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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第十章 エステリア王国騒動編(仮)
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第三十四話 ニコル君ご家族と家族になろう作戦④

豪華な馬車から貴族服を纏った男が降りてきた。


「私はフィリップ・モリス。先触れも無しに唐突の訪問で悪いが、アルシオン王国のギャリング王太子殿下がユミナ殿下に会いに参られた」


その男は正門へ近付くと、そう言いながらアルシオン王家の紋章の入ったミスリル製のプレートを見せた。


「ギャッ、ギャリング王太子殿下ですか? 確かにそちらの紋章はアルシオン王家のもの。ですが申し訳ないのですが、ユミナ殿下はこちらにはおられません」


「居ないだと? なぜ隠す。調べはついているのだぞ!」


ギャリング王太子はなかなか現れないユミナに業を煮やし、部下に探させていた。


「その様に申されましても、おられないものはおられないのです!」


「お主の対応次第で、国の友好にヒビが入るぞ。責任は取れるのか?」


「せっ、責任?・・・・・・」


門兵達はソフィア婦人の命令で、ユミナを訪ねてくる者があれば誰であろうと『不在である』と伝える様指示されていた。



『ガチャッ!』


「えーい、何をグズグズしておる。フィリップ、早くしろっ!」


「ギャリング殿下。門兵が『ユミナ殿下は不在』と言って、門を開けようとしないのです!」


「なぁにぃぃぃっ!」


『ギンッ!!』


「「あわわわっ!」」


馬車からギャリング王太子が現れ、その巨躯と鋭い眼光に門兵達は怯んでしまった。



『ズシッ、ズシッ、ズシッ・・・・・・!』


ギャリング王太子はゆっくり歩を進め、門兵達の前で立ち止まる。


「貴様ら、とっとと門を開けよ。さもなくばぶち破るっ!!」


『ギンッ!!』


「「ひぃっ!」」


『『ドサッ!』』


ギャリング王太子の威圧感のある眼光に耐え切れず、門兵達は腰を抜かしてしまった。



「これしきで腰を抜かすとは情けねー。貴様らそれでも伯爵家の門兵かっ!!」


『『ブルブルブルブルッ!』』


普段は勇敢な彼等だが、ギャリング王太子を前にし恐怖で震えるだけだった。


「フィリップ。お前が門を開けろっ!」


「はいっ!」


フィリップは門兵達を横目に、門を開けに向かう。


「待ってろ、《俺様の嫁》!」


『ニヤリ』と笑いながら、ギャリング王太子は馬車に乗り込んでいった。



正門にふと目をやると、門兵達が地面に腰を下ろしていた。


その目の前には大男がいたが、大男は振り返り馬車へ乗り込もうとしている。


「ソフィア様。門兵達の様子がおかしいです」


「おかしいって、何がおかしいの?」


「門の前で門兵達が倒れてます。あっ、何者かが門を開けようとしてます」


「本当だわ。大変。シグルド、シグルドッ!」


ソフィア様は慌てて、レコルに稽古をつけるシグルドを呼んだ。


「何でしょうか?」


「不審者です。門兵を襲い、正門を開けようとしてます。至急兵を集め、侵入を阻止しなさいっ!」


門兵達は威圧されただけっだったが、ソフィア婦人は襲われたと勘違いした。


「はっ、かしこまりました!」


シグルドはレコルに『すまない』と一言残し、駆けていった。



シグルドの掛け声で、敷地内を見回りする兵士が集まってきた。

その数、シグルドを含め五人。


正門は既に不審者に開けられ、今は腰を下ろしている門兵を抱え端へ寄せているところだ。


「貴様、何をしている。此処がグルジット伯爵の屋敷と知っての所業か?!」


「分かっている。私はフィリップ・モリス。我が主の命令で門を開けさせてもらった」


「我が主?」


「アルシオン王国、ギャリング王太子殿下だ」


「「「「「ギャッ、ギャリング王太子殿下だとっ!!」」」」」


「ユミナ殿下が王城に現れず、ギャリング王太子殿下は大層ご立腹だ。調査したところ此方にいるのが分かった。この門兵の様に隠し立てすると、ギャリング殿下が更にお怒りになる。素直にユミナ殿下の下へ案内していただこうか」


「「「「「・・・・・・!」」」」」


兵士達はどう対処すべきか迷い、固まってしまった。



「分かりました。但し、条件があります!」


とそこへ、兵士達に救いの手が差し伸べられた。


「「「「「ソフィア様っ!」」」」」


「御婦人はグルジット伯爵家の方とお見受けする。してその条件とは?」


「私はユミナの母、ソフィア。そして条件とは、私と後ろの彼を同席させていただきます!」


「えっ?!」


僕は突然の事態に理解が及ばず、小さく声を漏らした。

ちなみに僕は、ソフィア様から同行する様に言われ此処にいる。

エミリアはレコルに預け、僕達家族に与えられた部屋で待つ様に言ってある。



「この男は?」


「私専属の《護衛》ですわ!」


「護衛?」


フィリップ・モリスと名乗った男は、値踏みする様に僕を見る。

『ソフィア様専属の護衛』という事は今初めて聞いたが、ここは話しを合わせるしかないようだ。


「これ以上ギャリング殿下を待たせる訳にはいかない。その条件、飲もう」


「良かった。では案内しますわ」


ソフィア様はそう言って振り返り、屋敷へ歩きはじめた。



「ソフィア様。私が護衛なんて、一体どういうつもりですか?!」


「そうです。護衛が必要なら、私達兵士がいるではないですか!」


僕と兵士シグルドがソフィア様に小声で詰め寄る。


「ニコル君。《ユミナの危機》なのです。もしもの時ユミナを救えるのは、あなただけだけです。シグルドも分かってください」


「私が?」


「ニコル殿が?」


この後何が起こるか知る由も無かったが、『ユミナの危機』と聞いて断れる筈も無かった。


「・・・・・・分かりました。お供します」


僕は了承し、この後ギャリング王太子殿下と対面することとなった。

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