小話5 暇つぶし3
金髪の青年の視線の先には、女性と男のカップルが席に座っていた。どうやら女性の方は、青年の知り合いらしい。
話を盗み聞きしていた所、青年は女性と今日会う約束をした。だが、少し前にキャンセルされたという。それで暇になった彼は、この店に立ち寄った。と思ったら、問題の女性が知らない男と一緒にいる。
たまらず、怒鳴ったという経緯だ。
「仕方ないの! 私には、ちょっと断りづらくて」
「仕方ない、って? 俺との約束を破ってまで、そこの奴に会いたがったのか?」
「だからっ」
言い合いは、解決しないままヒートアップしていく。さすがの周囲の客たちも、会話を忘れて沈黙を貫く。
いよいよ空気が悪くなり始めた、その時。
「……呆れて、何も言えんな。お前さんたち」
突然、着流しの男が言葉を挟んだ。他人からの横槍に、気分を害したらしい。金髪の青年が睨みつける様に、男を見た。
「……おい、じいさん。今、取り込み中なんだ。無関係なやつは、引っ込んでろよ」
「まあ、確かに。色恋沙汰に、他人がとやかく言うものではないな」
着流しの男はそう返して、彼らのいるボックス席に歩みを進めていく。そして金髪の青年の前にまでやって来ると、彼と真正面から相対した。
「わかってんなら、あっち行ってろ」
「そうもいかん。お前さん、先程言っていただろう?」
「はあ? 何を?」
「"無関係なやつは、引っ込んでろ"と」
「ああ」
金髪の青年の返しに、着流しの男は思わずニヤリと笑む。
そんな着流しの男と金髪の青年の姿を、困った顔で見比べる男女二人。
そして、着流しの男は告げる。
「では聞こう。"可愛い孫娘の祖父"は、無関係な奴かな?」
「…………はっ!?」
理解に及んだらしい。
金髪の青年は、怒りを忘れて、間抜け顔をさらすのだった。
次回は、月曜日の19時更新です。




