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13-2

<注意>第37回小説すばる新人賞 落選作品 を改稿したものです

 くーちゃんは、川原に戻るや、大きなくしゃみをします。



「また風邪ひくぞ」

「いいわよ、別に」



 いまのくーちゃんは、達成感でいっぱいです。いまさらペンダントを取り戻したからといって、ヒバリの遺産が戻るわけではないでしょう。しかし、くーちゃんが感じていた罪悪感を払しょくするのに、この方法しか思かなかったのです。



 くーちゃんの手のひらから、光の球が役目を終えたように消えていきます。



「教えてくれ」

 タロウくんが言います。

「どうして、人間ごときのために、そこまでするんだ? おまえは、あんなに、人間を愚かだと思っていたのに」



 くーちゃんはずぶ濡れのまま、ペンダントを見つめます。



「ゲストハウスを出るまではわからなかったけど、いまならわかる。あたしは、あたしのために、ヒバリのペンダントを取り戻そうと思ったの。ヒバリへの罪を洗うために——あたしのいたずらのせいで、ヒバリの人生をめちゃくちゃにしちゃった、ヒバリの気持ちを汲むために——あたし、人間の気持ちを、ぜんぜん考えてなかった。だからこれは、その罪滅ぼしでしかない」



「そんなことしたって、ヒバリが裕福になるわけでもねえだろ」



「でも、ヒバリのペンダントを取り戻したいって、あたしが思ったから、そうしただけ。理由なんて、それで十分」



 くーちゃんは、タロウくんに頭を下げました。



「ありがとう、あたしのために力を使ってくれて」



 その一言が、タロウくんの胸の奥に、温かく広がっていきます。



 誰かのために力を使うこと。



 たとえそれが、罪の意識から来た思いだろうと、頼まれて嫌々やったことだろうと、他者のために力を使っていることに変わりはない。くーちゃんだけでなく、それは、タロウくんも……



 くーちゃんがまた、くしゃみをします。



 タロウくんは、見かねたように、胸の前で両手を組みました。



「風よ」



 と唱えると、くーちゃんの周りに暖かい風が吹き抜けます。

 あっという間に、髪も服も乾いてしまいます。

 くーちゃんが何か言う前に、タロウくんは、マフラーと手袋を投げ渡します。



「濡れたまんまだと、使えねえだろ」



 タロウくんはさっさと踵を返して、ゲストハウスに向かいました。強がっていますが、どうにも身体が重い。



 くーちゃんはマフラーと手袋を着けて、タロウくんの後を追いました。石畳の通りを行く間、タロウくんはひとり、ぶつぶつとつぶやいています。



「働くこと、か……」



 ちらっとのぞいたタロウくんの横顔は、ぶっきらぼうながら、いつもより明るく見えました。



              ——第3章 了——

閲覧ありがとうございます!

次回もよろしくお願いしますm(__)m

内容が気に入れば、どうぞ、SNS等で広めてください。


*順次投稿していきます。

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