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適当で良いよ、多分ね。
親鳥のひと鳴きに呼応する小鳥たちの囀り。その周りでは、若鳥が飛び立たんとその翼を振るっている。
巻き上がる羽々の散り姿は、天からの誘い歌となるだろう。
白青世界の元で終わりなき踊りに身を任せる子らも、その終わりが訪れる事に気が付く。
そして、先に止まるのはどちらかと踊り明かすまで続けていた。
「お?ファテミオさんじゃないですか。ということは、イルリーナちゃんも居ると思うんだけどな~?
どこに居るのかな~?見当たらないなぁ。もしかして、来てないのかな~?」
めのまえにいるのに、ぐるぐるまわって、わたしをさがす。
いーちおにいは、いつもわたしがみえないの。
へんでしょ?
だから、わたしがおしえてあげないといけないの。
「ここにいるもん!」
「うわー!イルリーナちゃんがいきなり出て来た!透明になる魔法で隠れてたのか!?
イルリーナちゃんは、また透明になる魔法が上手になったんじゃないかな~?」
ほら、とうめいになるまほうなんてないのに、へんなこという。
いーちおにいはいつもそう。
でも、いーちおにいはへんだけど、おもしろいからすき。
「さて、ファテミオさん。さっき、水やりをしていたので、村長はまだ裏庭に居ると思いますよ。
それと、イルリーナはどうしますか?他の子と一緒にはなりますけど、私が見てましょうか?」
「それはご親切にどうも。イルリーナはどうしたいですか?ウィーチオさんと遊びますか?それとも、いつもの木の下にいますか?」
うーん、いーちおにいとあそびたいけど、まほうのことばが、でも、いーちおにいとあそびたいし。
でも、ほかのこもいるの、うー . . .
「う . . . 」
「う?」
「いーちおにいとあそぶ!」
「そうですか。ウィーチオさんの言うことをよく聞いて下さいね。では、イルリーナの事は頼みます」
「分かりました。私たちは広場に居るので、用事が済んだら来てください。よっし!イルリーナちゃん、広場に行こうか!」
いーちおにいのてをつかんで、いっしょにいく。
まほうのことばは、またあした!
きょうは、いーちおにいとあそぶ!
―――
「ファテミオさんじゃないの。ささ、上がってちょうだい。
ちょっと待ってて。いま、主人を呼んでくわ」
「ええ、分かりました」
手荷物を置き、羽織っていたクロークを畳んでから上に被せる。
身に着けていた鞄を下ろし、中身を取り出して並べる。
程なくして、2人で戻って来た。
「ファテミオ!待たせたな。おや?今日は、イルリーナは居ないのか?」
「いえ、全く。イルリーナは、ウィーチオが見てくれると言うので、広場に居ますよ」
恐らく、何か用意してくださったのでしょう。それは残念だという顔をして、そうか。と小さく答えていますし。
私としては、用意することが負担になっていないとよいのですが . . .
「しかし、ウィーチオが . . . 村の入り口辺りに居たと?」
「ええ。子供たちは広場に居ると誘ってくれました」
「イルリーナを迎えに行った訳か。あいつは、イルリーナを嫁にしたいのか?」
どうなんでしょう?といって返しながら、昔のことを思い返す。
数年前は、かなり塞ぎ込んでいたのを考えると、成人の儀を行ってからは落ち着いていますし、彼の中で何か、割り切りが付いたのでしょうか。
「狩り人としても、人としても、恋沙汰を抱える程立派に育った。ということでしょうかね?」
「そう言われると、ウィーチオの両親が羨ましい限りだな。村長の子だからと言って、遊び回ってる我が子も見習ってほしい限りだ」
「あら?うちの子はまだ5つなのよ?遊び回るのは村をよく知る為に必要だわ」
それもそうだと豪快に笑う主人を横目に、夫人がお茶を用意する。
ウィーチオとイルリーナもいずれはこうなるのでしょうか。
いえ、どのように考えてみても、あの子が村に居続けるとは到底思えません。
あの子の好奇心と、知的欲求は確実に外を向くでしょうし、悔いのないように選ばせないといけないでしょうね . . .
お茶を交えつつ、並べてある物を確認しながら順に渡す。
全て渡し終えた所で、夫人が申し訳なさそうに切り出した。
「実は、狩り人の子が一人、先日の狩りで足を怪我してしまって、教会まで歩いていくのが難しい状態なの。それで、本人はどうしても行いたいと言うのだけど、連れていける状態でもなくて . . . 」
「もちろん、無理ならそう言ってくれ。歩いていけない以上、来年に持ち越すつもりだったからな。
ただ、幼馴染と一緒に行いたいって言ってるんだよ。だから、何か方法があればと思ってな」
これはまたどうしたものかと考える。
日を移動する事を先ず考えたものの、怪我の状態を聞くに、数日動かしても意味が無い。
かと言って、荷車で運ぼうにも、その荷車が空いてない。
付き添いを付けて歩かせるのは以ての外。
「正直に言いますと、厳しいのひとことに尽きます。同じ年に行いたいという気持ちは納得できますし、来年にという選択は酷だというのも理解してますが . . . 教会で行うのは厳しいですね」
「そうですよね。私達の方で、来年に持ち越すことを説得してみます。無理を言ってすみません」
そう言って夫人が謝るので、一つだけ思い付いた方法を、提案してみることにしましょう。
受け入れて貰えるかは分かりませんが、そう前置きをしてから、具体的な変更点も含めて話す。
「それなら確かに行えるが . . . それは大丈夫なのか?」
「教会としては、あまり褒められたものではないですが、儀式の本質としては問題ないですね。
臨時の祭壇を用意しますし、近くに教会がないという地域で用いられる方法を基にしていますから、法的にも有効ですよ」
その上で、確実なのは来年に持ち越す事であり、あくまで提案だと付け足す。
かなり悩んだ末に、可能であるならと、提案をもとに行うことに。
細かい変更点の確認や整理を行う。全体が粗方決まった頃には既に、陽光を受けた影が傾いていた。
「では、そろそろ帰りますね。イルリーナを迎えに行かなくてはいけませんし」
「分かった。今日はかなり時間をとってしまったな。悪い。そして、ありがとう」
「あぁ、そうだわ。これを持っていってちょうだい。イルリーナに渡す予定だったのだけど、取りに戻って来るのは面倒でしょう?」
そう言って小包を手渡される。
中身を聞くと、干したウサギの肉とのことなので、明日にでも食べさせることにしましょう。
荷物をまとめてからクロークを羽織り、小包をそっとしまう。
外に出ると、来た時よりも風が強くなっているように感じる。
イルリーナには頭巾を付けさせるべきでしょうか。羽織ものを持たせたのは正解でしたね。
夫妻に、では、また。そう言ってから、子供たちの声が響く広場へと歩いていく。
「まほうつかいが、おおさまでたたいてやっけたの!」
「それでね?それでね?いーちおにいが、うまさんになってね?」
「そしたらね?おおきいおじさんがきて、がおーっていって!」
楽しそうに話し続けるこの子を前に、遮ってまで、イルリーナにと貰った物がある。とは言えませんね。
少し気になる点はありますが、この子が楽しかったのなら、それで良かったでしょうし。
仕方ないので、明日伝える事にしましょうか。
背を伸ばした存在が足を踏み出す度に、一歩、また一歩と近付いて来る。
しかし、それを縛り付ける存在もまた、一歩、また一歩と離れて行くため、平行線を辿る。
覆われた隙間から覗く乱れた束だけが、その光景を嘲笑うようにその身を揺さぶっていた。




