小話6 ウチには、分かる3
本日二話目!
思いの丈をマスターにぶつける少女だったが、結局反応が無く、テーブルに顔を突っ伏す。
「もう、なんやねん。せっかく来たのに、収穫無しかっ……ちゃうな。収穫はあった。せやけど、思ってた展開と違う過ぎるやろ! ウチの緊張、返せ!」
言いたい事を吐き出し、いくらか気を落ち着けた少女。周囲を見る余裕が生まれ、頬杖をつきながら観察する。
カウンター席の向かいに、ずらりと並ぶコーヒー豆のケース。ディスプレイ用なのか、缶ではなく円筒の透明なケースにみっちり入っていた。豆の種類を眺めた所で、知識の無いらしい少女には何がなんだか分からない。
しかし、何気なく見ていた先で一風変わった豆に気づく。
「! こ、この豆はっ」
「お待たせしました。"本日のおすすめケーキセット"です」
「!」
そこへ、タイミング良く注文の品が出された。
「早いやないか!」
「スムーズな提供が、この店のウリです」
「早過ぎるわっ! "少々お待ちください"とか、言っとったやろ?」
「……」
「その無言の笑み、腹立つわあ」
反射的に文句をぶつける少女。気を取り直して、香り立つコーヒーとケーキに視線を落とす。
「……まあ、ええわ。今はとりあえず、味を」
フォークを手に取り、ケーキを一口に切って口へ運ぶ。入れた瞬間、少女は目を見開く。
「!」
それからバクバクと勢いよく食べ始め、コーヒーは最後、流し込む様に飲み干す。
「……やはり、ウチの目ぇに間違いない。あの"世界で食べた味"や」
少女の中に、確信が生まれた。口を袖で拭い、マスターの背に問う。
「聞きたい事がぎょーさんある。付き合うてもらうで。マスター」
次回は、水曜の19時更新!




