10-1
<注意>第37回小説すばる新人賞 落選作品 を改稿したものです
数人の大人が川原にやってきて、救急車を呼ぶとかなんとか騒いでいましたが、天使であるくーちゃんを人間の病院に診せても、たいした診断はできなかったでしょう。
くーちゃんは「大丈夫」と言って、ふらふらとその場を離れました。
「おれたちがついていくから」
と、ダイチとその取り巻きが、くーちゃんの後を追います。まるでペンギンの家族が身を寄せ合っているみたいに、くーちゃんを取り囲んでいます。
「うっとうしい……」
ですが、いまのくーちゃんには、彼らを振り払う気力がありません。
玄関先にいた祖父江さんは、ずぶ濡れのくーちゃんとダイチを見て、目をむきました。ひとまずくーちゃんをお風呂に入れて、そのあとでダイチにお風呂を進めました。ダイチたちは、一部始終を祖父江さんに話した後、夜も遅いからとゲストハウスを出ていきました。
湯船の中で、くーちゃんは眠るように目をつむっていました。冷たい川に落ちたときは沈む恐怖ばかりでしたが、暖かい湯船には安心感が満ちていて、落ち着きます。が、湯船から引き上げられた途端、全身に悪寒が走ります。
祖父江さんがくーちゃんの額に手を当てて、
「風邪ですね」
と言いました。人間であれば命を落とすような状況でも、天使のくーちゃんであれば、風邪を引く程度で済むようです。ただ、痰が喉に絡まったようで、祖父江さんに返事をしようにも、かすれた声しか出なくなっていました。
くーちゃんの部屋は、すでに暖房が利いてしました。
布団も、乾いたものに取り換えられています。
祖父江さんはくーちゃんをベッドに寝かせ、枕元に膝をつきました。
「馬鹿なことをしましたね」
それは、どのことを言っているのでしょう。
今日のこと?
これまでのこと?
そのどちらのことも言っているように聞こえて、くーちゃんはまどろむ頭で、ひとつだけうなずきました。
祖父江さんは、明日の仕事はお休みでいいとか、欲しいものはあるかとか、いろいろ話していましたが、くーちゃんの耳には届きません。昨夜からの寝不足に、自責と幻聴、川での一件……眠りの落ちるのは、あっという間でした。
閲覧ありがとうございます!
次回もよろしくお願いしますm(__)m
内容が気に入れば、どうぞ、SNS等で広めてください。
*順次投稿していきます。




