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喫茶で小話集  作者: 愛組
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23/31

小話6 ウチには、分かる4

 少女の中で、確信を得たのかマスターに聞かせるかの様に大きめの声で話し出す。否、語り出す。


「実はウチな、夢みたいな世界で友達が出来たんや」


 当時の思い出に馳せる様に、遠くを見つめる少女。


「その子は、親が薬を生業としている家の娘やった。おかげで将来は、家業を継ごうと頑張ってたんや。けど」


 少女は、厳しい面持ちで目をつむった。


「新しい製法が発展して、廃業寸前に追い込まれてしもうた」


 席を立ち上がり、拳を握り込む少女。段々と声に力が入って、まばらにいた客達の目が少しずつ引かれ始めていく。


「親も知り合いも、既に諦めの境地。もはや旧時代の自分らは消え、新技術が台頭する世になるだろうと誰もが考えたんや」


 少女の話は、現代社会でもある「技術の世代交代」と一緒だ。新しいものの方が、勝手がよく使いやすいとはよくある話。なのに、真剣な表情で話す彼女を見ていると、さも壮大な話に感じてしまう。


「けどな、ウチの友達は諦めへんかった。大の大人がガン首揃えて、無理だと言う中、少女はそれでも努力を続けた」


 そして。


「ウチは、そんな彼女に勇気づけられた。そのお礼に、ウチの知っとる言葉を教えたん……やが」


 テーブルをバンバンと叩く。




「その先でどうなったか、ウチは知らんのやっ! あの夢世界に行けへん!なあ、どうしたら行けるんか? ウチはもう一度、彼女に会いたい」


『……え?』




 何とはなしに聞いていた客達が、思わず驚きを漏らす。


「……」


 マスターは変わらず、無言の笑顔。


「そんな殺生なあ! ウチ、気になりすぎて寝不足になるで?」

「……」

「無言は、やめえぇ!」


 サラリと脅迫しても、無敵の笑顔でスルーし続けるマスター。少女は奥歯を噛み締め、マスターを指差した。



「ここは、夢世界と同じ"気配"がしとった! ウチには、分かる。マスターが最後の砦なんやとっ!」


 キッと睨みつける、少女。



「ウチは、絶対諦めへん! 聞き出すまで、意地でも店に入り浸ったるからな!」



「……いつでも、お待ちしておりますよ」



 ーこうして、何の因果か一風変わった客がくる様になったのだった。

次回は、金曜の19時更新です。

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