小話5 暇つぶし
とある商店街の一角に、その店はあった。
大きなビルに挟まれた、細い階段の先。「営業中」と書かれた縦長のプレートが、ドアにかけられている。
ここは知る人ぞ知る、噂の喫茶店。老若男女関係なく、多くの人々が訪れる場所。
「はあ? どういう事だよっ」
まだ陽の高い、昼の街中。十代後半といったところの青年が、声を荒げていた。彼の手にはスマホがあり、それをギリギリと握りしめている。近くを歩いていた人々は、そんな姿を見て「関わりたくない」と距離を置く。
車のエンジン音にも負けない大声は、やがて舌打ちと共に通話を切った。
「どうすっかなあ、予定が狂っちまった」
金色の髪をガシガシとかいて、眉を寄せる。どうやら予定が無くなり、暇になってしまったらしい。不貞腐れた様な顔で歩道を進む。
「……とくに、面白ェもんも無ぇしな。何か……ん?」
金髪の青年は、グチをこぼしている途中で一風変わった人影に気づく。
視線の先にいたのは、着流しの男。和服自体、普段着にする日本人なんて珍しい。
「なんだ、アイツ」
興味を惹かれて着流しの男を追っていくと、ビルの隙間に消えていくの目撃する。青年はその場に向かい、隙間にある階段を発見。
「おいおい。こんな所に、店なんてあったのかよ!」
男は好奇心が赴くまま、店の扉を開けるのだった。
次回は、水曜日の19時更新です。




