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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第六章 二人に、言えない

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ここは、部室だよ……?

 次の日の放課後、オカルト研究部の部室には、終先生(ついせんせい)がいた。

 ののみはまだ来ておらず、机の上には昨日の活動日誌ファイルが置いてある。

 課外活動の記録のプリントを先生は記入しようとしていた。

 私が向かいに座ると、先生はプリントをこちらへ少し向けた。


「えっと、この間のトンネルの件なんだけど……活動内容、どう書けばいいかな。肝試しってそのまま書くと、ちょっと怒られちゃいそうで」

「地域の民俗資料調査、でどうですか? 心霊スポットとして語られている場所の調査、とか」

「そ、それなら課外活動っぽいね」

「はい。ののみ、いっぱい写真撮ってましたし、あとでデータもらって印刷しましょう」


 先生はプリントの項目を埋めていく。

 こうして普通に部活の話をしていると、先生は顧問というより、同級生に見えた。

 ただ、参加者の欄に四条ののみ(しじょうののみ)、と書いたところで、先生のペンが止まった。


「佐倉さんって、四条さんと仲良いんだね」

「そうですね、同じ部活の友達ですからね」


 ペン先は、参加者欄のところで止まったままだった。

 その続きを書かない。


「…………友達って、あんなふうに、指を絡める恋人繋ぎとか、するの……?」

「えっ……」


 ぎくりとした。先生は昨日のあれを見ていた。

 うろたえたら終わりだ。


「はい、私は友達とは普通にしますよ?」

「ふ、ふつう……」

「最近の子はみんなそうだと思いますけど。私なんて、幼馴染の唯花(ゆいか)とも普通に手を繋いで歩きますし」


 本当はそんなこと絶対しない。

 唯花と手を繋いで歩いたことなんて、今までのループで一度もない。

 けれど、今はこう言って押し切るしかない。


「そ、そうなの……? 先生たちの時代とは、ずいぶん感覚が変わったんだねぇ……」

「先生も、繋ぎますか?」


 先生に向かって、私は手を差し出した。

 先生は、困った顔で私を見て、差し出された私の手を見て、それから、おそるおそる手を乗せてきた。

 私は先生の指の間へ、自分の指を入れる。


「ひゃっ……」


 先生は顔を真っ赤にして、私から目を逸らしたが、手を振りほどこうとはしない。

 私は空いている方の手を伸ばした。

 先生の頬に触れると、先生の肩が跳ねる。

 部室の外からは、まだ誰の声も聞こえない。

 昨日、先生が言いかけてやめたことを今なら聞ける。


「先生……まだ、昨日のこと怒ってます?」

「怒って、ないよ……。ただ……」

「ただ?」

「四条さんと……すごく楽しそうだったから。私、一応大人なのに、生徒にヤキモチ妬くなんて、みっともないよね……」


 先生は、恋人繋ぎの手をほどかないまま、私を見上げた。


「みっともなくないですよ。私にヤキモチ妬いてくれてる先生、すっごく可愛いです」

「〜〜〜〜っ! もう、佐倉さんはいつもそうやって、私をからかって……っ」

「からかってないって、土曜日に言いましたよね。……先生の彼女になりたいって」

「うぅ……」


 先生の返事が、そこで切れた。

 ののみが来たら、いつものオカルトの話が始まる。

 先生は顧問に戻って、私は部員に戻る。

 その前に、どうしても先生に踏み込みたかった。


「……キス、してもいいですか?」

「……ここは、部室、だよ……? 四条さんが……」


 先生は扉の方を見て、それから私の顔を見る。

 私は先生の返事を待った。

 それでやっと、かすかに頷いた。

 私はそれを見て、先生の頬に触れ、唇を重ねた。

 先生は目を閉じて、繋いだ手に力を込めた。

 二度目は、先生からも動いてきた。

 私の下唇を、そっと挟んでくる。上手くはない。

 歯がかすかに当たって、それでも離れようとしない。

 先生の唇が開く。入ってきた舌に触れた瞬間、先生の指が私の手を握り直した。


「……先生、もう一回……」

「ぁ……う、うんっ……」


 一度離れた唇の間で、先生が短く返事をする。

 私は先生の頬に手を添え直した。先生も、もう逃げる気はない。

 今度は先生の方から、かすかに顎を上げる。

 その瞬間、引き戸が勢いよく開いた。


「ぴこーん! ののみん、部室に到着みゅん! ……みゅん? 真白(ましろ)ちゃん、ツッチー先生、何してるみゅん?」


 私は、反射的に先生から離れた。

 先生も、横へ退いた。


「ひゃああっ!?」


 繋いでいた手が離れて、私の手だけが宙に残る。

 まずい。見られてしまっただろうか。


「あ、ののみ。先生の髪に、ちょっと埃がついてたから取ってたんだ」

「ほ、ほこり!? そ、そう! すっごく大きな、オカルト的な埃がね!」

「そうだったみゅんか!」


 先生は両手を胸の前で握って、こくこく頷いている。

 ごまかし方が下手すぎるのに、ののみは素直に信じてくれた。


「それよりののみ、前髪がはねてるよ」

「みゅ?」

「はい、直してあげる。……よしよし」


 私はののみの頭に手を乗せた。

 先生の髪についた埃から、ののみの前髪へ話を移して、逃げる。

 けれど、ののみはすぐに嬉しそうに目を細めた。

 頭を撫でると、ののみの肩から力が抜けた。


「みゅ〜〜〜んっ! 真白ちゃんの手、気持ちいいみゅん! もっとなでなでして欲しいみゅん!」

「いいよ。可愛いね、ののみは」

「みゅふふ〜、真白ちゃん〜」


 ののみが私の手に頭を預けて、これはこれでまずいと思う。

 ついさっき先生と恋人繋ぎをしていた手で、今度はののみを撫でている。誤魔化せたのはいいが、別の火種を作っているような気がする。

 横を見ると、先生が机の向こうで唇を尖らせ、私とののみを見ていた。

 先生として、何も言えない顔だった。


「…………っ」


 ののみにはバレずに済んだ。

 そういうことにしておく。

 私はののみの頭を撫でながら、先生に向かって笑ってみせた。

 先生は笑い返さない。

 これ、本当に大丈夫なのか……?

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