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喫茶で小話集  作者: 愛組
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29/31

小話8 小さなお客様2

すみません。遅くなりました。

 店内には、人の気配が無かった。明かりがついていても、どこか暗い印象だ。扉の隙間からは、漏れ聞こえる激しい雨音。ただそれだけ。


「……」


 右に左に頭を振りながら、無人の店内を歩く。


 カチャっ。


「!」


 耳に届いたのは、物が擦れる音。一緒に、雨とは違う大量の水が聞こえて来た。音のした方へ向かえば、だんだんと音が大きくなっていく。


 すると、テーブルの向こうに、エプロンを身につけたマスターの姿が見えた。影は勢いをつけてカウンター席に座ると、その小さい口を開ける。


『ニャオ〜』

「!」


 小さなその声に、気づいたらしい。マスターは手を止めて、水道の蛇口を締めた。そしてカウンター席の上にちょこんと座った。影の存在に目を向ける。


「……いつの間にネコが?」


『ニャーっ!』


 影……黒い毛並みのネコは、一声なく。体は雨に濡れてペッタリとしており、いくらか痩せているように見えた。放っておくわけにもいかず、マスターは一旦その場を離れる。しばらくして、清潔感な白いタオルを手に戻り、ネコをふきはじめた。


『ニャ〜〜』


 ネコは気持ちよさ気に鳴き、されるがまま。ぎゅっと目を閉じて、自分の前足を頭を撫でるように擦る。


「はい、終わり」


 ひと通り拭き終えたマスターは、タオルを回収しようとする。その時。


『ニャニャ〜』


 突然、ネコがジャンプして来たのだ。

次回は金曜19時更新予定です。

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