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小話8 小さなお客様
本日、二話目です。
とある商店街の一角に、その店はあった。
大きなビルに挟まれた、細い階段の先。「営業中」と書かれた縦長のプレートが、ドアにかけられている。
ここは知る人ぞ知る、噂の喫茶店。老若男女関係なく、多くの人々が訪れる場所。
晴れていた空は次第に雲で覆われ、ポツポツと雨が降り出した。雨脚はどんどん強くなり、やがて地面を叩きつける様な土砂降りへと変わってゆく。慌てて折り畳み傘を開く者や、雨の中、カバンを雨除けにして家路に急ぐ人の姿も見受けれた。
街の人影はまばらになり、道行く人々も減っていく。
そんな中、ずぶ濡れになって歩く影が一つ。体から滴る水滴がぼたぼたと連なって地面に吸い込まれる。水分を吸って重たくなった毛が、張り付いて痩せっぽっちに見えてしまう。
それでもただゆっくりと歩いていた影は、やがて一風変わった入り口を見つける。階段を登った先、半開きの扉。中の様子は見えないが、どことなく美味しそうな香りが漂う。
影は誘われるようにそちらへ向かい、階段を上って扉の前へ。体についた水滴を軽く払い、一度見上げる。
「……」
そして、音を立てない様にしながら中へ入っていくのだった。
次回は、水曜19時更新予定です。




