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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第六章 二人に、言えない

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絶対、守ってくれる?

 放課後の校門前に、終先生(ついせんせい)の車が停まっていた。

 助手席には、カメラとモバイルバッテリーと温度計を詰めた、ののみのリュックが先に置かれている。

 行き先は、県境の山道の先にある廃トンネル。地元では「鴉尾(からすお)のトンネル」と呼ばれている。

 ののみは前日の夜から、メッセージで資料の画像を送ってきていた。


 私は窓の外を見た。日が落ちる前の山道は、木の影で暗くなっている。

 住宅の灯りが途切れ、道路脇のガードレールが続いた先がスマホのマップが示す目的地だった。

 先生は駐車できるスペースを探し、車を端に寄せた。


「ここが鴉尾のトンネルみゅん!」

「本当に来ちゃったんだねぇ……」

「資料の写真と全然違うね」

「実物の波長は別格みゅん!」


 山道を少し進むと、照明のないトンネルの入口が見えた。

 入口の上には黒ずんだ染みがあり、壁の継ぎ目に水滴が溜まっている。

 ののみはスマホを構え、先生は私の制服の裾をつかんだ。


「うぅぅ……すっかり暗くなっちゃったよぉ。ねえ、本当に中まで入らなきゃダメ? この辺りから見るだけじゃ……」

「ぴこーん! 先生、何を弱気なこと言ってるみゅん! オカルト調査は日が沈んでからが本番みゅん! さあ真白(ましろ)ちゃん、行くみゅん!」


 ののみが私の手を取って、入口へ向かう。

 先生の手は、私の袖から腕へ移動した。


「わっ。そんなに引っ張らないで、ののみ。足元暗いから転ぶよ」

「ま、待って! 置いていかないでぇ! ひぃぃ、なんか泣き声が聞こえる気がするぅ! 」


 先生が私の腕にしがみついてくる。

 右手はののみ、左腕は先生。両側から別の方向へ引かれて、私は入口の前でいったん止まった。

 これ、誰が引率しているんだろう……。


「先生……ちょっと重たいです」

「ご、ごめんね! でも無理! 怖いものは怖いんだもん……っ!」


 先生は謝りながら手を離さず、ののみは入口近くの壁を撮っている。

 私は先生を振りほどかず、ののみの手も離さないまま、中へ入った。

 天井から落ちる水音が、トンネルの中で響いた。

 ののみは壁際へ寄り、カメラのシャッターを切った。


「すっごい冷気みゅん! 気温が一気に二度下がったみゅん! ここは絶好の撮影スポットみゅん!」

「ののみ、あんまり一人で奥に行かないようにね」


 ののみは探索に熱中して私の言葉が聞こえていないのか、そのまま温度計を掲げた。

 温度を確かめた後、ののみがこちらを振り返る。


「ぴこーん! 真白ちゃん、ののみんのアンテナがビリビリきてるみゅん! あそこ、絶対に霊の気配がするみゅん!」

「ひゃあぁぁぁっ!? れ、霊!? どこ!? むりむり見れない! 佐倉さん、助けてぇっ!」


 先生は私の腕に額を押しつけた。

 教師としての威厳は、トンネル入口に置いてきてしまったようだ。


「よしよし、大丈夫ですよ先生。もし何か出たら、私が先生のこと守りますから。だから目、開けてください」

「ほ、ほんとに……? 絶対、守ってくれる……?」

「はい。約束します」


 先生は恐る恐る顔を上げた。

 特に何もないのに、先生がまた私の腕をつかむ。

 ののみはその様子も撮ろうとして、私に止められた。


「みゅふふ、先生は本当に怖がりみゅん。……あっ、いまオーブみたいなの撮れたみゅん! よーし、今日は十分なダークマターを吸収したみゅん! ののみん、満足したみゅん!」

「ふふ、よかったね。じゃあ、車に戻ろうか」


 先生は帰ると決まった途端、私の腕から手を離した。

 でも、微かな水音に反応して、すぐまたつかんでくる。

 外へ戻ると、山道が来た時よりも暗くなっていた。

 駐車場所の車のライトが点いた時、先生は本気で安心した顔をした。

 そのまま私たちは、先生の車に乗って来た道へ戻った。

 車は、先にののみの家に着いた。


「今日は最高の課外活動だったみゅん! 真白ちゃん、ツッチー先生、また行くみゅん!」

「次は、もうちょっと明るい場所がいいなぁ……」


 ののみは手を振って、玄関へ駆けていった。

 先生はののみが玄関に入って鍵を開けるのを見届けてから、車を出した。

 ののみを送り届けた後の車内は、さっきの騒がしさがなくなり、静かだった。

 ナビの画面が、私の自宅への道を示している。

 先生は信号待ちで、ハンドルの上に置いた手を見ていた。


「あ、あのさ……佐倉さん」

「はい、なんですか?」

「さっきは、その……ごめんね。あんなにぎゅってしちゃって。私、一応先生なのに……みっともなかったよね……」


 先生は前を向いたまま言った。


「そんなことないですよ。可愛かったですよ、先生。ずっと震えてて」

「か、可愛い……っ!? ま、またそういうこと言って、大人をからかわないのっ!」

「からかってないですよ。本当にそう思っただけですから」

「うぅぅ……佐倉さんのバカぁ……」


 先生は赤信号の間に、ハンドルへ額を近づけかけて、慌てて姿勢を戻した。

 私はスマホの画面を開く。


 ――ラピピコラボカフェ、来週の土曜日から開催決定。


「…………」

「…………」


 静かな車内の中、私はコラボカフェのことを切り出した。


「あ、そういえば先生。来週から、ラピピのコラボカフェが始まるらしいじゃないですか」

「えっ!」

「こう見えても結構ラピピ、好きだから情報チェックしてるんですよ」


 嘘だ。雪乃(ゆきの)からの情報だ。

 雪乃がポイント獲得のために、一生懸命リサーチして、私に送ってきたものだ。

 でも先生は、嬉しそうに話し始める。


「そうなんだよ、もちろん先生はチェック済みだよ! 桜木町の『カフェ・ステラリア』でやるやつだよね! 限定のアクリルコースターがすっごく可愛くて……っ!」


 私は、声が弾んだその横顔を見て、言葉を続けた。


「……よかったら、私と一緒に、行きませんか?」

「えっ……一緒に?」

「はい。先生がよければ、ですけど」

「じゃ、じゃあ」


 先生は言いかけて、教師であることを思い出したようだった。

 私はすぐに、理由になりそうな言葉を続けた。


「部活動の一部ですから」

「そ、そう! 流行りのラピピを調べるのもオカルト研究部の活動、だよね?」

「ふふ、じゃあ私、予約取りますね」

「ううん、待って! 予約は先生がとっておくよ。車も出すし!」

「そうですか? でも……」

「いいの!」

「分かりました。じゃあ、お願いしますね、先生」


 先生はそこでようやく、教師らしく胸を張った。

 私はスマホを取り出して、来週の予定を打ち込んだ。


 帰宅してから、先生からメッセージが届いた。

 コラボカフェは、土曜日の十四時に予約が取れたという。

 私は返信を打って、スマホを伏せた。

 また土曜日、先生と過ごすことが決まった。

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