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※不備を見つけた際は誤字報告受付まで。
適当で良いよ、多分ね。
大空を羽ばたく小鳥たちは、その命を謳歌している。この翼を奪うものなど、この世に存在しないとでも言うかの様にだ。
それを眺める者がいた。その者は隣の芝生以上に青いと感じるだろう。
そして、正面から妬みを叫ぶ者もいた。その者は抵抗しようとするだろう。
「んー、もうつかれた!」
「おやおや、嬢ちゃん。もうお終いなのかい?」
「だって、わからないのいっぱいなんだもん」
わからないところをみせる。
こっちと、これと、ここも。あと、あっちも!
「ごめんよう、嬢ちゃん。そんなに早く見せられたら、読めないわい」
「んん . . . 」
もういいや。おしまい!
きょうはちがうことする!
「おじい、またね!」
「おやおや、嬢ちゃん。このおじいを一人にするのかい?」
でも、おじいげんきだからひとりでへーきじゃん。
おそとまぶしいし、おへやにかえる!
「まてまて、嬢ちゃん。ここはこのおじいが一つ、昔の話をしようじゃないか」
「むかしのはなし?」
「うむ。嬢ちゃんの為になる話よ。どうだい?気になるかい?」
きになる。でも、おへやにかえりたい!
おじい、つぎきたときにはなしてくれるかな?
「なーに、少しだけおじいと日陰で話そうさ。あの木の下でどうだい」
「んん . . . じゃあきく」
「そうかいそうかい、嬢ちゃん。立ち上がるからちょっと待ってな」
おじいはゆっくりだから、おじいのてをひっぱっててつだう。
わたしのよこにおいてあるから、おじいのつえをわたしてあげる。
「おじいおそい。はやくいこ!」
「まてまて、嬢ちゃん。おじいはゆっくりにしか動けんのさ」
きのした、すこしつめたくてきもちいい。
おじいがすわれるように、おおきなぬのをひいてあげる。
とんでかないように、わたしもすわる。
「さてさて、嬢ちゃん。何だったかな?」
「もー、おじいがおはなしするっていったのに」
「そうだったそうだった、しかと聞いておれ!うむ。何処から話そうか . . . 」
―――
「もう帰らないと。次もここで会いましょう?」
「分かった。約束だよ」
「ええ、約束。会える日は、いつもの手紙で伝えるわ」
じゃあ、またね。
初めて会った時から、何度交わしたか分からない言葉。
この時の終わりを告げる、鐘の音だ。
浅瀬を渡っていく彼女。振り返らずに去る後ろ姿に独り、問いかける。
臆病者め。あと何回待たせる気だ?僕は、何度そう返せばいい?
いつまでこの関係を続ける?
ただ、愚痴を聞き合う関係は終わりにしよう。これからは、一緒に乗り越えよう。そう伝えるだけでいいというのに。
それっきりの関係になったら?嫌と返されたら?そうやっていつまでも切り出せずにこの臆病者は、何度見送ったか。
また今度に渡そう。
ポーチの中身を思いやりながら、そうやって慰める。
帰路に就くには、見た目以上に重たい荷物だった。
あれから3回、教会で祈った。その次の日に、彼女からの手紙が来た。
一喜一憂を追いながら、彼女の言葉が声となって聞こえてくる気がした。
次の満月から数えて2回目の祈りの日、そこから3日後に。
手紙はそう締められていた。
それから次の満月まで、僕はこれ以上ないくらい真面目に生きた。
ふと、月明りに照らされて起きた夜。窓の外に、大きな月が見えた時だった。
不敬ながら僕は、迎え入れた月明りに誘われて、月の女神に導かれてしまった。
主は父の様に愛をくれる。
でも、僕が今、光の中で示されたのは、母の様な愛だった。
生きる術ではなく、生きる意味を示されてしまった。
それから2回、祈りの日。
僕は懸命に、主へと許しを願った。
次の2日の間、眠る事さえ惜しい程この気持ちを彼女に伝えたいと思って過ごした。
手紙に書かれていた日。
僕の中に臆病者はもういない。
決心を胸に、荷物の重さなど、感じないほど軽やかに歩んでいく。
いつもなら、そろそろ来てもおかしくない。
取り出した時計の針を、何度も見直す。しっかりと回り続けるそれは、壊れていなかった。
見続けているほど、心配で気が狂いそうになる。時計はそっとしまった。
結局その日、彼女は来なかった。
次の日も、その次の日も行ってみた。けれど、そこに彼女は来なかった。
それどころか、人の気配は自分が残した印以外、何もなかった。
きっと、何か理由があったのだろう。
そう思って、僕は手紙を書いた。
何気ない言葉で始めて、この前の手紙に答えるように。
最後に、少しだけ背伸びして用意した封をして、送り出す。
これで大丈夫。
そう言い聞かせながら、返事を待つ。
彼女ならきっと、手紙を返してくれる。
何回か祈りの日が過ぎた。
その日、市場に来ていた商人達が、近況として話しているのをたまたま聞いてしまった。
どうやら、街道を少し行った先の村が火災でなくなったらしい。
話を聞いていた商人は、さっきこの町に着いたらしい。
いつ頃の話なのかを聞き返す。
丁度7回前の祈りの日の頃だ。と答える商人の言葉に、僕は何故か、手紙を送ってからの祈りの日を数えていた。
まさか、ね?
僕はその日の用事も忘れて家に帰る。
直ぐに支度をして、気が付けばあの約束の場所へ向かっていた。
やっぱり、人の気配は何もなく、この前の印も消えかけていた。
日が陰って来ていたし、ここで一晩明かす事にする。
焚火の横で寝付くまで、ずっと彼女と初めて出会った日を思い返していた。
目覚めた後、どうするかは決めていた。
始めて出会った日、僕はその日の一度だけ、彼女の村が見える所まで行っている。
その記憶を頼りに、あの日の彼女の背を追うつもりだ。
道らしい道は無いし、獣道と言えるものも、ほとんど残っていない。
厄介な枝と枝に、切り分けて切り分けられながら、背を追い続ける。
幸いな事に、この辺りには人を襲える程の捕食者となるような生き物は生息していない。
時折感じる視線も、木の実を集める小さいやつらで、ただ興味を示す目だった。
丁度日が真上に来た頃、僕の目の前には草原があった。
少し先の、あの丘を登れば、村が見える。
村の中に入った事は無いけど、彼女がいつも話していたから大体分かる。
折角ここまで来たから、彼女の両親に挨拶も出来れば良いかなとか、ポーチの中身を確かめて思ってみたり。
あの日の彼女は振り返って、嬉しそうに駆けて行った。
僕も、その背を追って駆けて行く。
「ほらほら、早く!こっちよ!」
「ちょっと待って . . . 息が、えぇ?この坂の先 . . . ?」
「そうよ!上から見ると、村が全部見えるの!ほら、早く!」
立ち昇る煙吹の息苦しさに埋められた高きに座る者に、その煙を焚く意味が理解される事はない。
互いに向けられた疑心は、互いの身を滅ぼす重い枷となっている。
それでも見守ると決めた者に、止める事は叶わなかったのだろう。




