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<注意>第37回小説すばる新人賞 落選作品 を改稿したものです
くーちゃんは、川原に戻るや、大きなくしゃみをします。
「また風邪ひくぞ」
「いいわよ、別に」
いまのくーちゃんは、達成感でいっぱいです。いまさらペンダントを取り戻したからといって、ヒバリの遺産が戻るわけではないでしょう。しかし、くーちゃんが感じていた罪悪感を払しょくするのに、この方法しか思かなかったのです。
くーちゃんの手のひらから、光の球が役目を終えたように消えていきます。
「教えてくれ」
タロウくんが言います。
「どうして、人間ごときのために、そこまでするんだ? おまえは、あんなに、人間を愚かだと思っていたのに」
くーちゃんはずぶ濡れのまま、ペンダントを見つめます。
「ゲストハウスを出るまではわからなかったけど、いまならわかる。あたしは、あたしのために、ヒバリのペンダントを取り戻そうと思ったの。ヒバリへの罪を洗うために——あたしのいたずらのせいで、ヒバリの人生をめちゃくちゃにしちゃった、ヒバリの気持ちを汲むために——あたし、人間の気持ちを、ぜんぜん考えてなかった。だからこれは、その罪滅ぼしでしかない」
「そんなことしたって、ヒバリが裕福になるわけでもねえだろ」
「でも、ヒバリのペンダントを取り戻したいって、あたしが思ったから、そうしただけ。理由なんて、それで十分」
くーちゃんは、タロウくんに頭を下げました。
「ありがとう、あたしのために力を使ってくれて」
その一言が、タロウくんの胸の奥に、温かく広がっていきます。
誰かのために力を使うこと。
たとえそれが、罪の意識から来た思いだろうと、頼まれて嫌々やったことだろうと、他者のために力を使っていることに変わりはない。くーちゃんだけでなく、それは、タロウくんも……
くーちゃんがまた、くしゃみをします。
タロウくんは、見かねたように、胸の前で両手を組みました。
「風よ」
と唱えると、くーちゃんの周りに暖かい風が吹き抜けます。
あっという間に、髪も服も乾いてしまいます。
くーちゃんが何か言う前に、タロウくんは、マフラーと手袋を投げ渡します。
「濡れたまんまだと、使えねえだろ」
タロウくんはさっさと踵を返して、ゲストハウスに向かいました。強がっていますが、どうにも身体が重い。
くーちゃんはマフラーと手袋を着けて、タロウくんの後を追いました。石畳の通りを行く間、タロウくんはひとり、ぶつぶつとつぶやいています。
「働くこと、か……」
ちらっとのぞいたタロウくんの横顔は、ぶっきらぼうながら、いつもより明るく見えました。
——第3章 了——
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