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精霊召喚の娘  作者: 鰀目唯香
4 第二王子の聖廟探訪
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2 ぶちかます

 それは街道と呼べるものも無くなり、樹海を進み始めた日の夕刻に起きた。

 アリソンは、何の気無しに窓の外を眺めていた。通常、屈んで覗き込まなければ外を確認できない位置にある窓だが、小柄な彼女には絶妙に良い角度で外を流れる景色が見えるのだ。



 ん……赤い光?


 偶然見えた光は線になったかと思いきや、消える事もなく馬車の横を同じ速さで移動しているように見える。そして、赤い光の中に見えたのが虹彩だと理解した瞬間、馬車は横からの衝撃を受けて大きく揺れた。


 にょぉぉぉぉぉぉっ!


 何が起こったかわかっていないアリソンだが、あまりの衝撃に声を発する事を忘れて馬車内でボールのように転がる……でもなかった。


「アリソン様、ご無事ですか?」


 クリスが風の結界を展開させたのだろう。馬車は揺れから解放され緩やかに停止した。


「だ、だいじょびでふ」


 噛み噛みである。クリスはアリソンのフードを捲り、頭や顔をぺたぺたと触ると『宜しい』と言って、頷いた。


「魔獣か……」


 ヴィンセントは小さめの窓から外を覗き外に出ようと扉の錠を開けた。外では怒号と悲鳴が入り混じり、魔法師団員達が文字通りパニックに陥っていた。ヴィンセントは、馬車の外に出て、パニックの中心方向に進んでいく。


「隠れていて下さい」


 ジェフリーがアリソンを見てそう言い、馬車の外に出てしまったヴィンセントの方へと行ってしまう。丁寧なのか律儀なのか、開いていた馬車の扉をきちんと閉めた。


「クリス……何が起きているか解る?」


「シャンゴに襲われたようですね」


 クリスは魔獣の名前を口にした。赤い瞳に白い体毛、大きい個体はアリソン達の乗る馬車ほどあると聞く。魔力もそこそこあり、稲妻を放つ事があるとか……アリソンは知っている知識を引っ張り出しながら、シャンゴの影を小さな窓から覗くのだがよく見えない。


「王子達を守らないと……」


 アリソンはへっぴり腰で手を伸ばし、再び扉を開き辺りを見回してヴィンセントとジェフリーを探した。クリスがアリソンより先に馬車から降りて『お手を』と言いながらアリソンに向かい手を差し出した。


「あ、ありがとう」


 アリソンがクリスの手を握ると、彼女アリソンの足元から風が噴き上がるようにして地上に運ばれゆっくりと地上に降りた。クリスが風を操ったようだ。そして、目の前では魔法師団員達が統制を失い逃げまどっている。


「彼ら、邪魔ですね」

 

 クリスがそう言いながら、アリソンの手を取り風の結界を展開させて上空に飛ぶと、魔獣シャンゴの暴れるちょうど上辺りまで結界を張りながら移動した。近くにはヴィンセント王子達の姿も見える。


「アリソン様、シャンゴは水が嫌いです。では、よろしくお願いします」


 へ……?


 クリスはそう言うや、アリソンの手を取りそのまま下に移動し、風の結界ごと魔獣にぶつかった。


「ギュワァァァァ!!」


 シャンゴが咆哮をあげて、半回転するとクリスとアリソンに狙いを定めた。クリスの結界は先程の衝撃で消えてしまい、護る壁は何もない。シャンゴの目が瞬いたと思うと、ブチブチと音がして、白い獣の周辺で光が爆ぜた。


「にょぉぉぉぉぉっ!」


 アリソンは、謎の叫びをあげながら威力大で水を噴出させた。そして、それはシャンゴの近くにいた護衛騎士ジェフリーを問答無用で飛ばした。


 綺麗な放物線を描き、音もなく護衛騎士が樹海の上を飛んで行く。水滴が夕日を浴びているのか、虹まで見える。見ようによっては綺麗だ。


 のをををををををををんっ!


 またもや、やってもうたぞ案件である。アリソンは血の気が引いていく。

 そんな事を気にしてくれる魔獣ではなく、アリソン達に向かい猛スピードで突進して来た。アリソンは威力大の水を再び噴出させたが、魔獣は跳躍してそれを躱してしまう。


「うぉっ!」


 標的を見失った水流の先には第二王子がいた。

 そして、護衛騎士同様、王子もまた綺麗な放物線を描いて樹海の上を飛んで行ってしまった。


「ああああぁクリスぅ、王子を追いかけて!!」


 隣の精霊にそう言いながら、シャンゴに向けて再び水魔法を行使しようとした瞬間、クリスはアリソンの腰に腕をかけて『承知しました』と言い、風を身に纏うと猛スピードで王子の飛んで行った方向に飛んでいった。


「み゛ぃぃぃぃい?!」


 アリソンは涙を撒き散らしながら王子の方へと飛んで行き、後方には魔獣と統制を失った第二魔法師団員達が残されたのだった。


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