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精霊召喚の娘  作者: 鰀目唯香
4 第二王子の聖廟探訪
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10 聖廟に着いたけど

 王子と逸れてから早くも八日が経過した。

 アリソン一行には、第一魔法師団七名とヤマダサン、そして新しい使い魔が増えていた。アリソンが使い魔契約が成功して以降、魔獣に遭遇する事もなく樹海を進んでいる。ヤマダサン曰く、使い魔には主人が名付けてやる事により、本来の力を発揮できるという。

 アリソンは一日悩んだ結果、不吉の象徴と言われる謎の多い魔獣だった面影などすっかり失くし仔犬にしか見えない使い魔に『ササキサン』と名付けた。


 どうやら、ササキサンは生まれて間もないらしい。ヤマダサンの見立てでは、二十歳くらいだという事なので、子供と言いながらもアリソンよりは年上のようではある。


 ヤマダサン……幾つなんだろう?

 昔は教えてくれなかったものね……


「ササキサン……不思議な名前ですね」


 ジェフリーにそう言われ、昔に思いを馳せていたアリソンは曖昧に笑って誤魔化した。ササキサンは、母親ディアナ自作の紙芝居に出て来た犬の名前だ。ササキサンはヤマダサンの尻尾で遊んでは噛み加減を間違えて、猫パンチの餌食になっている。それでも懲りずに繰り返すササキサンは、まだまだお子様なのだろう。


「明日には聖廟に到着できそうだが、第二王子が近くを通った形跡は()()ないな」


「生存しているのは間違いないのだが……」


 オスカーが、苦い顔をしてそう言い、ジェフリーがシロオリの花を見た。

 ジェフリー曰く、昨今は改良が加えられて、花の咲き誇り具合で健康状態まで解るそうだ。綺麗な白い花が咲いているので、きっと元気にしているのだろう。

 まさか王子に魔獣の仲間が増えている事など知りもしないアリソン一行だ……

 

 オスカーに言われたからと言う訳ではないが、アリソンはヴィンセント王子を召喚する事を考え始めていた。人を対象にした召喚術の事例は聞いたことが無いが、シャロンは父親であるヴァレンタイン伯爵が王城に召喚しているので、不可能な話ではない……筈だ。


 問題は、解読に時間かかりそうなのよね……。 


 このまま見つからないままなら、試すべきだろうかと、荷物の中からヴァレンタイン伯爵の召喚魔法陣を取り出しては首を捻る。伯爵の召喚術式は、少々変わっていて呼び出す前に見慣れない工程が存在する。見慣れないから読み解けていないのだが……そこさえ解れば、第二王子も召喚できるのではないかと言うのがアリソンの目論見だ。


「聖廟に到着したら、探索メンバーと聖廟待機メンバーに分けて行動したい」


 アリソンが、召喚術式に思いを馳せている間に、ジェフリーが捜索について提案をして、魔法師団員達はオスカーを除いて深妙な表情で頷いた。それを確認したジェフリーは、今度はヤマダサンに言った。


「ヤマダサン……王子の捜索にブレイク公爵夫人の知恵を借りる事は可能だろうか?」


「ディアナのところへ行くのか? 良いゾ」


 ヤマダサンは耳をぴくつかせながら、あっさり了承した。アリソンはヤマダサンが『豆大福作ってもらうかナ』という一言が聞こえ、少しだけ母に同情の念を抱いたのだった。




 そんなやり取りをした日の夕方に、一行はとうとう聖廟まで辿り着いてしまった。

 第二王子は見当たらない。


「着いちゃいましたね」


「捜索は、明日からだな」


「先ずは野営の準備ですね」


 聖廟を前にしては皆、思い思いに言いたいことを言い、テキパキと野営準備に取り掛かる。アリソンは、そろそろメロの種を増やそうか袋に入る種の残り具合を確認していた。最近では、ササキサンも増えて、消費が激しい。


 アリソンは、種を一粒だけ手に取ると、野営地から少しだけ離れた所で増産させようと移動する。そんな主人の後ろをササキサンがとてとてと歩く。


「ササキサン、花が咲くまでは消しちゃダメだからね。」


 ササキサンは驚くと闇の渦を出現させて対象を消してしまう習性があるようで、師団員が危うく闇に呑まれそうになる笑えないハプニングが、つい昨日発生したところなのだ。アリソンは眉根を寄せてササキサンに注意するのだが、仔犬のように首を傾げて上目遣いをしているだけで、果たして理解しているのかどうか謎である。


 わかっているのかな……?


 まあメロの種はまだあるから、再挑戦すれば良いかと思い直したアリソンは、メロの種を地面に落として、その場を離れた。ササキサンは地面に転がる種に興味を持ったらしく、鼻を近づけた。


「ササキサン、ダメだよ。こっちに……」


 そう言い終わる前に、メロの種から芽が出てササキサンは仔犬らしいバックステップを踏んで転けた。


 あー。


 ササキサンは、一回転して何をしていたか忘れたのか、アリソンに向かい駆け寄り、彼女の足に纏わりついた。


 ちょっと残念なコなのかも……


 アリソンはちょっぴり眉間に皺を寄せつつササキサンを抱き上げて、メロの花が咲くのを待っていた。メロの花は自身の背丈が攻撃射程範囲だ。数回の経験で、絶妙な距離の取り方を学習したアリソンである。蕾が出来た頃に、アリソンは転移魔術を誰かが行使したのに気が付いた。


 何だろう……?


 アリソンは野営地の方を振り返るが、そこには異変は感じられない。首を捻りつつ、再びメロの花を向く。そこには黄色い花が咲いている。あとは光魔法で萎れるのを待てばメロの種大量入手である。


 ん……?


 光魔法を放出すると、後方の野営地が賑やかになり、振り返ったアリソンは固まってしまった。


 え……ち、父上??


 野営地の先、聖廟前の上空からブレイク公爵がゆっくり降下して、着地したのだった。


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