↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喫茶で小話集  作者: 愛組
PR
30/31

小話8 小さなお客様3

「おっと!」


 飛び込んで来たネコを受け止め、抱えるマスター。対してネコは、何事も無かったようにマスターに頭を擦り寄せた。そして、小さなその身から「グゥッ」とお腹の虫が鳴る。


「……おなか、空いてる?」

『ニャオ?』


 不思議そうに小首を傾げる、ネコ。マスターは苦笑をこぼし、一度テーブルの上に降ろす。無抵抗のままテーブルに足をつけたネコは、マスターの背中を眺めながら、その場でうずくまる様にして座り込む。


 やがて底が深めの皿を手に、マスターが戻って来る。その皿へ視線を向けたネコは、皿の動きに合わせて頭を動かす。皿はネコの前にコトリと置かれ、追っていた視線も下に向く。僅かに立ち上る湯気を顔で受け、鼻先を皿に満たされた液体に近づける。


「ぬるめに温めたミルク。どうぞ」

『……!』


 危険は無いと判断したのか、ネコは立ち上がり恐る恐るミルクを舐めた。


『!』


 しばらく確かめる様に舐めていたネコは、美味しいモノと判断したらしい。ゴクゴク飲み進める。


 無我夢中に飲むネコの頭を、そっと撫でた。それでも一心不乱に飲む姿に、微笑ましさとどこさ寂しさを滲ませた表情で眺めるマスター。


「こんな所に迷い込むなんて。でもキミはもう、帰らないと」

『……にゃあ?』


 ミルクから頭を離し、マスターの顔を見上げるネコ。ネコはマスターが何を言ってるのかを理解できなかったが、返事代わりに鳴く。


 頭を撫でていた手で、クビ下を軽くかいてやる。すると気持ちがいいのか目を細め、くるりと横になりお腹を見せた。


「……ここは、"キミのいた世界じゃない"。だから、"生きていけない"んだよ」


 マスターの呟きと同時、ネコの身体が銀色の光に包まれる。


『ニャー! ニャー!』

「ごめん、お別れみたい……もし"向こう"であの人に会ったら、よろしくね」

『ニャー!?』


 光はどんどん強まっていき、やがて宙に溶け込んでしまう。そこにネコの小さな姿は、無い。


 気づけば雨音が、消えている。マスターは店を出て階段を下ると、空を見上げた。雨によって冷えた風が吹き、雲間から淡く優しい光を放つ月が顔を出す。




「……可愛い小さなお客様。ご来店、ありがとうございました」

次回は、月曜19時更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。