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<注意>第37回小説すばる新人賞 落選作品 を改稿したものです

 大舟ソラは、もんもんとしていました。


 昨日、金曜日、学校でセナが言っていたことが、頭から離れません。


 ほんとうは、日曜日の明日、セナと遊ぶつもりでいました。たいしたことはしません。うちに誘って、ゲームをしたり、漫画を読んだりすればいい、と思っていました。


 幼稚園のころは、ふたりで公園に出かけて、鬼ごっこをしたりキャッチボールをしたり、アクティブに遊んでいました。他の友達も誘って、大勢で遊ぶこともありましたが、セナの目が悪くなって以来、すっかり内気になってしまって、セナはひとりでいることが多くなりました。他の友達と疎遠になっても、セナは、ソラの誘いを断ることはありませんでした。


 セナと遊ぶのは楽しかったし、自分だけがセナの特別になれたみたいで、うれしかった。セナにもできる遊びを考えてあげるのが、自分の役目だと思っていました。


 それなのに、セナは変わってしまった……


 元いじめっ子のダイチくんや、クラスの男の子たちといっしょに、グラウンドで遊ぶことが増えました。セナは目が悪いし、これまで外で遊ぶ機会が少なかったせいで、体力もありません。が、ダイチくんたちは、そんなセナに合わせてくれます。


 セナもセナで、自分からダイチくんたちの遊びに混ざるようになりました。心も身体も、以前のセナにはないくらい、アクティブになったのです。


 でも、それだけなら、ソラの気持ちがもんもんとすることはなかったでしょう。セナがいじめられなくなったことも、どんどん元気になっていることも、ソラにとってうれしいことです。


 問題は別にあります——セナが変わった理由がソラじゃない——そしていま、ソラを最も悩ませているのは、日曜日の誘いを、セナが断ったことです。


「ごめん、日曜日、用事があって……」

「なに、どんな用?」

 しつこく聞こえたかも、と、ソラは冷や汗を浮かべます。


「えっと……」

 セナは歯切れ悪そうに、でも、ちゃんと答えてくれました。

「くーちゃんのところに、遊びに行こうと思ってて」


 くーちゃん。


 校内で聞いたこともない名前。


 ソラはすぐに、あの女の子のことだと思い至りました。先日、眼科帰りのセナと歩いていた、おかしな女の子。セナが「天使」と形容するくらい入れ込んでいる、わたしじゃない女の子……


 あの日以来、ソラは少しずつ、くーちゃんの動向をうかがっていました。そして、にらんでいたとおり、彼女はあまり良い子ではないようです。


 ゲストハウス星山に住んでいる。


 管理人さんの言うことは聞くけど、ちゃんと手伝いをしているようすがない。


 宿泊客を困らせて、ほくそ笑んでいる。


 そんなおかしな子に、セナが入れ込んでいる。セナがもし、あの子のように、よからぬことを楽しむようになったら……? そんなの嫌だ。それなら、気弱で、臆病なセナのままでいてくれたほうが、ずっと良い。


 ソラは決めました。土曜日の夜、おとうさんとおかあさんが部屋に戻ったのを見計らって、居間にあるパソコンで、最近の日課を終わらせました。それから、携帯電話(小学生だからという理由で、電話でのやりとりしかできない)を取り出して、セナの家に連絡しました。セナは携帯電話を持っていません。電話には、セナのおかあさんが出ました。すぐにセナに取り次いでもらえます。


「どうしたの?」

 セナの声を聞いて、ちょっとだけうれしくなって、安心して、決めていた言葉を振りしぼりました。

「明日、わたしも行っていい?」


 セナは断らない——思っていたとおりでした。

閲覧ありがとうございます!

次回もよろしくお願いしますm(__)m

内容が気に入れば、どうぞ、SNS等で広めてください。


*順次投稿していきます。

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