第三十九話 ニコル vs ギャリング②
気合いと共にギャリング殿下の筋肉量と纏うオーラが変わった。
「《封印》を解いた!」
「封印?」
「力が有り余って周囲の物を破壊してしまうのでな、普段は力を封印し生活しているのよ! がーはっはっはっはっ!」
「苦労されてるのですね」
「即位もしとらんのに、《破壊王》と呼ぶ輩までおるわっ!」
「破壊王とはまた物騒な」
「そうだろ。貴様もそう思うよ、なっ!」
『ブオンッ!』
「うわっ!」
『ザクッ!』
ギャリング殿下の斬撃を避けると、剣圧で頑強な石床が十メートルわたり裂けた。
剣の威力もスピードも今までと比較にならない程上がった。
「会話中にいきなり危ないですよっ!」
「驚いたフリして余裕で避けといて、何言ってやがる。うりゃっ!」
『ブオオンッ!』
『スッ!』
『ザククッ!』
「おらよっ!」
『ブオオオンッ!』
『ススッ!』
『ザクククッ!』
ギャリング殿下の剣は、振るう度に威力を増した。
このまま避けていたら、闘技場が見るも無残な状況になってしまう。
「どうした。避けてばかりいねーで反撃してこいっ!」
「分かりました、よっ!」
『シュンッ!』
『ガイイーン!』
「くっ! ふんっ!」
今までより力を込め放った剣は、ギャリング殿下を一瞬仰け反らせるも直ぐに体勢を立て直した。
『シュンッ!』『ガッ!』
『シュンッ!』『ガッ!』
『シュンッ!』『ガッ!』
『シュンッ!』『ガッ!』
『シュンッ!』『ガッ!』
『シュンッ!』『ガッ!』
更に動きに揺さぶりを掛け、連続攻撃を行う。
が、ギャリング殿下は大剣を器用に捌き全て受ける。
「おいおい、あいつスゲーぞ。動きが速すぎて目で追えねー!」
「あの体格差でギャリング殿下が防戦一方だ!」
「馬鹿、ギャリング殿下笑ってるだろ。これから反撃が始まるんだよ!」
観客席では兵士達が興奮している。
「つえー奴とやり合うのはマジで楽しい、ぜっ!」
『ブオオオオンッ!』
『ギーーーッ!』
「これを受け流すか、よっ!」
『ブオオオオンッ!』
『ギーーーッ! シュンッ!』
ギャリング殿下の強烈な剣を受け流し、即反撃。
『ガッ! ブオンッ!』
しかしそれを受けられ、間髪入れず反撃される。
『ギーーーッ! シュンッ!』
僕も再び剣を受け流し反撃する。
『ガッ! ドンッ!』
ギャリング殿下は剣を受けると、そのまま体当たりしてきた。
僕は突き飛ばされた勢いで、自ら後退する。
「逃がさねーよっ!」
『ダッ!』
『!!』
ギャリング殿下は、《瞬動》スキルで一気に間合いを詰めてきた。
ここにきて初めて《危機感知》スキルが反応した。
『ブオオオオンッ!』
『ガイイーーーン!』
『ビキッ!』
ギャリング殿下の袈裟斬りを、受け流す間が無くまともに受け止めた。
その結果、僕の足元の石床が割れた。
「くそダラーーーッ!」
『ブオンッ!』
しかし気合いで剣を振りきられ、ふっ飛ばされる。
『ズズズッ!』
僕は空中で体勢を整え着地する。
「まだまだーっ!」
『ダッ!』
そこへギャリング殿下が再び《瞬動》スキルで間合いを詰める。
『ブッ』
『シュンッ!』
『ガイイーーーン!』
「くっ!」
『ズザザッ!』
僕は動きを予想し、ギャリング殿下の剣にカウンターを合わせ斬撃を止めた。
「貴様はまったく底が見えねー、なっ!」
「それはお互い様です、よっ!」
『ガイイーーーン!!』
『ズシャッ!!』
力のこもった斬撃がまともにぶつかり合い、二人の周囲の石床を陥没させた。
『タッ!』
『ダッ!』
「逃げんなよ。もっと打ち合おうぜっ!」
『ギンッ! ギンッ! ギンッ! ギンッ! ・・・・・・・・・・!』
足場の悪いその場所を離れようと後方へ跳ぶと、ギャリング殿下は瞬時に間合いを詰め連続攻撃を仕掛けてきた。
僕は闘技場を縦横無尽に移動しながらそれを防ぐ。
この状況はしばらく続いた。
◇
ユミナやソフィア婦人、そしてニコルの家族は、闘技場の貴賓席で観戦していた。
「おねーちゃん、凄い、凄い試合だよっ!」
「うん。相手の人、凄く強いね。パパ行商の旅で襲ってきた盗賊や《魔素地帯》の魔物の群れを余裕でやっつけちゃうから、こんな本気のパパ初めて見た!」
サーシアは勘違いしていた。
ニコルはこの試合でまだ本気など出してなかった。
今までニコルは、家族やエシャット村の人達へ能力の片鱗しか晒していない。
それはこの世界で《のんびり生活》を送る上で必要な能力を行使したまでで、目立って貴族や王族の影響を受けたくなかったからだ。
だが世間知らずの家族やエシャット村の人達からすれば、それすらも《大いなる力》に思えた。
「パパ、勝つよね?!」
「当たり前でしょ。サー達のパパなんだから! 『それにサーを庇ってくれたユミナさんの為にも、絶対勝たなきゃ。でも・・・・・・!』」
ユミナの父への想いが、サーシアを複雑な気持ちにさせた。
『パパが既婚者と知りながらアプローチしてきた女の人は今までもいた。パパ格好良いから。でも『妻を愛してる』と言ってキッパリ断っていた。ユミナさん、この試合パパが勝ったらどうするの?』
サーシアはそんな事を思いながら、ユミナの横顔を眺めた。
◇
親善試合は決定打に欠け、膠着状態が続いた。
しかし闘技場の床や壁は、着実に崩壊に向かっていた。
「ハァ、ハァ。激しい試合だ。私も剣の腕と体力には自信があったが、二人は次元が違う」
審判のクラウドは呟いた。
彼は試合の邪魔にならないよう広い闘技場を駆け巡っていた。
「癪だが第一封印を解いただけでは、此奴は倒せぬか?」
「第一封印?」
「ぬおーーーーーーっ!!」
激しい気合いと共に、ギャリング殿下の筋肉量と纏うオーラが更に変わった。
「第二封印を解いてやったぜ!」
「第二? という事は第三或いはそれ以上もあるのですか?」
「知りたいか? 知りたきゃ実力で確かめてみろっ!!」
『ダッ! ブオオオオンッ!!』
ギャリング殿下は質問には答えず、間合いを詰め斬撃を放ってきた。




