432 この国ではファーストネームが後!
お家に帰ってきました。ただいま。
「ちょっとあなた! 何してるんですか!?」
はっ、と意識を取り戻す。声のした方に振り返った。
そこに立っていたのは、高校生くらいの男子。
「この山に入っちゃいけない。――狐に呪われるぞ」
男子は真面目な顔で言う。
拍子抜けした。リゲルはそんなもの信じてない。神も悪魔もくそくらえだ。
しかし、そんな感情は置いておく。
「……狐?」そう聞き返した。
「この村の言い伝えっス。ま、子どもを山に近づけないための嘘だろうけど。ただ、この山で、大昔に事件が起きたのは事実らしいっス」
彼は少し首を傾げた。
リゲルも同じように首をかしげて見せる。
相手の動作を真似した方が好感が得やすいと昔優正に教わってから、すっかり癖づいてしまった。
「奈良時代から平安時代のどこか、この山で、神隠しが起きた。被害者の若い娘さんらには大した共通点がないことが唯一の共通点だった。多少被ることはあっても、必ずどこかに被らないところがある。何人も消えた」
怪談話をするかのように続ける。
へー、と呟いた。
「……ってちょっと待ってください? だったら俺らは入っても問題ないんじゃ……」
「それはそうなんですけど……でも、入っちゃいけないって言われてるっスね……」
また首をかしげる男子高校生。曖昧さに少し腹が立ったが、昔からの言い伝えなんてこんなものだろうと感情を抑える。
「――狐に呪われる。遊び半分で山に入ったやつらは一貫してこう言う。その現象が発症したのは10年前から。本当になんなんっスかねえ。消えたり、出てきたり……」
この山は、鬼天ヶ岳と言うらしい。
鬼天々岳……狐は入って無いじゃないか。
「じゃ、入らないでおきますか……? って言っても、もう入った後なんですけどね……」
苦笑いを作る。
男子高校生も苦い笑いを浮かべた。
「そうなんスよね……」
あ、と思い出したように彼は少し話を変えた。
「俺は榊原蒼っス。えと……家出して、ここに……。アンタは?」
「アオイ?」
「え? そうっすよ?」
蒼は首を傾げた。
リゲルが名前を確認したのにもちゃんと理由がある。
リゲルが生まれたのは異世界だ。その世界ではアメリカなどと同じように、ファーストネームが先に来る。
ただ日本は順番が違うため、偶に間違える。だから先に確認しておく。
よし、ファーストネームはアオイ。アオイ・サカキバラ……。
「……俺は、春日星輝」
※偽名
「春日星輝さん! カッコいい名前っすね!」
目を輝かせる蒼を前に、笑みを作った。
ナ「狐に呪われる……って、キキ?」
ホシキ・カスゥガァ⤴!!(こいつの名前は狐塚季輝)
白「まさか自分を物語に登場させたかった……とかないよね?」
え、無いよ? 同じ狐だけど私のことじゃないし。まあいいじゃん。この話はよそうよ。ナレちゃんにネタバレされたらたまったもんじゃない。
ナ「それすらも相当なネタバレでは?」
”ナレーターさん”ってさ、”サン・ナレーター”?
ナ「何を言ってる?」
作「何をゆうちょる?」(アニメキャラのマネ)
作者は、シャ・サクで、白銀は”ギン・ハク”だね。
白「なんか嫌だなぁ」
作「私は”シャ・サク”も嫌いじゃないけどね。カッコいいし」
ナ「じゃあシャに改名する?」
作「シャって呼ばれるのはいやかも……」




