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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第六章 二人に、言えない

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友達には、こんなことしないよ

「ぴこーん! 今日のオカルト研究部は、『百物語』をやるみゅん!」


 放課後の部室に入るなり、ののみは机の上に白いロウソクを並べ始めた。

 部室のカーテンは半分閉められている。

 先生はまだ来ていないようだった。

 昨日、先生とののみが同時に私へしがみついてきた光景が頭をよぎった。

 今日は、まだののみと二人きりだ。


「百物語って、百個怖い話をしたら本物の怪異が現れるっていう……二人だけでやるの?」

「そうみゅん! 順番に怖い話をしていくみゅん! トップバッターは……ののみんが行くみゅん!」


 ののみは胸を張って、ロウソクの横にスマホを置いた。

 火は使わず、ライトをロウソクの後ろに置いて、それっぽく見せようとしている。

 学園の部室で本当に火をつけたら、流石に先生に怒られるだろうな。

 私は椅子を引いて、ののみの向かいに座った。


「ぴこーん……じゃあ、エレベーターの話をするみゅん」


 ののみは声をひそめて、身を乗り出した。


「夜、ひとりでエレベーターに乗ると、たまに、自分が押してない階で止まるみゅん。扉が開いても、そこは真っ暗で、誰もいないみゅん。……でも、扉が閉まる直前に、その暗闇の中から手だけが伸びてきて、外から『開』のボタンを押すみゅん。次の日から、その人のエレベーターは、毎晩その階で止まるようになって……ある夜、乗ったまま、二度と帰ってこなかったんだって、みゅん」


 こういう話をする時の、ののみは喋り方が上手い。


「次は真白ちゃんの番みゅん!」

「えーっと……じゃあ、私が聞いたことがある、夜のプールの話」


 私は昔漫画で見た、怖い話をなんとか頭から引っ張り出すことができた。


「真っ暗なのに、水面だけが青白く光ってて……誰かが平泳ぎで、こっちに近づいてくるのが見えたんだって。変だなと思って見てたら、その人、一度も息継ぎをしないの。顔を水につけたまま、同じ速さで、ずっと足元まで泳いでくる。怖くなって背中を向けた瞬間、水面から無数の白い手が伸びてきて、足首を掴まれたんだって」


 話し終えると、ののみは静かに拍手をした。

 怖がっているのか、喜んでいるのか、どちらともつかない顔だ。


「みゅぅぅ……学校の怪談は、王道だけど背筋が凍るみゅん……」

「じゃあ、ののみんの二個目、いくみゅん」


 ののみは膝の上で手を組んで、少しだけ声を落とした。


「ある女の子が、ある日おうちに帰ったら……自分の席に、自分とそっくりな子が座ってたみゅん。家族もお友達も、みんなその子のことを『あなた』って呼ぶみゅん。誰も、本物の子には気づかないみゅん」


 ののみの語りに感情が入っていく。


「本物の子が、いくら『私はここにいるよ』って言っても、みんなの記憶から少しずつ消えていって……。最後には、誰の心にも残らなくなって……その子がいなくなったことにも、誰も気づかなかったんだって、みゅん」


 話し終えても、ののみは黙ったままだった。

 いつもなら、ぴこーん、とアンテナを立てるように話し出すところだ。

 宇宙人でも、地底人でも、非常階段の白い影でも、何かしら変な方向へ話を飛ばしてくれる。

 だけど、今は俯いて床を見ていた。


「……ののみ?」

「ののみんが一番怖いのは……お化けでも、宇宙人でもないみゅん」

「え……?」


 いつものふざけた調子じゃない。ののみがこんなに静かな声を出すのを、私は初めて聞いた。

 何を言おうとしているのか分からないまま、私は次の言葉を待った。


「……真白ちゃんは、ののみんのこと、ただの『友達』としか思ってないみゅん……?」


 言い訳を探す。

 先生の前だったから、ああ言うしかなかった。

 口に出したら、ののみをまた傷つける。


「ののみん、友達のままで置いてけぼりにされるの、絶対に嫌みゅん。……ののみんは、真白ちゃんのこと、大好きみゅん」


 私は椅子から立ち、ののみの正面に立ち、ののみの頬に触れた。

 ののみの目が見開かれる。

 私は自分から顔を近づけて、その柔らかい唇を塞いだ。


「んっ……ぁ、真白ちゃ……っ」


 ののみの声が、唇の間で途切れた。

 ロウソクの後ろに置いたスマホのライトが、二人を照らしている。

 私は一度だけ唇を離した。

 ののみは私の袖を掴み、目を潤ませて見上げてくる。

 何かを言う代わりに、また唇を寄せてきた。

 応えようとして、私は部室の扉を見た。

 昨日の先生の顔が浮かぶ。


「……待って、ののみ。やっぱり、ここまでにしよう?」

「……みゅん? どうして……みゅん……?」

「だって……先生が、いつ来るか分からないし。昨日みたいに、また急に部室に入ってきて見られたら……」


 先生に見られたら終わりだ。

 先生には、私がののみをただの友達だと言っている。

 ののみには、先生に告白したことを隠している。

 私が身を引こうとすると、ののみは首に両腕を絡めてきた。


「みゅふふ……真白ちゃん、心配ご無用みゅん」

「え……?」

「今日は長〜い職員会議があるって、ツッチー先生が言ってたみゅん。だから……誰も来ないみゅん。絶対に、大丈夫みゅん!」

「職員会議……そっか。先生、今日は来ないんだ」


 扉を見る。

 廊下からは誰の足音も聞こえない。

 ののみが嘘をつくとは考えにくい。

 それなら、ここで止める理由はない。


「……それなら、もう我慢しなくていいんだね」

「みゅっ!?」


 私はののみの腰に腕を回して抱き寄せて、唇を重ねた。

 さっきより深く。


「んんっ……んっ……」

「はぁ……真白ちゃ……んっ、みゅ……んぅっ、あ……」


 ののみは私の制服を掴んだ。

 私はののみの背中を支えながら、開いた唇の奥へ舌を入れる。

 ののみの舌が、おそるおそる触れてきた。

 すぐ逃げようとするのを追いかけると、ののみは鼻にかかった声を漏らして、私の首にしがみついてくる。


「ののみん、パンクしちゃうみゅん……っ」

「……もっと口、開けて?」

「ふぁ……っ、ん、んんっ……!」


 言われた通り、ののみが口を開く。

 ののみは私のことを信じて、全部預けようとしている。

 私はそれを受け止めながら、先生の顔を頭から追い出そうとしていた。

 でも、追い出せないまま、ののみの唇を求める。

 こんなの、最低だ。

 唇が離れるたび、ののみは短く息を吸って、また私を呼ぶ。


「真白ちゃ……もう一回、みゅん……」


 私が少しでも引けば、ののみはまた不安になる。

 だから私は、もう一度ののみを抱き寄せた。


「ののみ、友達には、こんなことしないよ」


 ののみの顔が赤くなる。

 今度はののみから唇を寄せてきた。


「ん……っ、ま、しろちゃ……」


 ののみの目が、潤んだまま私を見上げる。

 私はののみのブラウスのボタンを上から一つ、二つ、三つ、順番に外した。

 ブラウスの隙間から下着が見える。


「じゃあ」


 ののみが、かすれた声で聞いた。


「ののみと真白ちゃんは……なんに、なるのみゅん……?」


 私は、ブラウスの下でののみに触れたまま、手を止めた。


「私は」


 ののみの息が、喉の奥で詰まる。


「ののみのこと、好きだよ」


 好き、は嘘じゃなかった。

 ののみの目が、大きく見開かれる。

 私はののみを見つめたまま、止めていた手を、もう一度そっと動かした。


「だから、ののみとこういうことしたい」


 そう言って、私は空いている方の手を、ののみのスカートの裾にかけた。

 ののみの太ももが露わになる。

 私は胸から手を離さずに、スカートの中の手を太ももの内側に滑らせた。

 指が肌を撫で上げるたび、ののみの脚がぴくぴくと震える。

 ののみが無意識に脚を閉じかけたのを、私は手のひらでそっと制した。


「だめ」


 ののみが小さく息を呑む。

 私は太ももの内側をゆっくりと撫で続けながら、少しずつ奥へと指を進めた。

 脚のつけ根に近づくにつれて、ののみの息が浅く、速くなる。

 私の指が触れると、ののみの身体がびくんと跳ねた。


「……っ、や、ましろ、ちゃ……っ」


 いつも語尾についている「みゅん」が、最後まで続かない。

 やめてほしいのか聞くと、ののみは首を振った。


「やめ、ないで……っ」


 私が指を動かすたびに、ののみの言葉から、電波が一つずつ抜けていく。

 「ぴこーん」も「みゅん」も、もう、うまく形にならない。


「みゅ………ぁ、ましろ、ちゃん……」


 電波語が、少しずつ、ただの女の子の声に変わっていく。

 この声は、部室ではしゃいでいるときのののみからは、絶対に出ない。

 私だけが、聞ける声だ。


「あ……っ、ん、ぁ……ましろ、ちゃん……っ」


 やがてののみの口から出るのは、切れ切れの息と、私の名前だけになった。


「ましろ、ちゃん……ののみ、もう……っ」


 ののみが、こくこくとうなずく。もう、言葉が続かない。

 最後に長い震える息が漏れて、ののみの背中が小さく反った。

 しばらく、ののみは動けなかった。天井を見上げたまま、荒い息を繰り返している。

 ののみは、両腕を伸ばして、ぎゅっと抱きしめてきた。

 顔を私の胸に埋めて、声を押し殺すように震えている。


「……ののみんね」


 くぐもった声で、ののみが言った。


「ののみんの言葉、全部なくなっちゃったみゅん……」


 その声には、いつもの「ぴこーん」も、はしゃいだ響きもなかった。

 ただの、女の子の声だった。

 私はののみの背中に手を回して、抱きしめ返した。


「うん。でも、伝わったよ」


 ののみが、私の胸に顔を埋めたまま、小さくうなずいた。肩の震えが、少しずつおさまっていく。

 私はののみの髪をそっと撫でた。

 腕の中のののみは、電波の鎧を全部脱いでいた。

 可愛い、と思う。

 ──でも、昨日この部室で先生に触れたのも、同じ私の手だ。


「ののみ」

「……みゅん」

「好きだよ」


 ののみの腕に、ぎゅっと力がこもった。


「ののみんも、好きみゅん」


 そう言って、ののみは少しだけ笑った。

 いつもの電波な笑顔とは違う、力の抜けた素の表情だった。

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