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7-1

<注意>第37回小説すばる新人賞 落選作品 を改稿したものです

 翌日、日曜日の夕方。

 予約していた家族客がやってきます。

 大人ふたりは、くーちゃんに出迎えられ、驚いたようすでまばたきます——くーちゃんを見た大人は毎度似た反応をします——後ろにヒバリが控えているのを見ると、お手伝いの子どもだろうと判断したようです。

 双子の兄弟は、()()()()()()()()が接客をしているのを、興味深そうに見つめています。



 くーちゃんは取り合わず、「ご案内します」と、家族を大部屋に案内しました。



 接客に慣れたおかげでしょう、くーちゃんはさして嫌悪感もなく(ぶっきらぼうな感じは抜けていませんが)、ゲストハウスの使い方を説明し、「どうぞごゆっくり」までをきちんと言い終えてから、大部屋の扉を閉めました。



 ふと声が聞こえます。



「雨が降る前に着いてよかった」



 くーちゃんはガラス戸から空を見上げます。一面に広がる雨雲は、夜が近づくにつれて、どんどん黒ずんでいきます。ぽつ、ぽつ、と、小粒の雨が降り始め、かすり傷のような水滴が、ガラス戸を伝っています。



 あっという間に本降りに変わります。風もかなり強く、雨粒が屋根瓦や中庭に雨がぶつかり、ばちばちと弾けるような音が響いています。



「いってきます」



 ありえない声が聞こえた気がして、くーちゃんは慌てて玄関に向かいます。ちょうど玄関の扉が閉まったところです。



 追いかけたい、でも、まだお客様がいます。



 手をこまねいていると、また玄関が開いて、タロウくんが帰ってきました。



「ちょうどよかった」



 タロウくんが「なにが?」と言うような顔をします。



「大部屋に客がいるの。なにかあったら対応して」

「おまえが任された仕事だろ」

「同じように仕事を任されたやつが出てったから、問い詰めてくる」



 タロウくんが文句を言う前に、くーちゃんは靴のかかとをつぶして、タロウくんの脇を駆け抜けました。



 街灯を頼りに、坂道を駆け下ります。冷たい雨が髪も服も濡らして、じっとりと重くなっていきます。いまさら傘を取ってくるのも面倒で、くーちゃんは濡れながら、旧庭神橋に向かいました。



 ヒバリはビニール傘を差して、橋の真ん中に立っていました。

 今日は月が見えません。

 暗い川面に映る町明かりは、雨粒の波紋が重なって、奇妙な形に揺らいでいます。



 くーちゃんがヒバリを見上げます。



「なにが、あんたを、そこまでさせるの?」



 ヒバリが驚いた顔をします。こんな雨の日までついてくるとは思っていなかったようです。「濡れますよ」と、くーちゃんの頭上に傘を差します。



「傘なんていいから、答えなさい」



 ヒバリは、くーちゃんを気遣うような声で、「帰りましょう」と言います。それが作られた気遣いだと、くーちゃんにはわかりました。



「濡れた体を拭かないと。風邪を引いてしまいます」

「罪とかなんとか、あんな意味深なことを話しておいて、いまさらはぐらかすの?」

「……仕方のない話です。帰りましょう」



 ヒバリの手が背中に当てられるのを、くーちゃんは身をよじってかわします。



 雨に打たれてなお、くーちゃんは動きません。



 ヒバリは観念したように、くーちゃんのそばに屈みます。

「楽しい話じゃ、ありませんからね」

閲覧ありがとうございます!

次回もよろしくお願いしますm(__)m

内容が気に入れば、どうぞ、SNS等で広めてください。


*順次投稿していきます。

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