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平民侍女は引きこもり令嬢を更生させたい  作者: いとまる。
ラズティア王国編
33/39

嫌な作業ですよ




素早く距離を詰め、隙だらけだったゴブリン1体の首を切り落とす。


───まずは1体目。


こちらの姿を認めた残りの2体は、同胞の死に戸惑うことなくすぐに襲い掛かってきた。

ゴブリンの体長は100cmにも満たないほど小柄で、その動きはなかなか素早いが所詮それだけである。

なんの策もなく突進してきたゴブリンの胸を剣で貫き、2体目の命も難なく奪う。


最後に残ったゴブリンは勝ち目が無いと判断したのか襲い掛かるのをやめ、こちらに背中を向けて森の奥へと走り出していた。

それを見て2体目の個体が落としたナイフを拾い、その後頭部に投擲するとゴブリンの体は音を立てて地面に倒れた。





「ゴブリンとの戦闘はこんな感じです。分かりましたか?」

「…いやいや、圧倒的過ぎて全く分からなかったわよ。」


私が戦いの見本を見せるのは失敗だったか…。

呆れた表情を浮かべるアリア様の視線に思わず目を逸らす。


「それにしても、よくあんなナイフで倒せたわね。」


少し離れた場所で倒れているゴブリンを見てアリア様が呟いた。

身体強化を施した筋力で投擲すれば、石でもそれなりの殺傷能力を持つのだ。ボロボロのナイフであってもこのくらいは造作もない。

だが、魔法を使えない事がコンプレックスのアリア様にそれを話すのはなんとなく気が引ける。


「あはは…。それではゴブリンの討伐証明を集めましょうか。」


話を逸らして懐から短剣を取り出す。

そして、ゴブリンの死体に近付いて頭を掴むと、その右耳を削ぎ落とした。

ドロっとした赤黒い血が流れ、それを見たアリア様が顔を(しかめ)めているのが見えた。

角や牙ならまだしも、これには気分が悪くなってしまうのも仕方ないだろう。

私は手早く3体分の右耳と魔石を回収し、それぞれ革袋に詰め込んだ。


「…醜悪な外見って言っていたけれど、まさにその通りね。本当なら近づきたくもないくらいだわ。」

「それなら今回の依頼は私が終わらせますので、アリア様は他の魔物の討伐依頼を受けますか?」

「セレナ。あまり甘やかそうとしないでちょうだい。やると決めたからにはやるわ。」


良かれと思って提案してみたが、すぐに断られてしまった。

そんなに無理をしなくてもいいと思うのだが。

ゴブリンの緑色の皮膚は表面がボコボコしていて、大きな鼻と裂けているような口をしており、正直私でも気持ち悪く思ってしまう。

さらに、トドメには討伐証明である右耳の回収ときている。

革袋にゴブリンの耳が溜まっていく様子は、正直かなりグロテスクだ。


「人型の魔物と戦うのは初めてだけれど、あなたみたいにできるかしら…。」

「大丈夫ですよ。なにがあってもアリア様は私が守ります。不安に思うことは何もありませんよ。」



気丈に振る舞ってはいるが、その声は不安の色を隠せてはいない。

先日倒したホーンラビットよりもゴブリンは魔物らしく凶悪な見た目だ。怖がってしまうのは無理もない。

その頭を撫でようと手を伸ばすが、アリア様はサッと背中を向けて歩き出してしまった。


「別に不安がってなどいないわ。…ほら、さっさと行くわよ。」

「……本当、強情なんですから。」


行き場をなくして宙をさまよっていた腕を下ろし、急いでその後を追いかける。

そうして、本日最初の討伐を終えた私達は次の獲物となるゴブリンを探して、再び森を歩き始めたのだった。


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