声。


「……でも、離さないで」


 終さんは、ぎゅっと私を抱きしめた。

 カーテンの向こうは、もう誰もいない。

 終さんはしばらくの間、私から離れようとしなかった。

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