第四十話 ニコル vs ギャリング③
ギャリング殿下は質問には答えず、間合いを詰め斬撃を放ってきた。
『ブオオオオオオンッ!!』
『スサッ!』
僕は反射的に斬撃をかわした。
『ザクッザクザクザクザクザクッ!! ドゴーン!! ガラガラガラガラッ!!』
「「「「「「「「「「うわぁぁぁっ!!」」」」」」」」」」
「うぐっ!!」
「ぐえっ!!」
「いてぇっ!!」
「えっ?!」
僕が悲鳴が上がった方へ目を向けると、斬撃は三十メートル離れた闘技場の壁を突き破り観戦席を破壊していた。
怪我人の状況が心配である。
「決闘中よそ見とは余裕だなっ!」
そう言いながら、ギャリング殿下は剣を振り上げた。
「逃げろーっ、またくるぞーーーっ!!」
観戦していた兵士達は、慌てて逃げ出した。
『ブオオオオオオンッ!!』
剣を避ければ、また観戦席に被害が及ぶ。
『ゴギイイイーーーン!!!』
『ズガシャッ!!!』
斬撃を避けようと思えば避けられたが、剣で受け止めた。
その衝撃で足元の石床に大きなクレーターができた。
だがそのお陰で、観戦席への被害は防ぐ事ができた。
『ブオオオオオオンッ!!』
『ゴギイイイーーーン!!!』
『ズガシャッ、ガラガラガラッ!!!』
更に斬撃を受けると、クレーターになった石床が完全に粉砕した。
観戦席への被害は防げるが、これを続けるには限界がある。
『タッ!』
「《上級結界》」
僕は咄嗟にその場を離れ、ギャリング殿下を上級の《結界属性魔法》の中に閉じ込めた。
『ドスッ!』
「痛えっ!」
『ドンッ、ドンッ、ドンッ!』
「くそっ、結界か。だがいつの間に呪文を唱えやがった? まあいい、今は考えるより破壊して出る方が先だっ!」
『ブオオオオオオンッ!!』
『ゴギイイイーーーン!!! ゴギイイイーーーン!!! ゴギイイイーーーン!!! ゴギイイイーーーン!!! ゴギイイイーーーン!!!』
「ちっ、かてーなっ! 仕方ねー、あれを使うか。***** ******* ***** ******* ******* エンチャント《黒炎》!」
『ブオッ!』
ギャリング殿下が呪文を唱えると、アダマンタイト製の剣が黒い炎を纏った。
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
「何だこれからって時に?!」
「ギャリング殿下の斬撃が観戦席に被害を出してますっ!」
『チラッ!』
「ちっ、やっちまったか。決闘が楽しくて気付かなかったぜ!」
「ははっ」
僕は苦笑しつつ、頬を掻いた。
「審ぱーーーんっ!!」
巻き添えを食わぬよう離れてジャッジしていた審判を、ギャリング殿下が大声で呼んだ。
「はいっ!」
「怪我人を治療してこいっ!」
「では《親善試合》は終了ですね?!」
「終了? んなわけねーだろーーーがっ!!」
『ブオオオオオオンッ!!』
『ザクッ! ボボボボボアッ! ・・・・・・・・・・バリバリ、バリーーーン!!!』
ギャリング殿下が剣を振るうと、結界に亀裂が入りそこから黒炎が広がってやがて破壊した。
あの黒炎には、結界を破壊する《特殊効果》があるようだ。
「決着がつくまで《決闘》は続ける。待ってやるから邪魔な観戦者共を闘技場から追い出せっ!!」
『ギンッ!!』
「うくっ! 行ってまいりますっ!」
クラウドさんはギャリング殿下から威圧の眼光を向けられ、よろけつつ観戦席へ向かった。
「ギャリング殿下の威圧、正気を失うところだった。しかしこの《親善試合》、いつから《決闘》と呼ぶようになったんだ?」
そう呟きながら。
◇
「ユッ、ユミナ殿下。なぜ此方にっ?!」
クラウドが破壊された観戦席に到着すると、そこにはユミナがいた。
その隣りには、ミーリアとサーシアもいる。
「怪我人を手当てします!」
飛散した瓦礫を受け、十数人が怪我をしていた。
ユミナとミーリアは《回復属性魔法》が使える。
サーシアは魔法のポーチに《回復薬》を所持していた。
「危険ですから此処は私に任せて避難してくださいっ!」
「試合は中断しているのでしょう? 避難より治療が先です!」
「・・・・・・!」
クラウドは何を優先すべきか思案する。
「では、怪我をなさらぬよう気を付けて治療なさってください!」
「分かりました!」
結果、クラウドは王族の避難より、怪我人の治療を優先した。
クラウドは魔法袋から魔法薬を取り出し、怪我人の下へ駆け寄った。
「さあ、回復薬だ。飲めっ!」
「クラウド隊長」
怪我を負った兵士は顔を顰めた。
「どうした? 早く飲めっ!」
「いり、ません」
「いらない? どうしてだ? 傷が痛むのだろう?」
「それは」
『チラッ!』
兵士はユミナの方を見た。
「まさか貴様、ユミナ殿下に治療してもらいたくてっ!」
「あっ、俺もいらんです!」
「私もです!」
「あの娘カワイイなー!」
「あの女性もかなりの美人だぜ!」
「貴様ら、揃いも揃ってーーーっ!!」
この後クラウドは、無理矢理怪我人に回復薬を飲ませた。
◇
しばらくして、怪我人の治療と観戦者の避難を終えた。
「さあ、ユミナ殿下と御婦人方も避難致しましょう!」
「僕は残るよ。この凄い決闘を最期まで見るんだっ!」
治療している最中、貴賓席から遅れてやって来たレコルが叫ぶ。
その傍らには、エミリアとソフィア婦人もいた。
「君は?」
「レコル! 今、戦っているパパの子供だよっ!」
「そうか。でもな、その決闘を再開するとこの場所は危険になる。怪我だけでは済まされず、死ぬ可能性だってあるんだ。今回は残念だが避難してくれ!」
「イ・ヤ・だっ!」
「おい、我儘を言うなっ!」
「レコル。サーも残るよっ!」
「おねーちゃんっ!」
「なっ! だめだ、だめだっ! 私は君達の安全の為に言っているのだぞっ!」
「私も残ります。私にはこの決闘を《見届ける義務》があります!」
「ユミナ殿下までっ!」
クラウドは困り果てた。
そんな時だった。
「審判っ、おせーぞっ!!」
「ヒィッ、すみませんっ!!」
ギャリングの怒声が上がった。
◇
「ギャリング殿下、そんなに怒らないでください」
「俺様を待たせ過ぎだっ!」
「いっそ、決闘を中止にしませんか? 闘技場もぼろぼろですし」
「腑抜けめっ!! 貴様が中止と抜かしたのだから、この決闘は俺様の勝ちだ。ユミナ殿下は俺様が貰う。それで良いかっ?!」
「それは困ります」
「だったら貴様が俺様の《家臣》になれっ! それで手を打つっ!」
「それは嫌です」
「なにーっ!!」
「あっ、ちょっと観戦席の状況を見てきます!」
僕は逃げるように観戦席へ走った。
◇
僕が観戦席へ行くと、何やらもめていた。
「分かりました。僕が《貴賓席》に強力な《結界》を張ります。皆さんはそこから出ずに観戦してください」
そしてみんなの意見を聞き、こう提案をした。
「それで本当に大丈夫なのか?」
クラウドさんが心配そうに問う。
「ええ、大丈夫です」
「クラウド隊長。ニコル君が『大丈夫』と言うのなら、大丈夫ですよ!」
「私も補償します!」
ソフィア婦人とユミナが後押ししてくれた。
「それならば」
クラウドさんは不安を抱えたまま、了承してくれた。
「あっ、クラウド隊長!」
「何だ?」
「クラウド隊長も、貴賓席にいてください。これ以上我々のそばにいると、それこそクラウド隊長が大怪我をするかもしれません」
「・・・・・・くっ、悔しいが君の言う通りだ。私ではこの審判役、力不足のようだ」
「ご理解、ありがとうございます」
「だが二人に何かあったら、私は直ぐに駆けつけるぞっ!」
「はい、お願いします!」
この後みんなと貴賓席へ行き、周囲に《超級結界》を張った。
◇
「あれは結界か? 俺様を囲ったやつより更に強力なようだ。くそっ、ニコルの奴め。どこまで手の内を隠してやがる? こうなったら《最期の封印》を解くしかねーか!」
《究極結界》を見たギャリングは、そう呟いた。




