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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第十章 エステリア王国騒動編(仮)
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第三十三話 ニコル君ご家族と家族になろう作戦③

エミリアを怖がらせ涙目にしてしまった僕は、ユミナからこっぴどく怒られた。

今も背筋を伸ばし、きょうつけの姿勢で立たされている。


そんな僕をよそに、原因の発端となったエミリアは満面の笑みを浮かべていた。


「やわらかーい。ぽよぽよー。えへへへー!」


羨ましい。いっ、いや怪しからん事に、ユミナのたわわな胸を堪能しているのだ。


「エミリアちゃん、満足した?」


「もうちょっとー!」


エミリアは、なかなかユミナの胸から離れようとしない。



「エミリアッ、いい加減にしなさいっ!! すぐに止めないなら、後でお仕置きするわよっ!!」


調子に乗るエミリアに、遂にミーリアのカミナリが落ちた。


「ママのお仕置き、イヤッ!!」


ミーリアのお仕置き=《お尻ぺんぺんの刑》は、余程嫌だったらしい。

エミリアはユミナの胸から、直ぐに手を引っ込めた。


「ユミナさん。エミリアの我儘に付き合わせて、申し訳ございませんでした」


「いえ、いいんですよ。気になさらないで。エミリアちゃん可愛いから、私も癒されました」


こうして、エミリアの幸福なひとときは終了した。



身分不相応の豪華な部屋に難色を示していたが、結局ソフィア婦人のゴリ押しで使う羽目になってしまった。


高級な紅茶とケーキをいただき一息ついた後、ミーリアとサーシアはユミナと共に厨房へ向かった。

残された僕とレコルとエミリアは、待つ間何をして過ごすか話していた。


「ねえ、レコル君はニコル君のお仕事継ぐの?」


すると、ソフィア婦人が割って入ってきた。


「まあね」


「では我が家に行商に来てくれないかしら。ニコル君ったら来てくれないんですもの」


「仕事は継ぐけど、行商はまだ先かな」


「どうして?」


「もうすぐフロリダ街のダンジョンに入れる十三歳になるんだ。ダンジョンに行って、父さんみたいに強くなりたいんだ!」


「それは凄いわ。ニコル君みたいな《英雄》になれるといいわね」


「英雄?」


「そうよ。だってニコル君は」


「ソフィア様っ!」


「あら、言ってはいけなかったかしら?」


『コクッ!』


僕は黙って頷いた。



「ねえ、父さんって英雄なの?」


「さあな」


「でも今、ソフィア様が」


「ソフィア様の過大評価だ」


「そうなんだ」


興味が薄かったのか、レコルはそれ以上聞いてこなかった。

《のんびり普通の生活を送りたい》ので、ヤマトの正体はなるべく伏せておきたい。



「レコル君」


「なに?」


「ダンジョンに行くなら、武器と防具と付与の付いたアクセサリをプレゼントしてあげるわ!」


「いらない」


「どうして?」


「父さんが作ってくれるから」


「そう言えばニコル君、武器や防具作りも相当な腕前だったわね。それなら他に欲しい物はある?」


「うーん、そうだなー・・・・・・、あっ、そうだ!」


「なあに?」


「剣の稽古がしたい!」


「剣のお稽古?」


「うん。ここの兵隊さんに、僕の実力が通用するか確かめたいんだ!」


「良いわよ。ニコル君、良いわよね?」


「そうですね、良いんじゃないですか」


この後ソフィア様に連れられ、僕達は兵士がいる屋敷の外に向かった。



玄関先に出ると、既に一人の兵士が待機していた。

執事が先回りして、段取りをつけてくれた様だ。


「ソフィア様、お待ちしておりました」


「シグルド、こちらのレコル君の剣のお相手を頼みましたよ」


「畏まりました。レコル殿、木剣で良かろうか?」


「うん!」


「ではこちらへ」


二人は屋敷横の開けた場所に移動し、程なくして剣の打ち合いを始めた。


シグルドと呼ばれた兵士は僕と同年代で、顔は何度か見掛けている。

素早い動きのレコルの剣を、難なく捌いている。



「よーし、こうなったら本気出すぞー!」


レコルは《身体強化》スキルを発動した。


『シュバッ!!』


「なっ!」


今まで以上の鋭い踏み込みに、シグルドは驚く。


『カーーーン!!』


「くっ、これが子供の打ち込みだとっ!」


シグルドは咄嗟に受けるが、その剣の重さに驚く。


「まだまだいくよー!」


『カンッ、カンッ、カンッ、カンッ、カンッ、カンッ!!』


そしてレコルの連続攻撃の速さと多彩さに、シグルドから今までの余裕の表情は完全に消えた。


「ふんぬっ!」


『カーーーン!』


「くーーーっ、いったーーーっ!」


シグルドの気合を込めた一振りで、レコルは一気に後退させられた。

しかも手が痺れた様だ。


レコルの実力は子供の域を大きく越えている。

しかし《身体強化》スキルを使ってなお、レベルの高い実力者には及ばなかった。



「実力を隠していたとはな。俺も少し本気になってしまった。しかし大したものだ。グルジット家の兵士にならないか?」


「ならないよ。僕は商人になるんだ。()()()()()()()()()()()()!」


「ははっ、そうか。だが気が変わったらいつでも言ってくれ。俺から伯爵様に推薦してやろう!」


「気が変わったらね。それじゃあ、次行くよ!」


「ああ、来い!」


力の籠もった二人の打ち合いは、この後も続いた。


またその頃、グルジット伯爵邸の正門の前に一台の豪華な馬車が停車した。

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